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第六百三十九話 共に歩む者として

「八咫烏よ!貴様に問おう!!」


高ぶるクトゥルフは八咫烏様に尋ねる。神と人間、奴は一体何を知ろうとしているのだろうか。


「神とはなんぞや?人間とは何ぞや!?今の貴様にそれが答えられるのか!??」


神とは、人間とは。一体何なのか・・・。


「・・・・・・・・・・・・・。」


分からない。何を見て、どんな視点でそれを尋ねたのか。奴は何を言いたいのか。

何故八咫烏様にそれを尋ねたのか。


「お前は何故人間を導いた!?下等な人間が道を迷い、仕方がなく助けたのか!?

ただ生物としてほんのわずかに上回れるだけの能力を持っており、それを発揮するための場として

導いたのか!?」


人間の前に現れた八咫烏様はしばしば迷える人間を導くと言う。数ある中でも有名なのは

初代皇が行った東征での一幕であり、一度戦いに敗れた皇達を八咫烏様が導いたことによって

この国が始まりを迎えた。


「・・私は天照大御神に仕える身だ。あのお方が人間を導けと指示を送られ、それに従ったまで。」


「そうか!なら再び問おう!何故、天照大御神はそのような指示を送った!!」


「時が来るのを待つためだ。再び日ノ本日に降り立った際、人間の上に立つための布石。」


「だが結果はどうなった!?天照は降りてきたのか!!!」


・・日ノ本神話の主神に仕えている神様だ。主神のために行動するは当然。

結界が薄い日ノ本であれば、神が再びこの地に降り立つ事は可能かもしれない。

天照大御神は、それを理解していたのだろう。


「来ていないだろう!?それは何故だ!!」


結界があるから。神は人間の世界に来れない、それは今まで続いている。

ただそう答えればいいだけ。だが・・・八咫烏様は答えない。


「降りれないのだ!!人間が人間だけの世界を作り上げた!!!高天原にいる神共の居場所など、

どこにも存在しない!!!神産みを会得している人間に、神は負けたのだ!!!!」


付喪神が・・・神を超えた証。神の所業を、人間はいつの間にか会得していた。


「そして奴らはふて腐り、今もこうして高天原に引きこもっている!!

龍穂!!お前がこれだけ必死に戦っていても、奴らは一向に手を貸さない!!!」


「・・それがどうした。」


「それがどうしたか!?分からんのか愚図め!!謀が成した証だ!!!

神は堕落し、残るはお前達だけ!!容易い、なんと容易い!!!」


嬉々として、空から俺達を見下ろす月に向かって吠える。封じられる前に作り上げた謀。

さぞ・・・気持ちの良い事だろう。


「そう、思っていたんだがなぁ・・・・。」


そして、君が悪いほどに冷静になったクトゥルフは展開を完了した星空の存在に気が付いたのか、

舐めるように辺りをゆっくりと見回す。


「厄介なものよ・・・。神と同格ではあるが、それでも力の無い事には変わらない人間達に

ここまで粘られるとは・・・・・。」


強い殺気に反応した八咫烏様は、再度純恋の中に戻る。


「結界が薄い土地だ・・・。ここを抑えてしまえば後は楽。他の神々は人間世界に

興味を無くし、堕落した生活を続けている。そのような奴らを阻む結界を壊したとしても、

討ち取るは容易いが・・・・・まさか、ここまでやられるとはなぁ・・・。」


白達、そして俺。奴の謀は阻まれようとしている。道が多少逸れようと、奴の目的は変わらない。


「・・聞いておく。目的はなんだ?」


「そんなもの、分かり切っているだろう。この惑星を我が物にする。そのために、

ここまで封じられていたのだからな。」


日ノ本を変えると言う忠行よりスケールの大きい野望。そして、こいつはそれが出来る。

出来てしまうのなら・・・阻むしかない。


「人間がこの世界を支配している。神の方がもはや泥人形と言わざるをえない。

だからこそ、この姿。人間の力を使う事を私は選択した。」


人間の皮を被っているという事は、あの中にはクトゥルフの肉が入っている。


「くしくも・・・私がよく知る人間は忠行のみ。千年と少々ともいただけだが・・・

情が入ったか、急ごしらえで作った仮物はよく似てしまった。」


こいつが神に抱く感情と、人間への可能性など今はどうでもいい。

忠行以上の化け物でも、忠行以上の野望を抱く奴に負けるわけにはいかない。


「・・何でもいいよ。」


「・・・・・何がだ?」


「お前が神に、人間に。そしてこの日ノ本についてどう思っているかなんてどうでもいい。」


大気達を動かすため、殺気を奴に向ける。


「演説は聞き飽きた。神と人間が対等なんてのはお前が抱いたただの感想だ。」


「感想か。だが、事実でもある。」


「否定はしない。だが、それは局所的な場面でのみだ。式神契約を結ぶほどの関係値があるなら、

その時点で格は消えてなくなる。」


青さんは俺の師匠。イタカは始めこそハスターへの忠誠を誓い、俺との式神契約を望んだが、

今は俺を信じた上での行動を取ってくれる。八咫烏様は・・・様と言う敬称が付いているが、

俺と共に戦う大切な仲間。


「お前にゃ分からねぇよ。俺達の関係なんてな。」


日ノ本の民は神を生むことが出来る。その事実だけ見てしまえば同じ力を持つ生物として

見れるかもしれないが、その過程には”敬い”が必ずある。


「他の国は確かに人間の国だ。人間が繁栄し、人間が独自の進化を続けてきた。

だがここは違う。神と共に歩んだ国だ。寄り添い、崇め、敬ってきた。」


「だからこそ、この国は弱い。だから大戦で人間に負ける。いい加減に気づけ、

お前の言う神の弱さに。このままいけば日ノ本はいずれ滅びる。であれば・・・・・日ノ本の

神ではなく、わしらに付くべき。そうではないか?」


・・話しの着地点はそこか。もはやなりふりを構っていられないようだ。


「はぁ・・・・・。」


思わず・・・ため息を吐いてしまう。何故、こんな奴に八咫烏様が、そして青さん達が

馬鹿にされなければならないだろう。


「・・イタカ。」


あまりの情けない姿に、イタカを呼んでどう答えたらいいか聞こうとする。

もう・・・こいつは、負け犬だ。


「なんだ?」


「ハスターに聞く前に一応な。あいつ、俺を引き抜こうとしているが・・・どうしたらいい?」


「・・答えなければならないか?」


まあ、分かっているだろう。だが、口に出してもらう事が肝心だと首を縦に振る。


「まあ・・・俺は”お前”の指示に従うだけだ。なんとでも言えばいい。」


格だけを見てきたこいつには分からないだろう。何故、そのような関係値を築けたのか。

上下ではなく、対等であることの怖さをこいつは知らない。


「・・・・・理解している事だけは褒めてやるよ。」


答えてやろう。俺は意志を。


「・・・・・何がだ?」


「人間の怖さだよ。地球を支配してからも、人間は成長を止めなかった。知恵を磨き、領地を

広げた奴もいる。だがな、俺達はその代わりに神との繋がりを求めた。

お前はただ、それを眺めているだけだったんだな。」


「・・・・・・・・。」


「だが、ハスターは違ったよ。俺達のような者にも興味を示し、対等に接してきた。

分かっていたんだろうな、お前の様にただ俯瞰しただけでは何も分からない事を。」


ただ・・・興味を示したのかもしれない。ボイジャーの中にあったゴールデンレコードに刻まれた

笛の音が気になり、それを奏でていた母さんに。だが、大きな違いは直接触れた事。

それほどまでに母さんに魅力があったのか、それとも・・・・。


「忠行と言う人間が近くにいたのに、お前はただ俯瞰しているだけだった。人間と神を

観察し、弱き者達だと触れることを拒んだ。それが・・・お前をここまで追い詰めている。」


一度戦ったからなのかもしれない。神と人間と敵対した奴らだからこその行動。

そうさせたのは奴のプライドだ。支配する者としての矜持が、奴を弱くした。


「俺達がよく知る王はな、民と共に歩んだ人だったよ。王は神の血をより濃く引くお方だ。

そんな人が身近にいる。そして、神もいる。だからこそ、俺達はここまで来れた。」


対等な関係ではない。俺達は手を取り合いここまで来た。それは単なる信仰ではなく、

互いの利害が一致し、協力関係にある。互いを思い、互いを認める。それこそが我ら日ノ本の

民の強み。


「お前は負ける。俺じゃなく、”ハスター”にな。俯瞰し、見下した者と直接触れ、

対等に接した者の力の差。実感すると良い。」


その瞬間、、大気達が一斉に襲い掛かると姿を隠していた兼兄達もとびかかる。

神と共に歩んだ者として、神を下に見た罰を受けさせてやらなければならない。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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