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第四百六十一話 前線へ立つ司令官

「クソッ・・・!!」


碌に説明を受けずに飛ばされた竜次達は苦戦を強いられていた。


「部隊へ次ぐ!あの時と同じだ!!距離を取りつつ戦え!!」


影渡りで飛ばされたと思えば、目の前にはクトゥルフの神々の姿があった。

兼定の言葉を受け入れられずとも、覚悟は決めていたはず。

だが・・・目の前に光景は竜次達の乱れた心を逆なでる。


「”イソグサとゾス=オムモグ”がいるなんてね・・・!!」


それはかつて討ち果たしたクトゥルフの息子達。

命辛々・・・いや、多くの犠牲を出しながらも辛勝を収めた二柱が

白に襲い掛かってきたのだから。


「謙太郎!!!」


「ああ・・・!!面白いな!!!」


突然の出来事に対応が遅れた竜次達は追い込まれかけたが、すぐさま駆けつけた

すぐさま現れた天王星と地球の二部隊が火星に入り崩れることを防ぎ、

何とか押し返すことが出来た。援軍が無ければ送られた三部隊が壊滅していただろう。


「春はいけたか!?」


「いえ。戦線離脱を諦め、隊を率いて戦っています。」


「何とかあいつを兼定の元へ送り込めれば話は変わると思うんだがな・・・!」


苛立ちながらも槍を振るう竜次。それは兼定に向けられた怒りではなく、

自らの不甲斐なさへ向けた憤り。


「これがさっき出来ていたらな・・・!!」


賀茂忠行に対し、攻勢に出たはず。だが、結果は中途半端に終わってしまった。

それは竜次だけの迷いではなく、アルやノエル、そして他の白達も同じく

心に大きな不安を抱えこんでおり、それが前面に出てきてしまった結果だった。


「・・こうして奴らと再び対峙して理解しました。我々はやはり、”死を恐れている”。

自らの命ではなく、家族達が命を失う事を含めた上の恐れ。

やはり奴らと戦うには覚悟は足りませんでした。」


ここまでの人生で覚悟を決めるための準備を行ってきたはず。

だが、戦ってきたのはあくまでクトゥルフの配下達。奴らに対してさえも

犠牲者を出した過去を持つ白達は、家族を失うこと自体がトラウマとなっていた。


「嘆いても仕方がない・・・なんて言いたいけど、現実は受け止めなくちゃ。

短時間だけど、トラウマを克服しなくちゃいけない—————————————」


弓を引きながら口を開くアルは、突然動きを止める。

その違和感に気付いた二人も、アルの動きの引き金になったであろう視線の先を見ると

そこには皇太子の姿があった。


「・・何故ここにいるんです!?危ないですから安全な場所に———————————」


「危険だからどうした?俺は指揮官だ。お前達に指示を出さなければならない。」


大隊の大将である皇太子が前線出てくるなど、戦場の常識ではありえない。

ましてや皇の血を引く皇太子がやられれば、日ノ本の未来が危ぶまれる。


「しかし・・・!!」


「・・分かっている。だが、この混沌とした中で君達だけに戦場を任せるのは

指揮を執っている俺としても心苦しい。それにだ。

こうして君達から直接情報を得なければまともな指示が出せないのだよ。」


動き続けている戦場。そして不可解な行動。この二つの情報を整理しなければ

まともに指揮を出せないと前に出てきた。


「それこそが敵の思惑だと、君は言いたいのだろう?」


「・・・・・そういうことです。」


「だが引っ込んでいれば私は置物だ。君が私の事を大切に思ってくれている事はありがたいが、

お荷物になるのは御免被る。」


「お荷物ではありません。こうして出てしまった以上、ここで指揮を執ってもらう事については

反対しませんが、あなたのようなお方は後方にいてこそ真価を発揮するのです。

我慢できずに出てきてしまうではなく、お父様の様にじっとこらえるのも

王たる者の役目ですよ?」


指揮官が前線まで出てきたことは敵である賀茂忠行の耳にも既に入っているはず。

兼定が足止めをしているとはいえ、無事に引かせるには人数いる。

その隙を突かれる可能性や人数が減った所を攻め立てられる事を考えれば

前線から動かさないのが最善だとノエルは判断した。

だが、その上でお灸を据えたが皇太子は既に覚悟を決めてしまっている。


「・・それでも、俺は前線に出る。王座に鎮座するのは王の役目だが・・・日ノ本の王は違う。

民と共に歩んで来た歴史がある。だからこそ、こうして長きに渡り血を紡いで来た。」


「・・・・・ここにいればあなたを守り切れる保証はない。

貴方が命を落としたことで私達の指揮も下がり、敗北のきっかけになるかもしれないわ。

無理やりにでも退かせる事は出来るけど・・・それでもいいのね?」


構わないと首を縦に振る。その覚悟を見た竜次達も同じ様に覚悟を決め、

皇太子と共に戦う事を決めた。


「そうであるのなら・・・それなりに立ち回るとしましょう。

最前線であるこの戦場は今から、我々の作戦司令部へと変えます。」


司令官が前線にいる利点を生かすために竜次達は動き始める。


「情報を全て集めます。即時決断、即時行動です。」


遠く離れた場所でも情報伝達を行う手段はある。だが、それらを全て整理した上で

指示を行うタイムラグは流動的に動く戦場に置いて足枷となる。


「護衛は厚く付けます。間違ってもいい。動き続けましょう。」


強力な敵が目の前にいる。練られた策など今は必要ない。

動く状況に対応する瞬発力が指揮官には求められる。

だが平和な日ノ本で過ごしていた皇太子は戦場の中での指揮経験は皆無。

ずぶの素人が立っていい戦場ではない。


「・・・・・やってみよう。」


決して覚悟と威勢だけでは乗り越えられない。それを理解した皇太子の体に

大きなプレッシャーがのしかかった。


「・・策があれば戦場を支配できます。ですが、それらを実行するのは

司令官ではなく、我々兵隊です。」


緊張感が増した皇太子に対し、ノエルが口を開く。


「両方の質が良いのが一番。ですが・・・片方が良ければうまくいくものなのですよ。」


「・・百戦錬磨の君の口からそんな言葉が出るとはな。」


「過程は大事ですが、一番重要なのは結果なのです。

この戦いは勝敗が全て。勝てさえすれば全て解決するのです。」


指示が来れば自分達が何とかする。言葉で背中を押すノエルは大きな斧を手に持ちながら

戦場へ目を向ける。


「・・・・・ありがとう。」


小さな背中だが、この戦場においては頼りがいのある大きな背中に見える。

心中でそう呟いた皇太子は部隊の長である竜次達に指示を送るために口を開く。


「目の前の敵を討ち果たし、賀茂忠行と戦う兼定との合流を行う!!

決して命を落とすな!!そして・・・勝利を収めてくれ!!!」


指示ではなく、もはや願い。だが、皇太子が放つ言葉を竜次達の体に力を与える。

指揮の挙がった星空達は勢いよく二体の神に襲い掛かる。

混沌を極めた戦場が、さらに乱れていく様を日ノ本の未来を背負う男の瞳は捕えていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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