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第四百十話 成長した姿

天后と天空。この二体の相性はあまりに抜群だった。

霧や黄砂で視界を奪ってからの奇襲。それを嫌がり風や水を操れば

魔力操作で乗っ取り逆利用してしまう。

戦いの主導権を奪われれば簡単に抜け出せず、そのままずるずると不利な場面を

押し付けられてしまう。


「やっとやな・・・。」


お互いの長所を押し付けつつ、二体の連携をいなしながら純恋達は戦い抜いた。

そして・・・その結末はすぐそこまで迫っている。

自分達がこれまで以下に龍穂に頼っていたのか理解した戦いでもあった。

敵の攻撃を気にせずに、自らの全力を叩きこめる事が如何に龍穂に負担をかけていたかを

この戦いで実感する。


「後少しです!気を抜かずに行きましょう!!」


千夏の号令に、全員が気を奮い立たせる。二体を倒せば龍穂に合流できる。

何も連絡が無く張られた黒い壁の向かうで一体何が起きているのか。

純恋達は知らなければならなかった。


「私が前に行く!!ついて来てや!!!」


騰蛇と神融和を行った桃子が翼を羽ばたかせて二体へ一直線に向かっていく。

その後ろを楓が空気を蹴りながら追っていく。


「私達もいくで!!」


純恋と千夏は二人の援護を行うため、神術の準備を行う。

窮鼠猫を噛む。敵の消耗は純恋達より低く、後はどう仕留めるかが肝心だが

その際の激しい抵抗を警戒しなければならない。

その先、真っ先に対応しなければらならないのは純恋と桃子。

太陽を用意し、水を集めてすぐさま対応できるように準備を整えていた。


「フッ!!!」


桃子が向かって行ったのは天空。霧や黄砂で苦しめ続けられており、

これ以上からめ手を使わせないためにも先に倒さなければならないと判断した上での行動だ。

騰蛇と山本五郎座衛門の二体童子の神融和を行い、荒々しくも鋭い得物の一撃が襲う。

これまでの戦いで傷ついた天空は重い体を何とか動かしながら回避を行うが、

すぐさま切り返した桃子の斬撃が命を奪わんと再び襲い掛かる。


「来たね・・・。」


相棒の窮地に天后も黙ってはいない。すぐさま風を起こして桃子に向けて撃ち放とうとするが、

白虎との神融和で作りあげた風を拳に乗せた一撃ですぐさま破壊されてしまう。

それがだめであれば水だと魔力操作で集めにかかるが、千夏と青龍に先を越され残しが少なく、

追い打ちをかける様に純恋が作り上げた太陽によって蒸発させられていて手も足も出ない。

これだけ場の支配をしていたのにも関わらず、ここまで粘り強く戦えていたのは

歴戦の十二天将だからこそなのだろう。だが・・・それもこれまで。


「やああぁぁぁぁぁぁ!!!」


桃子の一撃は天空の体を断ち切らんを襲い掛かる。大きな胴に向けて放たれた袈裟切りは

簡単に皮膚を切り裂き、肉や骨も断ち切っていく。


「千夏さん!!!」


「分かっています・・・。」


酷く傷ついた天空はもう戦闘を行えず、もう浮く事さえ出来ないほどに消耗した

体は重力を思い出したかのように地上に向かって落ちていく。

その隙を逃さなかった千夏は懐から札を取り出すと、落ちていく天空に向かって投げつけ

血がべったりついた体に張り付けた。


けつ!!!」


張り付いた札に描かれているのは封の文字。式神を札に閉じ込める際に使われる

簡易的でもっともポピュラーな封印術。

どう見ても自らの意志ではない動きをしていた天空は以前の騰蛇達と同じ状態。

であるのなら同じ様にやり方次第では力を貸してくれるのではないかと、

出来る事なら封印しようと千夏は提案していた。


「一人はやれたな。」


「ええ。」


次は天后。このまま同じように封印してしまおうと桃子達は向かっていくが、

天空の結末を見た天后は初めて感情を前に出す。

それは怒り。辺りに嵐を巻き起こさんと空気を操り始めるが、

龍穂と連携で様々な強風を体に受けていた桃子たちにとって、それは恐怖対象にならない。

中遠距離を得意とする者達にとって、接近戦をさせないためにも自らの術で

恐怖心を与えて近づけさせない事は肝心となってくる。

それさえ与えられないのは致命的であり、思っていた以上に踏み込んでくる

桃子達を目にしたその瞳は、脳に恐怖という情報を必死に送っていた。


「・・準備する必要もなかったか。」


桃子達の姿を見て、純恋は呟く。

この一場面だけを切り取れば、いとも簡単に戦いは結末を迎えそうに見えるが

龍穂がいない戦場で自分達のリズムをつかむのにかなり手こずっていた。

いくら強者であっても力を発揮できなければ格下相手でも苦戦する。

それが今回は相手もまた強者であることから純恋達は思っていた以上に力を消費していた。


「そうですね。」


だが、この後少しで勝利を掴む状況であっても二人に油断は無い。

力の消費を抑えなければならないが、勝利を迎えるまでは魔力操作を解く気配はない。

完璧な勝利の上、龍穂に合流しなければならないという未来をしっかりと見据えていた。


「やああああぁぁぁぁ!!!」


二人は臆することなく懐に飛び込み、とどめの一撃を叩きこむ。

天后には止められる手段はなく、すさまじい斬撃と重い打撃を喰らい意識を失くして

地上目掛けて落ちていく。その隙を千夏は逃さず札に封じ込めた。

これで十二天将達との戦闘は波風が立たないうちに幕を下ろした。


「・・さすがだな。」


戦いを終えた純恋達に声をかけてきたのは陽菜。

連れてきた臣下達と共に烏に乗ってやってきた。


「なんや、ボロボロやん。情けへんな。」


「そう言ってくれるな。いきなり呼ばれてしかも相手は朱雀と玄武。

これで苦戦しない奴など日ノ本に数えるほどしかいないぞ。」


そう言いながら陽菜は純恋に近づき二枚の札を手渡す。

その札には千夏が投げた物と同じ様に封の文字が刻まれていた。


「好きに使え。今の私達では手に余る。」


「何や珍しい。てっきり自分の物にする聞かん坊になると思ったわ。」


楓や騰蛇との戦いで消耗していたが、伝説の式神を封印できる者はそうはいない。

先程純恋に愚痴をこぼしていたが、陽菜達の実力も日ノ本屈指である事には違いなかった。


「雑賀の奴に毒されてな。恩は売っておくべきだと。

確かに十二天将達を我が軍門に入れる事が出来たら大きい。

だが・・・私一人で相手できる様な相手じゃなかった。」


「・・お前、変わったな。大阪にいた頃だったらずっと虚勢張ってたで?」


「そうだな。だが・・・それはもうやめだ。虚勢を張り続けるのは肩がこる。

付いてくる配下達もその影響を受けてしまうからな。」


自らを見つめ、素直になることを選んだ陽菜。

それは決して親しい純恋の前だからこそ見せる姿ではない事を、

後ろに並ぶ配下達が頷く姿で証明して見せた。


「そいつらはお前達にくれてやる。その代わりに・・・連れて行ってもらおうか。」


「連れていくって・・・本気か?死ぬで。」


陽菜達は確かに強い。だが、この先に待ち受ける全ての敵はそれ以上。


「・・ああ。」


だが陽菜達の決意は固く、ここで断ったとしても無理やりにでも付いてくるのは目に見えていた。


「はぁ・・・。」


純恋は連絡をしている沖田の方を見ながらため息を吐く。

さきほど龍穂から入った指示通りに連絡を取っているが、どうやら事態はあまり良くないらしい。


「・・千夏さん。どうしますか?」


「恩を売られましたからね・・・。断ることは出来ません。

ですが純恋さんの言う通り、命の保証は出来ない。

それに時と場合によってはあなた達を見捨てるかもしれませんが・・・本当に

よろしいのですね?」


この言葉は嘘ではないと念を押して千夏は尋ねる。

目の前で見捨てられても恨み言は無し。そう言い放っても陽菜達は怖気づく気配すら見せない。


「・・・・・分かりました。龍穂君には私から説明をします。

沖田さんが連絡を終え次第、龍穂君の元へ向かいますので今のうちに編成を・・・。」


陽菜達を龍穂の部隊である木星に迎え入れ、編成を行うとする千夏に

先ほどまで近藤と連絡を取っていた沖田が近づいてくる。


「お話し中すみません。」


その表情はひどく緊張しており、マズいことが起きたと悟った千夏は沖田を見つめる。


「どうしましたか?」


「月桂寮が襲われていると報告を受けました。

ですが我々には遅れる戦力が無い。ですから千夏さんにちーさん達に連絡をして欲しいんです。」


沖田からの願いを聞いた千夏は自らの判断が間違っていたと悟る。

あの時龍穂の指示を素直に聞いていれば二度手間にならなかったと後悔するが、

過去を振り返っている暇は千夏に残されていない。


「・・純恋さん。編成をお願いします。」


後の事は任せたと指示を送ると、ちーに念話を送りながら地上に向けて

急降下を始める。東京結界を強化する装置を破壊されるのはマズイ。

そう判断しての事だったが、返事が返ってこない状況は千夏をさらに焦らせる。


(妖怪達にやられたなんてことは・・・。)


あの二人に限ってそれは無いと頭を振り、邪念を払う。

何がどうであれひとまずこのことを伝えなければと翼を羽ばたかせ速度を上げると、

近づいてきた地上の光景に千夏は目を見開く。


「これは・・・。」


先程地面に落ちた妖怪達。地上を闊歩しているはずの奴らがコンクリートに伏せている。

そしてその先には・・・必死に戦う白の部隊達が見えていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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