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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一七章 翼の剣と魔王狩り

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流石に三周目ともなれば、イベントは全スキップ確定だろ

「ほいっと」


 軽い足取りで別世界へと降り立つと、俺は素早く周囲を確認した。これといって特徴の無い景色ではあるが、俺の望みが叶ったならば――


「ここまでよ!」


「うひゃあ!?」


(っし、成功!)


 聞こえてきたその声に、俺は踊り出したくなるような気持ちを抑えて「銀翼の剣」を「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」にしまい込むと、代わりに腰に鋼の剣を佩いてから素早く移動を開始する。するとそこには予想通り、金髪縦ロールの若い女にやたら渋い気配を漂わせる老齢の男、そしてその正面には地面にへたり込んだちょっと頼りなさげな男の姿がある。


 間違いなく、ここは第〇一六世界。ならばこそ俺は、この先の展開を知っている。


「ああっ!?」


「オーッホッホッホッホ! 遂に手に入れましたわ!」


 男……勇者トビーが情けない声をあげると、その懐から黒い金属製の箱が奪われる。それを手にした女……パームが上機嫌で高笑いをあげ、箱を顔の正面に持っていき……今!


キィン!


「なっ!?」


 木陰から「追い風の足(ヘルメスダッシュ)」で一気に近づき、俺の振るった鋼の剣が金属製の箱を吹き飛ばす。そうして空中を舞った箱を、俺はバシッとつかみ取った。


「おっと悪いな。こいつは貰うぜ?」


「この(わたくし)からお宝を奪うなんて、随分と手癖の悪い野良犬ですわね。クロード!」


「はっ!」


 ニヤリと笑う俺に、怒りに燃えたパームの命を受けたクロードが斬りかかってくる。その剣技は老体に見合わぬ素晴らしい冴えではあるが、俺は素早く左手に箱を持ち替えると、右手で抜いた剣を下からすくい上げるように振るって防ぐ。


「ぬっ!? まさかこうもあっさり防がれるとは……申し訳ありませんお嬢様、此奴かなりの手練れかと」


「そのようですわね」


 むきになって追撃するのではなく、冷静に一歩下がったクロードの言葉にパームが悔しそうに歯噛みする。それなりの腕があるからこそ、今の一撃で俺の実力が想像できたからだろう。


 そしてそんな二人とは別に、地面から立ち上がったトビーもまた俺に向かって話しかけてくる。


「貴方は一体……って、そうじゃない! それ、返してください! それは貴方が思ってるようなお宝じゃないんです!」


「ん? それはこいつが本物の『魔王の心臓』だってことか?」


「そうです! それは決してただのお宝なんかじゃ……うぇぇ!?」


 俺の言葉に、トビーが変な声をあげながら驚愕で目を見開く。そりゃそうだろう、これが「魔王の心臓」であると……ましてや「本物」であることなど、この時点で知っているのはほんの数人だけなのだから。


「そんな!? それを知ってて奪い取るなんて……はっ!? まさか魔王復活を狙う邪教集団とか!?」


「あー、そういや帝国とかアホ王子の他にも、一応そういう勢力もあったな……ま、違うけど」


「帝国!? それにアホ王子って……本当に何なんですか貴方!?」


「まあまあ、落ち着けって。俺の目的は簡単さ……よっと!」


 俺は手にした箱を軽く上に放り投げると、そのまま剣を振るう。魔術的な封印はこっそりと「吸魔の帳(マギアブソープ)」で吸収して無効化しておいたので、箱はあっさりと切れてその中身がポロリとこぼれ落ちる。


「あれが魔王の心臓! 何て美しい……」


「そんな、封印が!? ああ、もう駄目だ。この世界はおしまいだ……」


 俺が手にした怪しく光る赤い宝石に、パームはうっとりと陶酔するような視線を向け、逆にトビーはこの世の終わりのような絶望の表情を浮かべる。


「あれこそ私が持つに相応しいお宝ですわ! 絶対に手に入れますわよクロード!」


「畏まりました」


 実物を目にして文字通り目の色を変えたパームとクロード。今度は二人がかりで襲ってきたが……多少本気を出したところで、結果が変わるはずもない。


「馬鹿な!?」


 クロードの剣は、無防備に棒立ちしていた俺の宝石を持つ左の手首、心臓、そして右の眼球を正確に突いてきた。だがどの攻撃も俺にかすり傷一つ付けられない。当然だ。俺の「不落の城壁(インビンシブル)」を単なる人間の攻撃で貫けるはずがない。


「どきなさいクロード! 焼き尽くしなさい、『ヴォルカニックナパーム』!」


 素早く避けたクロードの背後から、灼熱の吐息が迫り来る。だが炎は俺にまとわりついた瞬間からその力を失っていき、産毛の一本を焦がすことすらできない。俺に対する直接攻撃である以上、「吸魔の帳(マギアブソープ)」は抜けないのだ。


「何ということか……お嬢様、お逃げください!」


「馬鹿言わないで! この私がお宝を前に逃げるなど……」


「いやいや、逃げなくても別に何もしねーって」


 自分の力の遠く及ばない、絶対の強者。そんなものに手を出してしまった警戒と後悔にパーム達が顔色を変えるが、俺はそんな二人に苦笑してから剣を収め、よく見えるように右手の人差し指と親指で赤い宝石をつまむ。そして……


「俺がするのは、これだけさ」


パリィィン!


 俺がそっと力を込めると、赤い宝石がバラバラに砕け散る。以前はリーエルが壊したせいで力を吸収できなかったが……うむうむ、今回は大丈夫なようだ。


「く、砕けた!? え、え? でも魔王は復活しないし……えぇ!?」


「ははは、安心しろトビー。これで魔王は倒された。神殿に封印するよりよっぽどいい結末だろ? お前の役目はこれで終わりだ」


「倒した!? 封印するしかできなかった魔王を、倒しちゃったんですか!?」


「そうだぜ。砕けるの見てただろ?」


 呆気にとられるトビーの言葉に、俺はちょっとだけ得意げな笑みを浮かべて答える。だがトビーの方はこれ以上無いほどの困り顔だ。


「そりゃ見てましたけど……あれ、砕けたら倒したってことになるものなんですか? というか、宝石砕けちゃいましたし、僕はどう報告すれば……?」


「へ!? あー、それは…………ま、まあ頑張れ?」


 流石に報告に関しては考えてなかった。そりゃそうだ、偉い人に報告するのに、通りすがりの男が宝石を砕いちゃいました、は通らねーよなぁ。いやでも、今更証拠も何も無いし……うん、ここは勇者トビーの最後の仕事ってことで、いい感じに頑張ってもらうことにしよう。


「あぁぁぁぁ……宝石が……私の『魔王の心臓』が…………」


 空を見上げてブツブツと呟き始めたトビーとは別に、パームもまた俺の足下で蹲っている。どうやら砕けた宝石の破片を集めていたようだが、その全てが鮮やかな赤からくすんだ赤に変わってしまっており、もはや宝石としての価値が無くなっているのは明白だ。


「酷い。あまりにも酷いですわ。私はただ美しい宝石をこの手のなかで愛でたかっただけですのに……うっうっ……」


「ああ、お嬢様。何とお労しい……」


 若く美しい女がゴミになった宝石を胸に抱き、切ない顔で声を抑えて泣いている。そしてその背を優しげな老紳士がそっと撫でて慰めており、そんな二人を見下す俺……何だろう、俺には悪い要素が無いはずなのに、絵的には俺が極悪人にしか見えない。


「どうしよう……どう報告しよう……僕を信じて託してくれた陛下に何て報告すればいいんだ……はは、空が青いなぁ…………」


「うぅぅぅぅ……くふぅ…………」


「その悲しみの万分の一でも癒やせるのでしたら、このクロード命ですらお捧げ致しますのに……我が身の無力をお許しください、お嬢様……っ」


「……じゃ、じゃあ! 俺はもうやることはやったんで! 後はこの世界の人達で頑張っていけばいいんじゃねーかな? かな? だよな? では、そういうことで!」


 多分誰も聞いていないが、俺はとりあえずそう言って「追い風の足(ヘルメスダッシュ)」でその場を去る。そうして誰もいない場所まで行くと、取りだした銀翼の剣で次なる世界への道を切り開く。


「ふ、ふふふ……とにかく一つ目! いや八つ目か? この調子でいくぜ!」


 気にしてはいけないものを心の棚にぶち込むと、俺は開いた黒い傷跡へと飛び込んだ。魔王を倒し世界を救った俺は、こうして誰に見送られることもなく足早に世界を後にするのだった。

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メタ魔王の心臓「どうせならラストちゃんか、またリーエルの胸の谷間で昇天したかった(血涙」 エドは自身の一部だからラストの容姿に惑わされなかったけど ジョンやクロムのような個性的な分体魔王がいるなら こ…
以前のように見た目だけの贋作を用意してやればいいのに。 愛でるだけなら見た目だけでいいし、神殿に持っていくのが贋作だとしても頼まれたものを届けただけと言い切ればいいだけなんだし。
まあ(エドはあのリザルトブックの最後部分を読んでいないとはいえ)こうするのがこの世界では一番いい未来にはなるんだよね、だから許せトビー()
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