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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一五章 熱血勇者と偽りの魔王

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誰も何も悪くないというのは、明確な悪の一〇〇倍たちが悪い

 と、そんな感じで予期せぬ方向性のトラブルに見舞われたりもしつつも、俺達は順調に力を付けていった。それに伴い活動範囲も広がっていき……勇者バーンとパーティを組んでから、三ヶ月。俺達は勇者の力が眠る遺跡、その二つ目の前に辿り着いていた。


「うぉぉ、本当にあったぜっ!? 流石エド、超! スゲーぜっ!」


「……この周辺で最も歴史資料の残っている教会にも、こんな情報はありませんでした。一体どうやってこの場所を知り得たのですか?」


「ははは。そこはまあ、色々だよ」


 二つ目の遺跡もまた、深い森の奥にあった。苔むし蔦が絡まる石造りの建物を前に、俺は適当な言葉で誤魔化す。


 言うまでも無いことだが、ここを見つけたのは凄い諜報能力があったとかではなく、いつも通りに「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」を使ったからだ。相変わらず追放スキルの存在を秘密にしているわけだが、これはバーンになら教えても大丈夫だと思う反面、何処かの偉い人にバーンが口を滑らせる未来しか見えなかったからである。


「今回もちゃんとした建物の中なのね……ということは、以前は誰かが勇者の力を守っていたってことかしら?」


「だろうな。つっても勇者なんて何百年に一人とかしか現れねーから、忘れられちまってるんだろうけど」


 勇者が現れてすぐ……たとえば今であれば、バーンが雷の魔術を得たシトロワ遺跡は大々的に再調査が行われており、それが終われば国軍が警備を行うようになるらしい。


 が、バーンがこのまま魔王を倒してしまえば、事実上あの遺跡は価値を失う。それが取り戻されるのは、遙か未来に別の魔王が出現するときだ。


 勿論、賢明な統治者ならばそんな未来への備えとして遺跡を保護しようとするだろうが、誰もが賢明というわけじゃない。一〇〇年経ち二〇〇年経ち、魔王の事など知らない新たな統治者が話に聞いたことがあるだけの遺跡の保護にどれだけの人と予算を割くだろうか?


 というか、そもそも国だって永遠に存続しているものじゃない。その間にも戦争やら政権交代やらがあったりもするわけで、そのどさくさで情報が失われたり、今使えない遺跡の保護など無駄だと切り捨てられることもあるだろう。


 そんなことを積み重ねた結果がこれだ。目の前から脅威が去れば、人は忘れ軽んじる。前回の勇者が現れたのは三〇〇年と少し前だったはずだが、魔王と勇者の存在や勇者だけが操れる雷の魔術があるなんて断片的な情報は残っていても、こういう細かい部分に関しては失われてしまってる。


「あー、それかひょっとして、前の勇者はここの力を回収してないって可能性もあるのか。他にもいくつかあるらしいけど、全部集めるのが必須ってわけでもないだろうし」


「ああ、なるほど。遺跡を見逃してる可能性も当然あるわけね」


 ふと浮かんだ俺の呟きに、ティアがふむふむと頷く。実際アレクシスは二周目の俺が現れるまで聖剣を取り逃したりしてたわけだから、この手の取りこぼしは意外とあるのかも知れない。大事なのは魔王を倒せるくらいに強くなることであって、全部の力を集めなきゃいけないわけじゃねーだろうしな。


「おいおいおいおい、こういうのがまだ他にもあるのか!? そんなの超! 全部! 集めなきゃ駄目じゃねーかっ!」


「……そうですね。教会としても全ての力の位置を把握しておくのはとても重要だと思います。もし分かるのでしたら、むしろ魔王討伐よりも優先してもいいかも知れません」


「そうだな。次があるのかは知らねーけど、ここで改めて情報をまとめとくのは有用だろう。ただそれはそれで危険もあるわけだが……」


 誰も知らないからこそ、シトロワ遺跡にしろこの遺跡にしろ完全に放置されている。だが知られていれば欲深い人間や魔王軍によって遺跡を押さえられていた可能性もある。俺みたいに探知手段があるなら、誰も知らないというのは最強の防御でもあるのだ。


「おいエド、そんな難しいこと俺達が考えたって超! 意味がないだろ!? 自分が死んだ後の未来にここがどうなるかなんて、それこそ超! どうしようもないぜ!」


「……そりゃそうだな」


 バーンの単純な指摘に、俺は思わず苦笑いする。ああ、確かにその通りだ。そんな未来のことに責任なんて取りようが無いし、それをどうするかはその時代の人間が考えりゃいい。魔王を倒せばいなくなる部外者でしかない俺がそれをどうこうしようなんて、それこそ思い上がりも甚だしいってもんだ。


「じゃ、先のことは気にせずガンガン力を回収してくか。つっても具体的にはどんなもんなのかは流石にわかんねーけど」


「うぉぉ、楽しみだぜっ! 超! 行くぞみんなっ!」


「ちょっとバーン! そんなに走ったら危ないわよ?」


「だいじょうぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「はぁ……エウラリア、回復魔術を準備しといてくれ」


「……畏まりました」


 早速何かに巻き込まれているであろうバーンを追いかけ、俺達は遺跡の中へと入っていく。どうやらここはかつて野盗か何かがねぐらにしていたようで、古めかしい罠のいくつかがまだ稼働する状態で仕掛けられているようだ。


 もっとも、今更その程度でバーンがどうにかなるはずもない。驚いて声をあげただけで、その足下には切り飛ばされた矢が幾つか落ちている。


「大丈夫か? 錆びた鏃は下手な毒より厄介だから気をつけろよ?」


「超! 了解だぜっ!」


「……あの、エドさん。回復します」


「エウラリア? 今の会話のなかに、俺が怪我したって要素あったか?」


「でも、準備してしまいましたから……」


「あー、そう? ならまあ、うん。別にいいけど」


「失礼します……」


「……………………」


 バーンが壊れかけの罠を片っ端から壊しているなか、怪我なんてしてない俺に何故かエウラリアが回復魔術を使い、そんな俺達をティアが何とも言えない顔でジッと見つめてくる……最近ちょこちょこある状況だが、何度経験しても猛烈に居心地が悪い。


「……終わりました。あの、エドさん? お体の調子はどうですか?」


「調子? そりゃまあ快調だけど……回復魔術も使ってもらったしな」


「そうですか……それは――」


「おーい、エド! これまた地下に行けばいいのか!?」


「いや、わかんねーからちょっと待ってろって! 悪いエウラリア、何だ?」


「……いえ、何でも。では、私は勇者様を追いかけますので」


 俺の問いかけに小さな声でそう答えると、ぺこりと頭を下げたエウラリアがバーンのいる方へと小走りに去って行く。するとエウラリアに入れ替わるように近づいてきたティアが、ペタペタと俺の体に触れてくる。


「ティア? どうした?」


「……何処か痛いとか、そういうことは無いのよね?」


「へ? そりゃねーよ。元々怪我なんかしてねーんだし」


「……ならいいけど」


「なあ、本当に何なんだ? ひょっとして俺が気づいてないだけで、エウラリアに何かあるのか?」


 ティアの様子は、最近ずっとこんな感じだ。言いたくないことを聞くつもりはないという考えは今でも変わっていないが、信頼していることと心配しないことは違う。ならばこその俺の問いかけに、ティアが浮かない表情のまま言う。


「私が何かあるって言ったら、エドはどうするの?」


「どうって言われても……その『何か』がなんなのかによるだろ」


 俺からすると、エウラリアはちょっと変わっているがまあ優秀な人物だ。回復魔術の腕は確かだし、微妙にティアとぎこちない感じがするのを除けばパーティ内での立ち回りも悪くない。そしてそれはティア側の心持ちの影響が大きいので、エウラリアに非を求めるものでもない。


「ただ、ティアがそんな風に人と距離を取るのは本気で珍しいからさ。ひょっとして俺の知らないところで何か問題があったりするのか?」


 基本的に人懐っこいティアが距離を詰めていかないのは、明確な敵意を向けてくるような相手くらいだ。だが俺の目線ではエウラリアにそういう意識があるようには見えず、だからこそどうしていいのかわからない。


「一応聞くけど、こっそり嫌がらせされてるとか、そういうわけじゃねーんだよな?」


「まさか! エウラリアはいい子よ。確かにちょっと変わったところはあるけど……でも、いい子なの。エドやバーンには勿論、私にだって気を遣ってくれてるのがわかるもの。でも、だから……」


「ん?」


「……ごめんね。どうしても、どうしても私の中にある何かが、エウラリアの事を受け入れられないみたいなの。出会った時からずっとそうだし、ここまでくると悪いのはむしろ私かも知れないわね。ごめんなさい」


「別に謝ることはねーけど……それならそれで仕方ないんじゃねーか? 人間なんだし、どうしたって合わない奴はいるさ」


 それがいいとか悪いとかではなく、何故かそりの合わない相手というのは居るものだ。ティアにとってそれがエウラリアだったとすれば……それはもう本当にどうしようもない。


 ってか、そうか。だからティアは俺に一緒にいて欲しいって言ったのか? 普通なら二人に謝り倒してパーティを抜けるってのもアリだが、バーンが勇者である以上それは無理なわけだし。


「そっかそっか。よし、ならあんまり無理はすんなよ。魔王を倒すまであとどのくらいかかるかわかんねーけど……それまでは少し我慢して、上手いことやってくれ。何かあればいつでも相談に乗るしな」


「ありがとうエド」


 不意に、ティアが俺に抱きついてくる。首に回された手は思いのほか細く、触れ合う頬の温もりは外気の影響か微妙に冷たい。


「……さ、元気も貰ったし、行きましょ!」


「おう!」


 若干無理をして元気な声を出すティアに、俺はあえて何も言わずに答える。今回の世界は、久しぶりの王道を行く勇者パーティの冒険譚。不謹慎だとわかってはいてもティアと二人で楽しめるかと思ったんだが……憧れていた冒険譚が実は全くの創作だったと知ってしまった時のように、俺は目の前に広がっている世界が少しだけくすんで見えた。

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女のカン、ってことか…!
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