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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一五章 熱血勇者と偽りの魔王

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明日というのは、同じような今日の積み重ねの先にある

「それじゃ、かんぱーい!」


「超! 乾杯!」


 無事に依頼をこなし、その日の夜。俺達は地元の安酒場にて初めての依頼達成の祝杯を挙げていた。


 と言っても、「初心者が受けるにしては割がいい」程度の仕事を一つ二つこなしたところで、大した金が入るわけでもない。それでもこうして三人で騒げるのは、俺がちょっとした裏技を使ったからだ。


「プハーッ! 一仕事終えた後の酒は超! 美味いぜっ! それもこれもエドのおかげだな!」


「はは、いいって。一緒に仕事したんだから、独り占めなんてしねーよ」


「流石はエド! 超! 太っ腹だぜっ!」


 俺達三人で糸綿花を探している最中に、俺はいい値段で売れる別の薬草を見つけていた。それを売った金でこうして酒を飲んでいるわけだが、それを見つけたのは偶然の幸運ってわけじゃない。「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」で探したものをさりげなく見つけたように装ったのだ。


 何故そんなことをしたのかと言えば、連帯感を高めるためだ。確かに現金も金目の物も俺の「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」には大量に入っているが、それを取りだして「奢ってやる」なんて言っても……いや、バーンなら喜んでついてくるかも知れねーけど、それでも何処かに遠慮というか、壁ができる。


 が、同じ仕事をこなすなかで偶々見つけたものが金になり、その金で一緒に飲めば? 同じ金額だとしても、得られる一体感はグッと高まる。見ず知らずの人間と一〇〇回も打ち解ける必要があった俺の人生経験が生み出した小技の一つってわけだ。


「にしても、バーンは本当に強かったわね。私感心しちゃったもの」


「ははは! 俺は超! 最強だからな! でもティアだって凄かったぜ。やっぱりエルフってのは超! スゲーんだなぁ」


「おいおい、ティアが凄いのはエルフだからじゃなく、ティアだからだぞ?」


「おっと、こいつは俺の超! 失言だったぜ! 悪いなティア」


「いいわよ別に。それに私だけじゃなく、エドだって凄かったでしょ?」


「そうだぜ! あんな凄い斥候技術、どうやって身に付けたんだ?」


「ん? どうって言われても、日々の鍛錬の賜としか言いようがねーな。頑張ったらできるようになってたってだけさ。バーンだってそうじゃねーのか?」


「確かに! 俺も超! 剣を振ったりしてるだけで、気づいたら超! 最強になってたからな!」


 一周目に聞いた話がそのままなら、バーンには師がいるわけでもなければ、両親が高名な騎士や冒険者などということもない。単なる村人が素振りをしてるだけで最強になっていたという、理不尽の権化のような存在だ。


 まあ勇者なんてのは大抵そういうものなんだが、やりたいこととやれる才能がガッチリ噛み合ったらどうなるのか? その好例がバーンという青年なのだ。


「なあバーン。もしよかったら、これからもパーティを組んでみねーか?」


 だからこそ、俺はある程度酒が進んだところでそう持ちかける。俺の能力を剣士ではなく斥候として見せたのは、この提案をするためだ。


「今日一緒に仕事をしてみてわかったんだよ。俺が斥候やって、ティアが精霊魔法で補助して、バーンが敵をぶった切る。自分で言うのもなんだけど、なかなかバランスの取れたパーティだと思わねーか?」


「そうね。私もバーンになら安心して前衛を任せられるわ。どうかしら?」


 俺の意図を即座に汲んで、ティアもそう追従してくれる。短時間ながらも一緒に仕事をしたことでバーンの人柄と腕はわかっているため、その言葉に嘘はない。


「そうだな……」


 そんな俺達の言葉に、バーンはしかめっ面で腕を組んで考え込む。たっぷり数秒の時間をおいてからあげた顔に浮かぶのは、これ以上無い程の満面の笑み。


「勿論、超! オーケーだ! むしろ俺から頼みたいくらいだぜ!」


「そいつぁよかった。なら俺達のパーティ結成記念に、もう一回乾杯するか!」


「いいわね。やりましょ!」


「おう! 俺達、超! 最強パーティ結成を祝して!」


「「「乾杯!」」」


 木製のジョッキがガツンとぶつかり合い、俺はその流れでバーンと肩を組んで笑い合う。そうして楽しい夜を過ごし、俺達は一旦別れてからそれぞれの宿に戻り、そして翌日の朝。


「パーティを組んだ俺達に相応しい超! 高難易度の依頼をくれ!」


「はぁ? 突然そんなことを言われましても……」


 待ち合わせてやってきた冒険者ギルドにて、朝からバーンが受付嬢に迫っている。が、言われた受付嬢の方は半分くらい迷惑が混じった困惑顔だ。まあ何の前置きもなくいきなりこんなことを言われたら誰だってそうなるだろう。


「はは、すみません。バーンの言う通り、俺達パーティを組んだんですよ。で、三人もいれば昨日よりは実入りのいい依頼が受けられるんじゃないかと思いまして」


「ああ、そうなんですか。昨日の糸綿花の採取も成功してますし、その上でパーティを組まれるということでしたら、確かに新人でも多少難易度の高い依頼も受けていただけると思いますよ」


「だろ!? なら早速、超! 稼げる依頼を――」


 ニッコリと営業スマイルを浮かべる受付嬢に、バーンがぐいっと身を乗り出して言う。が、それだと話が進まないので、俺はバーンを押しのけて受付嬢に話しかける。


「ちょっ、エド!? 何を――」


「こいつはとりあえず置いといてください。で、三人いれば周囲も常時警戒できるし戦闘にも対応できるってことで、この依頼を受けたいんですけど」


 そう言って俺が差し出したのは、あらかじめ剥がしておいた依頼書だ。その内容に目を通すと、受付嬢の笑顔に途端に陰りが生まれる。


「シトロワ遺跡の調査依頼ですか。確かにあそこはゴブリンとかの巣になりやすいんで、定期的に調査依頼を出して中の魔獣を掃討してもらってますけど――」


「いいじゃねぇか! 受けさせてやれよ!」


 何かを言いかけた受付嬢の口を塞ぐように、背後から粗野な声が響く。振り向いてみれば、そこではひげ面の男がにやけた顔をしてこちらを見ている。


「ガジルさん!? またですか!?」


「いいんだって! 昨日は見事糸綿花を無事に採取してきた、期待の新人パーティだろ? なら何度も人が入ってるしょぼくれた遺跡の掃除……いや、調査依頼なんて楽勝のはずだ! そうだろ?」


「ええ、まあ。俺達ならいけると思いますよ」


「超! 楽勝だぜっ!」


「そうね。特に問題があるとは思えないけど」


「ほれみろ! 本人達がこう言ってんだから、やらせてやりゃいいんだよ! 何事も経験ってやつだ、ガッハッハ!」


「本当にもう……で、どうします? 受けられますか?」


「勿論。お願いします」


「はぁ……わかりました」


 昨日とそっくりのやりとりを終え、俺達は無事依頼を受けることができた。そのまま町を出て遺跡までの道すがら、やはり今回もティアがこっそりと俺の手に触れてくる。


『で、エド? またあの人が……ガジルさん? が絡んでくるような依頼を受けたってことは、この依頼にも何か意味があるの?』


『ふふふ、勿論。つっても今回は特に危険ってこともないはずだから、ティアもバーンと一緒に楽しんでくれよ』


『へぇ? わかったわ。じゃ、期待してるわね』


 二周目である俺はどうしようもないが、ティアの冒険の楽しみを奪うのは無粋に過ぎる。ティアが足取りと一緒に長い耳を弾ませるのを見ていると、不意に前方からバーンが呼びかけてきた。


「おーい、二人とも! 遅れてるぞ!」


「ああ、すまんすまん。ってかバーン、むしろお前が一人で先に行きすぎだ! 俺が斥候だってちゃんとわかってるか?」


 こんな場所で俺達に危険を感じさせる程の何かがあるはずがないとはわかっているが、それでも最低限の警戒は必要だ。ならばこそ苦笑して問う俺に、バーンは悪びれる様子もなく笑顔で返してくる。


「当たり前だろ! 遺跡に入ったら超! 期待してるぜ!」


「いや、入る前から期待しろよ!? 仕方ねーなぁ。じゃ、ティア。後ろは任せる」


「了解。頑張ってね」


 いつでも全力前のめり。俺を待たずにズンズン進んでいくバーンに苦笑しつつ、俺はティアに一声かけてからその背を小走りで追いかけていった。

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