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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一五章 熱血勇者と偽りの魔王

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他人に認めて欲しいなら、見た目を整えることも重要だ

「ありがとぉぉぉぉぉ! 超! 助かったぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 全身びしょ濡れになった青年が、真っ赤なツンツン髪の頭を下げながら大声でそう伝えてくる。あの糸は濡らせば取れるので、ティアが精霊魔法で雑に水をぶっかけた結果だ。


「いやいや、気にすんなって。困ったときはお互い様だし、俺達だって普段は助けてもらう方の新人だしな」


「お? 何だよ、アンタも新人なのか? 俺はバーン! 今年一七になった、世界最強の冒険者っ! だぜっ!」


「そうか。俺はエドだ。歳は二〇歳だから、俺の方が少し年上か? よろしくなバーン」


「私はルナリーティアよ。歳は二一歳ね」


「エドにルナリーティアかっ! こっちこそ、よろしくっ!」


 俺の差し出した手をガッチリと掴んだバーンが、吹き飛ぶんじゃないかという勢いで上下に振ってくる。この全体的に声と動作が大きい暑苦しい青年こそが、この世界の勇者バーンなのだ。いやぁ、懐かしいな。最初からこの顔を見てりゃ一発でここが第〇四四世界だと思い出したんだが。


「で、バーン。糸に巻かれてたってことは、糸綿花(しめんか)の採取依頼か?」


「そうだぜっ! 記念すべき俺の初仕事だから、超張り切ってやってきたんだが……」


「失敗、よね。見た感じ」


 バーンの足下に咲いていたであろう紫色のでかい花は、その内容物を全て吐き出してしおれてしまっている。誰が見ても採取失敗なのは明らか――


「そうなのかっ!? こいつを持っていけば、超! 依頼達成だと思ったんだが!?」


「……いや、無理だから。つーか糸綿花で金になるのは中の糸っぽい部分だから、それを吐き出しきった花を持っていても苦笑されるだけだぞ?」


「うぉぉ、何てこったぁぁぁぁぁぁぁ!? 超! 大失敗だぜぇ!」


 俺の言葉に、バーンがその場でガックリと項垂れる。落ち込み方まで大げさなのが何ともバーンらしい。


「まあまあ、そう落ち込むなよ。俺達も同じ依頼を受けてるから、どうだ? 一緒にやらないか?」


「いいのかっ!?」


「さっきも言ったけど、困ったときはお互い様さ。いいだろティア?」


「勿論いいわよ。一緒に頑張りましょ」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 二人とも超! いい奴だぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「フフッ、大げさねぇ」


 瞬時に元気よく立ち上がり叫ぶバーンに、ティアもまた苦笑する。そうして臨時パーティを組んだ俺達は、新たな糸綿花を探して森の中を歩きながらお互いの情報を交換していく。


「へぇ。じゃあバーンは英雄になりたくて田舎から出てきたの?」


「違うっ! ただの英雄じゃなく、超! 英雄だ!」


「あー……それは何が違うの?」


「超がつく方が、何となく凄いだろ!? つまりそういうことだ!」


「あはは……エド?」


「ん? つまりそういうことだよ。超がつくって凄いよな」


「そうだぜぇ! 流石は俺の超! 親友のエドだぜぇ!」


「親友判定はえーな!? さっき会ったばっかりだぞ?」


「ハッハッハ! 友情に時間なんて、超! 関係ないんだぜぇ!」


「うぅ、結局超がつくとどうなの……?」


 相変わらず暑苦しい物言いだが、聞く限りではバーンの生い立ちやここまでに至る経緯には一周目との差異は見受けられない。そのことに俺が内心ホッと胸を撫で下ろしていると、不意に周囲に敵意とでも言うべきものが漂ってきた。


「エド」


「わかってる」


 程なくして、近くの草がガサリと音を立てる。木々の影から姿を現したのは、ごく普通のゴブリンが五匹。俺にしろティアにしろ、殺意を向けてくる敵に油断をする気は全く無いが……実力的には全く問題の無い雑魚だ。


「ギギギ……」


「どうするエド? 私が――」


「ここは俺に、超! 任せろっ!」


 ティアが話し終えるより先に、バーンがゴブリン達に向かって勢いよく走り出す。その動きにティアも反応したが、俺はその肩を掴んで動きを止める。


「いいの?」


「まあ見てろって」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 腰の剣を抜き、派手な雄叫びをあげるバーンが無造作にゴブリンに向かって突っ込んでいく。一見すれば何も考えてない馬鹿が一人で先走っただけに見えなくもないが……俺はバーンの実力をちゃんと知っている。


「最強流奥義!」


「ギギギィ!」


「超! メッチャ斬り!」


「……ギ?」


 フェイントも何も無い、荒々しくまっすぐな剣閃。それが五度閃くと、ゴブリン達の首が勢いよく飛んでいく。瞬きの間に物言わぬ骸となったゴブリンを背に、バーンはフォンと剣を振るってその血糊を吹き飛ばすと、鞘に収めてニヤリと笑った。


「ハッハッハー! どうだ二人とも! この俺の超! 最強っぷりは!」


「凄い凄い! バーンったら強いのね!」


「まあな! 何せ超! 最強の男だからな!」


 パチパチと拍手をするティアに、バーンがドヤ顔で胸を反らす。その言動はともかく、バーンは勇者。その実力は間違いなく本物だ。


「あれ? でもそんなに強いなら、何で採取依頼を受けたの? 普通に討伐依頼を受けた方が楽だったんじゃない?」


「そ、それは……」


 ティアの素朴な疑問に、バーンが初めて困ったように顔をしかめる。


「俺もそう言ったんだが、あの受付の姉ちゃんが駄目だって言うんだよ。実戦はそんなに甘くないとか、まずは安全な依頼で経験を積んでいけとか……くそっ、俺は超! 最強だって言ったのによぉ……」


「ああ、そういうこと……」


 その答えに、ティアが納得の声を漏らす。バーンの見た目は、安物の武具に身を固めたいかにも新人冒険者だ。ろくな装備も実績も無い若い新人冒険者が「俺は最強だから、超! 強い魔獣を倒す依頼をくれっ!」なんて言い出したら、善良な人物なら当然諫めることだろう。


「でも、受付はあくまで受付なんだし、突っぱねることはできただろ? なのに何でそいつの言うことを聞いたんだ?」


「何言ってんだエド、そんなの当たり前だろ? ちゃんと心配してくれてる人の言葉を無視するのは、超! 格好悪いじゃねーか!」


 ティアから引き継いだ俺の問いに、バーンがばつが悪そうにそう返す。それは俺が知っている通りのバーンの答えで……それを聞いたティアの顔が、知人から友人に向けるものに変わる。


「バーンは優しい人なのね」


「ばっ、そんなんじゃねーよ! ただじいちゃんが『人の話を聞かない奴は、人に話を聞いてもらえない寂しい奴だ。強いだけの寂しい奴にはなるな』って言ってたからな!


 だから俺は超! 人の話を聞くぜ! 勿論、ルナリーティアの話もな!」


「あらそう? なら一つ聞いてもらおうかしら?」


「おう、いいぜ! この俺に超! 相談してみろ!」


「私の名前、ルナリーティアじゃ長いでしょ? ティアでいいわよ。改めてよろしくね、バーン」


「うぉぉぅ!? よ、よろしくな! ティア!」


 笑顔のティアに手を握られて、バーンの顔が髪と同じく真っ赤に染まる。実にわかりやすい反応は何とも初々しく、見てるこっちがにやけちまう。


「ねえエド、バーンっていい人ね」


 そうして手を離されると、さっきまでティアの温もりがあったであろう自分の手を振り回しながらアタフタしているバーンをそのままに、ティアが俺の方に近寄ってきた。その蠱惑的な笑みはアイドル生活を経て一層魅力が増したようだが、俺にとってはいつものティアだ。


「だろ? アレクシスとかとは方向性が違うけど、あいつはいい勇者さ。まあその分苦労も多かったけどな」


「そうでしょうね。でも……ふふっ。今回の冒険も楽しくなりそう」


「ああ、きっと楽しいと思うぜ」


 その性格故に問題に巻き込まれることも自分から首を突っ込むことも、そして自分自身が問題になることも多い勇者バーン。あの波瀾万丈の日々をティアと一緒に楽しめると思えば、俺の胸にもワクワクが湧き上がってくる。


「とはいえ、まずは目の前の依頼を片付けねーとな。おーいバーン! いつまで動揺してんだよ! そろそろ行こうぜ!」


「はっ!? お、俺としたことが! 女の子の手の柔らかさにに超! 取り乱しちまったぜ。


 ああ、今行く! うぉぉ、待ってろよ()……()……? えーっと、何か花!」


「糸綿花な。流石に採取物の名前くらいは覚えろよ、ったく……さ、ティア」


「ええ、行きましょ!」


 叫びながら一人で走って行ってしまったバーンに、俺はティアと一緒に並んで後を追いかけていった。

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― 新着の感想 ―
>バーンは英雄になりたくて田舎から出てきたの? 某島戦記で破裂音みたいな名の若者が故郷の村を出て神官エトやドワーフ、ハイエルフ、盗賊の仲間と冒険を経て自由騎士の英雄になったが、この燃えるような勇者はさ…
無自覚人たらしなティアさん 互いに恋愛感情無いからいいけれど、エドが他の女性に目を向けているときに嫉妬するのと裏腹に自分は異性との距離感バグってるところだけはちょっともやっとするかなぁ 二人にそれぞれ…
[良い点] 変わり種から王道への戻し方。 [気になる点] 王道なのか?
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