77.閑話
空気中の魔素がざわめく。
迷いの森から大きな火の玉が出来ていく様子を王国の何人かは見ていた。そして、一瞬にして消えたところも。
その情報はすぐに王の元にも届いた。王は、とある三人を呼び出した。
その三人は裏貴族と呼ばれる特別な地位にいるもの達であり、王国の裏側、つまりアンダーグラウンドを取り仕切っている。
情報屋ポーター。表の顔は、燻れた裏路地のに住む男だが、夜市の王とも呼ばれ、この国随一の武力を誇る。
服屋ルミア。表では服屋を営んでいるが、裏では暗殺者として名の馳せる女。
雑貨屋フェギス。表には一切顔を出すことの無い、あらゆる物を扱う店の老婆。
今までは、彼らと王は間接的でしか関わらぬようにしてきた。しかし、今回のことで彼らの手を直接借りるしかなかった。
迷いの森から大きな火の玉。それを産み出したものが王国に害するのかどうか。調べてきてほしかった。
黒い魔物であれば、今すぐにでも国民を逃がさなくてはならない。敵国の者であれば、始末してほしい。
王は彼らに依頼する。
「急に呼び出してすまない。迷いの森で突如現れた火の玉の事は知っておるだろう。その調査に向かってほしい。なるべく早く尾端祭、および夜市の開催の不穏の芽を摘んでくれ」
「····俺らじゃなく余所者に頼めば良いんじゃねぇのか」
王の言葉を聞いて、ポーターは頭を掻く。
「ダメだ。彼らにはまだ役目がある。万が一というものがあるからな」
「あぁ、はいはい。公国の接待か」
ポーターは溜め息をつく。王国よりも兵力を持つ公国は余所者に興味を持っている。
それを無視できない事はポーターもわかっていた。余所者の中でも害の無い、ヨルとその仲間の余所者。
「私は行きたくない。危ないことはもうしたくないの。あの娘達の為に」
黒と茶色の髪の女がそう呟く。彼女は最近、余所者に傾倒していたなと、ポーターは思い出した。彼女は今、余所者をまるで娘のように扱っている。彼女の娘はもう死んで、代わりなぞどこにもいないというのに。ポーターは、女を哀れに思った。
「私もパスだね」
老婆は、首を横に振る。
「私に利益がない」
その言葉にまぁ、そうだろうな。とポーターは、ひとりごちる。
「結局、俺がやんのか」
ポーターは、損な役回りに溜め息をついた。




