34,5.閑話
ヨルを除いた、ミカヅキ達は冷や汗を流していた。
迷いの森から帰還し、ルイスという男に今日の報告した後に、王族達の晩餐に招待されてしまった。
大きな扉を抜けて息を飲んだ。
今まで歩いてきた廊下も充分に豪華だったが、この部屋は別格だった。
幻想的な明かりを灯すシャンデリアに動き出しそうな厳かな絵画、高そうな花瓶に生けられた咲き誇る瑞々しい花達。この部屋の全ての物がまるで輝いているかのように見えた。
長いテーブルには既に様々な食事が並んでいた。白いテーブルクロスは綺麗な刺繍がしてあり、縁にはレースで飾り付けてある。
ミカヅキは顔から血の気が引いていて、ヨルはどうでも良さそうにあくびをする。サクラは腹が据わったのか堂々としており、逆にサカヅキは緊張のあまり、体が固まっているかのように動きがギクシャクしている。ノブナガは下を向いてモジモジと指で遊んでいた。
「どうして、どうして!こんな正体の知れない奴等と食事をしなきゃいけないのよ!」
そうヒステリックに叫んだのは、先に椅子に座っている赤髪の女。女はガンガンとフォークで皿を突き刺してストレスを解消していた。
その前に座るのは無気力気な男で、二人の間に座っているのが王様だった。王様の隣にはルイスが控えている。
「落ち着きなさい、トーリー」
「何で、何で!お父様が私に命令するの!?」
女はガンガンと、また皿を叩く。隣にいた執事がガチャンと皿を叩き割ると、流れ作業のように割れた皿を下げて、また新しい皿へと変える。
「とりあえず、客人を椅子へ」
王様はトーリーと呼んだ女を無視してメイド達に命令する。
すると、後ろに控えていたメイドがスルスルと音も立てず歩き出し、ミカヅキ達をそれぞれの座席へ案内した。彼らは先に座っていたトーリーや男よりも数席空けて座る。
座ったのを確認すると王様は頷き、口を開いた。
「私の左手に座るのが、私の息子であり、次期王であるジャークである。そして右手に座るのが、息子の婚約者のトーリーだ。····ジャーク、トーリー、彼らが迷いの森を探索してくれている冒険者達だ」
「今更、今更!そんなことしても無駄!死んでるに決まってる!」
皿を叩くのだけでは飽きたらず、今度は足でガンガンと床を踏みつける。
彼女が音を出す度に、彼女の回りでチロチロと赤い羽根が舞う。
「すまない、ルイス。トーリーを部屋へ」
「分かりました」
ルイスはトーリーの肩を自分の方へと引き寄せ、とそのまま掬うように抱きかかえる。
肉が焼ける音が聞こえ、ルイスの手は赤く血が滲む。彼はその痛みを感じないかのように平然としていた。
「最近は落ち着いていたのだが···」
ミカヅキは、見てはいけないものを見てしまったかのような罪悪感に襲われた。
「あの子は本当は優しい子だったんだ。私の妻が死んで、あの森にいた友人達も見えなくなり、心を見失ってしまったのだ」
そう言って、王様は遠い目をして幸せな日々を思い出す。彼の姿はその瞬間だけ、とてもとても老いているように見える。
「まぁ、身内の恥を晒してしまってすまないな」
ふっと、息を吐くとまた威厳ある王の姿へと戻った。
「····それでは、君達の話を聞かせてくれ。迷いの森に何があったのかを」




