35.猫、蛇、どっちなの?
シンディさんがエリマキに触ろうとして、嫌がってその手から逃げ、俺の膝の上で丸まった。
「エリマキ、お前、蛇だったのか?」
そっと、エリマキの背を撫でる。フワッと、伝わってくる思念は違うともそうだとも言っているようだ。
どっちやねんと、心のなかで突っ込みいれるとエリマキがにー、と鳴く。
「もしかしたら、認識阻害のスキルでも持っているのかも知れませんね」
認識阻害か。エリマキはそんなことも出来るのか凄いな。やっぱりハイスペックじゃないですか。ヤダー。
「なるほど。ところでシンディさんにはどんな風に見えているんですか?」
「黒い色の赤い目をした蛇に見えました。声は猫だったので驚きましたよ」
黒い蛇か、かっこいいんだろうな。
うにー?と、エリマキは顔を傾げ、何かしらを思いにゃんと鳴く。けほんと咳をすると、口から煙のような黒い空気を吐き出した。
黒い煙はエリマキの体を覆い隠してしまう。煙が散ると鱗が黒々と輝く蛇がいた。
この蛇はエリマキだ。伝わってくる思念で確信した。赤い目と縦に割れた瞳孔がじっと俺を見てくる。
まるで不安に思っているようだった。何を不安そうにしてるのか、俺にはわからないが取り合えず置いといて、
なんてかっこいいんだろう!
猫の時はちっこくて可愛いし、蛇の時はかっこいいなんて凄い!
この体に力が入れば抱き上げて頬擦りしたい!
あぁ、なんてポンコツなんだ、俺は!
心の内では狂喜乱舞。顔にでて変な顔してなきゃ良いけど、あんまり気にしている余裕は無かった。
彼の頭を撫でると、さっきまでの感情が嘘のように消え今度は嬉しそうに俺の手にすり寄り登っていく。
長い胴体を使って右腕に巻き付き、顔を寄せて、俺の頬に当てた。
俺の思いを汲み取ってくれたのか!なんてかっこ可愛いのか!
身を悶えさせたいのをぐっと押さえ、この至福を味わう。
「確かに猫、ですね。」
そう呟いた女性の声で思い出す。シンディさんの事すっかり忘れていた。
「それがこの子の本当の姿でしょうか?」
「今、シンディさんには猫に見えるんですか?」
「え?はい、そうですけど?」
「俺には蛇に見えています」
「え?」
不思議そうに俺とエリマキを交互に指を指すと、また怪訝な顔をした。
「その子って蛇なんですか?猫なんですか?」
蛇、猫、どっちなのか?少し考えてみたが結局答えは出なかった。
「どっちでもいいんじゃないですか?猫は可愛いし、蛇はかっこいいですし」
「え····。あ。か、カカオさんがどっちでもいいと思うのなら良いですけど」
と、そう言いつつもチラチラとエリマキを見てはそっぽを向くという動作を繰り返した。
違和感のある様子に俺は一つのことが頭に浮かんだ。
もしかして、シンディさんは蛇が嫌いだったとか?確かに女性は蛇とか苦手そうなイメージがあるな。
後で、彼女には猫の姿の方を見せておくように頼もう。




