33.魔法のチュートリアル2
目を閉じて、精神統一しようと試みる。しかし、真っ暗で何も見えない。しかも徐々に息が苦しくなっていく気がする。
「あの、息を止めなくても良いんですよ?」
彼女の言葉で俺は息を吸った。
あー、どうりで辛いと思ったんだよ。精神統一、危険、超危険。
フフフ、と笑いを堪えきれていないシンディさん。
「····難しそうですね。ちょっと反則しちゃいましょうか」
「反則?」
「ちょっと待っていてくださいね」
そういうと、小屋の中に戻っていった。数分するとスカートを手繰りあげ、袋状にしてそこに魔石をたくさん入れて持ってきた。
「一つ取って、口に含んでみてください。でも、絶対に噛んだり飲み込んだりしちゃダメですよ」
黄色の魔石を一つ口にいれてみる。ひんやりしているが味はしない。
「では、同じ色の魔石を一つ手に取ってみてください」
手に取ろうとしたとき、パチッと静電気が走りビックリして引っ込める。
さっき触った時は何も無かったのにどういうことなのだろうと思い、シンディさんを見た。
「今のが魔色共鳴です。同じ色の魔素が体内と体外にあることで体の魔素の通り道に流れるんです。同じ色の魔素は引かれ合うという性質を利用して····ってごめんなさい。こんな話、興味無いですよね」
困ったようにシンディさんは笑った。
「これを繰り返していけば魔素の存在がわかっていくはずです。それまでは練習しましょう」
うん、先生より先生っぽい。
とりあえずやり方はわかったので、静電気を無視して手にとってみると、ぎょっとしたような顔で俺の顔を見た。
「い、痛くないんですか?」
未だに口の中に魔石が入っているので口は開かず、頭を縦に降って返事をした。
「····もしかしたら、魔素不足に陥ってる?」
またぽつりと、言葉をもらす。
痛覚が鈍い種族なだけなんです、って言おうにも口の中の魔石が邪魔している。
飲み込もうか、吐き出そうか。それが問題だ。飲み込んだらいけない雰囲気だったし、吐き出すのはちょっと汚いな。
「いくつか、質問しますので答えてください」
あんまりにも真剣な目で見つめるから、狼狽えながらも頷く。
シンディさんはスカートから手を放して、魔石を落とした。勿体ないと瞬間的に思ったのは性分だろう。
「痛覚、····これを痛いと思いますか?」
そう言って魔石を持った右手を握る。痛みなんて何も無かったので、イイエと頭を振る。
「倦怠感や動きにくさはありますか?」
倦怠感はないけど、ちょっと力を入れるだけで動けなくなるから、ハイで。
「いつも空腹感はありますか?」
あー、空腹感か。なんか鬼人族のステータスに書いてあったな。確か、感じないんじゃなかったっけ?イイエっと。
「····魔素不足じゃない?」
シンディさんが頭を傾げるから、つい、俺も真似してしまった。
というか、早く口の中の魔石をどうすれば良いのか教えてほしい。これからずっと入れぱなっしは嫌だ。
というか、小さくなってないか?これ。
舌で転がしてみると、最初に含んだときよりも2回りくらい小さくなっている気がした。
持っていた魔石も今では潰せそうなほどの大きさになっていた。
「あ、無くなった」
魔石を転がしていると消えて無くなってしまったので、思わず口にしてしまった。
シンディさんは俺の一言を聞いて「えー····」と引いたような顔をして、俺を見た。




