97.嫉妬
食器を洗って、拭いてしまう。ちらりと時計を見ると、まだログインできる時間が残っている。体を左右に動かして、気合いを入れた。
「よし!」
ヘッドセットをつけて、ログインする。
カカオ君の目を開けても、視界に写るのは、一面の黒。そして、体をもふもふに埋もれている気がする。重くて、全く動けない。あー、なんかデジャヴ。
そうそう初めてフレッド達に会った時、先生に木のうろに突っ込まれたんだっけ。こんな感じに埋もれてたんだよな。ふ、なんだか懐かしい気がする。でも、手触りは良くなったかも?
俺が起きた事に気づいたのか、もふもふはのっそりと動いて退いてくれた。
俺の上に乗っていたのが、フレッド。下にいたのが、ウィル。腹の上で脱力しきっているのがエリマキ。
グッと首を空に向けると、満点の星空があった。現実の天の川がたくさんあるような感じ。でも、俺、実際には見たこと無いんだけどな。
俺はそっとエリマキを撫でると、彼は顔を寄せてくる。そのまま、顎をなぞって首のところで軽く掻いてやる。エリマキから伝わるのは、心地よさだった。
首から頭に移動させ、グリグリと撫でててもエリマキは嫌がらなかった。嬉しくなって、「んふ」と、キモい笑いがこぼれた。
「さぁてと、ウィルもブラッシングしようかな」
そういうと、エリマキは俺の体から降りて、あくびをしていた。
俺は櫛と煙管を取り出した。すぅと、煙を吸う。ふうと吐き出すと、体が動きやすくなる。
白い緑の毛並みをツヤツヤさせてやるからな。
ウィルの毛を櫛でとかしていく。ウィルは気持ち良さそうに目を閉じて、舌を出して緩みきっている。緩んでいる顔とは反対に尻尾を凄い勢いで振って、ちょっとした風が起きていた。
「お客様、気持ちいいですかぁ~?」
夜だから小さな声で尋ねると、ウィルは元気良くウォン!と返事をする。その声の大きさにビックリし、近所迷惑になるかと思って左右を確認する。
しかし、いるのは俺一人とエリマキ、フレッド。そういえばここには俺一人だから、近所とか関係ないんだった。忘れてた。
ほっと息を吐いていて安心する。
ウィルはそんな俺の気苦労も知らずに、今度は腹もやってくれと、仰向けになった。くっそ、コイツ、本当にあざといな。ふてぶてしいが、憎めない!
グゥと身悶えていると、エリマキがにゃんと鳴き、俺の足に顔を擦り付ける。
「どうした?」
上目遣いになったエリマキと視線を合わすと、エリマキもウィルを真似してへそ天になった。えぇ?何、嫉妬ですか?ちょっと可愛すぎませんか?
俺はどうすれば良いのか分からなくなって、右往左往する。エリマキの腹を撫でたいが、ウィルの腹も捨てがたい。両立はできない為、自分が二人に存在しないことにショックを受ける。
すると、その様子を見ていたフレッドも、エリマキの隣で仰向けになった。え?何コレ?カワイイ····。カワイイ····。
俺の頭は完全に思考が停止して、煙管をストレージに戻し、元凶であるウィルの腹に頭を乗せグリグリと額を擦り付ける。もう知りません。俺は何もしません。
チクチク痛いがもう知るか、バカ!
にゃぁーと、いつもより甘えたような声で、エリマキが鳴いていたが放置すると、エリマキがウィルの腹の上に飛び乗ってきた。それから、ウィルとの間に体を捩じ込ませ、俺の顔はエリマキの腹で一杯になった。
エリマキはそれで満足したかのように、にゃん!と、鳴いた。




