表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/82

第三八話 初めての眷属


「何だかよく判らないんだけれど、このスライムが俺の眷属になったみたい」


 今の光は何だったのかと問われ、俺はそう答えた。


「え? 眷属ですか? リュウヤさんに?」


 ソフィは眼を瞠って驚く。


「そうみたいなんだ。ラファが何かしたみたいなんだけれど……」


 俺は首を傾げながら、足元のスライムを見やる。俺の眷属になったからか、異様に懐かれている気がする。今も俺の足にすりすりと身体を擦りつけているし。


「ハァ~……ラファさんの仕業ですか……。というか、わたしも想像しておくべきでした。こうなる可能性は、少し考えれば判ることだったのに」


 ソフィが大変困ったという顔をする。


「何か問題でもあるの?」


 陽がスライムをツンツンと突きながら訊いた。


「今すぐ問題になる訳じゃないです。ただ少し、リュウヤさんが狙われる可能性が増えたと言うだけで……」


 いやいや、何で俺が狙われるんだ?


「眷属を持つ程の魔族はそう数はいません。眷属を持つだけの力量がある魔族を、主に上位魔族と呼びます。上位魔族として認められるだけでも、魔族からは注目されることになりますし、もしかすると、魔王の眼に留まるかもしれません」

「えぇ~じゃあ俺、人族(ヒューム)だけじゃなく魔族にも注意しないといけないの?」


 ただでさえ窮屈な思いをしているというのに、これ以上は勘弁してほしい。というか、ラファ。何で眷属になんかしたんだよ?


《いずれ、必要になりますので》


 おいおい、意味深過ぎるだろ。


《未来に対しての選択肢を増やす為の眷属化です。駄々を捏ねず、我慢して下さい》


 いや……駄々を捏ねているつもりは微塵も無いんだけれど……。


「まぁそれについては、今後注意しておくって事でいいじゃん。それよりも重要な事があるでしょっ」


 陽がそう言うが……これ以上に重要な事って何だ?


「このスライムの名前を決めないといけないじゃんかっ!」


 拳を作って力説する陽。思わずズッコケそうになったわ……。


「あたし、スラぴょんが良いと思う!」


 いや、それはどうだろうか……。


「イワン雷帝は……どうでしょうか……」


 せつなよ……キミのネーミングセンスは壊滅的だな。つか、イワン雷帝って誰だよ。いや、聞くまい……。


「リュウヤさんの眷属ですので、リュウヤさんが決めるべきかと思います」


 至極当然の意見だな。


「スラぴょんだよねっ、りゅうちゃんっ!」

「い、イワン雷帝っ」


 俺に詰め寄る陽とせつな。いや、無いから。キミたちの意見だけは無いから。

 俺は足許で震えるスライムを見た。まるで変な名前を付けられないか不安いっぱいといった感じだ。

 さて、どうしよう……スライム……ピンク色の……プルンとした……。


「よし! モモにしよう!」


 我ながら何と安直なネーミングだろうか。それでも、モモと呼ばれたスライムは、その名を気に入ったのか、ぷるんぷるんと嬉しそうに弾む。魂の回廊が繋がったからか、何となくだが、感情が判る様な気がする。


「え~りゅうちゃん、それは安易過ぎない?」

「い、イワン雷帝……」


 諦めろ、二人とも。このスライム――モモが気に入っているみたいなんだから。


「これからよろしくお願いしますね。モモさん」


 ソフィだけは名前は何でも良かったようで、早速、身を屈めてモモに挨拶していた。


 さて、魂の回廊を接続したことにより、俺は眷属のステータスを把握することが出来るようになったらしい。早速、モモのステータスでも見てみるとするか。



名前:モモ

種族:粘液族(スライム)/希少種

称号:リュウヤの眷属

性別:-

色素:桃色

魔法:-

技能:「捕食」「溶解」

耐性:「物理耐性」



 以上がモモのステータス。粘液族(スライム)らしいスキル構成だ。やはり「物理耐性」が魅力的だな。


 俺たちは隠し部屋を出て、再び迷宮(ダンジョン)の探索へと戻った。と言っても、もう二階層で目ぼしい場所は無い。魔物もグリーンキャタピラーだけだし、次の階層へ向かう事となった。

 三階層は、二階層同様、洞窟の様な構造だった。しかし、薄暗い感じはしない。壁際に生えているヒカリ苔が適度に視界を確保していた。


 というか……。


「なんでモモは俺の頭の上に乗っているんだ?」


 俺の頭の上には、モモが鎮座している。隠し部屋を出ると同時に、俺の身体を這い上り、頭の上を定位置としてしまったのだ。


「まぁいいじゃんか。そんなにモモちゃんは大きくないし、重くも無いでしょ?」


 陽がケラケラと笑いながら言った。


 確かにモモはハンドボールくらいの大きさで、そこまで重いとは感じないが……眷属が主の頭の上に乗るのはどうかと思うのだけれど……。


「わ、私が……抱っこして……運びましょうか……?」


 せつながそう提案してくれるが……。


「ん~どうやら俺の頭の上が気に入ったみたい。折角言ってくれたのにごめんな」


 せつなの言葉と同時に、モモはプルプルと震えながら、俺の頭にへばりついたのだ。

 明らかな拒絶。せつなはガックリと肩を落としていた。


「前から何か来ますっ!」


 ソフィが鼻をクンクンと鳴らしたかと思うと、そう警告を発する。


 一同は立ち止まり、陽が前へ出て大剣を構えた。


《プラントビーンズです。等級はE-級。体内の豆を散弾のように飛ばす攻撃が特徴です》


 前方から現れたのは、さやえんどうに細い糸の様な手足がついた姿の魔物だった。


「先手必勝っ!」


 視認すると同時に陽が突撃を敢行。しかし……。


「ダメですっ! ヒナタさんっ!」


 ソフィが叫ぶのと、プラントビーンズが豆を散弾のように放つのはほぼ同時だった。


「きゃっ!」


 陽の悲鳴が聞こえた。散弾は不用意に突撃した陽を直撃。いや、辛うじて大剣を盾に身を庇っている。


「遠距離攻撃があるなんて聞いて無いよっ!」

「だからって不用意すぎますっ!」


 ソフィが苦言を呈す。


 二階層の時から陽には突出気味の傾向が強かった。先陣を切る勇ましさは称賛するけれど、少し不用心。未知の魔物に対して警戒心が足りていない。


 大剣を盾にし、プラントビーンズの遠距離攻撃を凌ぐ陽。

 その背後、散弾が防がれているコースをソフィが疾走。


「ヒナタさん、失礼しますっ!」


 一言詫びると、ソフィは陽の背中を駆け登って飛び上がった。

 空中で態勢を入れ替え、天井を蹴り急降下。プラントビーンズの死角外から襲い掛かる。


「シッ!」


 鋭い呼気と共に双剣を振り抜く。

 プラントビーンズの上部を斬り飛ばす見事な一撃。


 身体が別たれると、プラントビーンズは沈黙した。

 警戒しながらソフィが近付き、完全に沈黙しているのを確認。ふぅと息を吐き、構えを解いた。


「流石、フィーちゃんっ。軽業師みたいだったよっ」

「ありがとうございます。でも、ヒナタさん。少し突出し過ぎですよ。未知の魔物に対して、不用心すぎます」


 真剣な表情のソフィに、流石の陽も素直に謝る。


「ごめんね、フィーちゃん。次からは気を付ける」

「はい、気を付けて下さい。ヒナタさんが前に出過ぎてしまうと、後衛の守りが薄くなってしまうので。でも、剣を盾にした咄嗟の行動は良かったと思います」


 ソフィがニコッと微笑んで言うと、陽は眼を潤ませた。


 ソフィの言う通り、咄嗟の判断としては、剣を盾にした陽の機転は称賛されるべき点だと俺も思う。

 だけれど、その前にソフィが言った『ヒナタさんが前に出過ぎてしまうと、後衛の守りが薄くなってしまう』が大問題だ。だって今……。


「よ、横から、プラントビーンズですっ!」


 そう叫んだのはせつなだ。横の通路からプラントビーンズが守りの薄い後衛に襲い掛かって来る。


「う、うそっ!?」

「しまったっ!」


 陽とソフィが同時に叫ぶ。たった今言っていたことが現実に。


 即座に駆け出す二人。だが、せつなからは離れ過ぎていた。二人が戻るまでに攻撃を受けてしまうだろう。

 現にプラントビーンズが散弾を放つモーションを見せている。


 ……仕方がない。なるべく手出しはしない約束だったけれど、美少女が痛い思いをするのは嫌だしな。

 やれやれとばかりに俺が前に出ようとした――その時だった。


 ポヨ~ンと俺の頭から飛び出すピンクの物体。


 ふぇ? モモ!?


 驚く俺を置き去りに、モモは地面にプヨンと着地すると、その身体を目一杯に引き延ばし、プラントビーンズに立ちはだかった。

 瞬間、プラントビーンズが散弾を放つが……。


 ――ペチ、ペチ、ペチ


 散弾は気の抜けそうな音を響かせながら、全てをモモの身体で受け止められてしまう。


「モモさん、流石ですっ!」

「ナイスっ、モモちゃんっ!」


 急接近したソフィと陽が、左右からプラントビーンズに襲い掛かる。

 遠距離攻撃中は動けないのか、プラントビーンズは成す術なく、その命を散らせた。


 散弾が止むと、モモは引き延ばした身体を丸め、元の大きさに。よく見れば、透けている体内にはプラントビーンズの豆が無数に見えるのだけれど……。


《問題ありません。全て消化するようです》


 う、うん……それならいいんだけど……。


「うん、さっきフィーちゃんが言っていた事がよく判ったよ。あたしが前に出過ぎると、こうなる可能性もあるんだね」

「そうですね。わたしも迂闊でした。ヒナタさんに言うべき前に、わたしもしっかりとしないといけませんでした。すみません」

「まぁまぁ、反省は宿に戻ってからにしようよっ。それよりもモモちゃんスゴかったね。ビヨ~ンって伸びて、二人を守っちゃうんだもん」

「自身の特性を最大限に活かしていましたよね。わたしも見習わないと」


 陽とソフィは手放しでモモを称賛した。せつなも……。


「守ってくれて……ありがとう……モモちゃん……」


 なでなでとモモを撫でていた。


 確かにモモの機転はすごいと思う。俺も予想外だったし。でも……俺の出番は?


《マスターの出番はもう永久に無いのかもしれませんね》


 う、そだろ……。迷宮(ダンジョン)まで来て冒険しないなんて……。


《仕方がありません。マスターは冒険者では無いのですから》


 あ、そうだった。俺だけ冒険者じゃなかった。アハハ……ハァ~……。


 なんて落ち込んでいると、右足に柔らかな感触が。見れば、モモがプルプルと震えている。


「えっと……褒めて欲しいのか?」


 より一層プルンと震えるモモ。


 はぁ~……仕方がない。確かに大活躍だったしな。


「助かったよ、モモ。ありがとな」


 俺が撫でてやると、モモは嬉しそうに身を震わせたのであった。



やっと魔物の仲間を得ることができました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ