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あなたの為なら…
横村さんは、自分で抱え込んでしまうタイプだ。
そういう所を見ると、放っておけない。
その時は、なるべく自分の仕事を早く終わらせて、助けている。
おせっかいと思われたくないから、あんまり出来ないけど…。
今の仕事は、次の日にある作業の準備をしている。
前にいた所では、作業が苦手でよく怒られたけど、今ではかなり出来るようになった。
皆に、いつか成長した所を見て欲しいなぁ…と思いながら、準備をしていった。
『中村さん』
いきなり背後から、私の名前を呼ぶ声がした。
振り返ると、私の顔の近くに横村さんの顔が見えた。
「…あっ、横村さん…」
今の距離は、近すぎる。
横村さんは、何とも思っていないのか、話を続ける。
『準備は、どこまで行きました?ゆっくりで良いので、無理しないで下さいね』
「あっ、あともう少しで終わります。ありがとうございます」
気遣いまでしてくれる横村さんは、本当に優しい人だなぁ…と改めて実感した私だった。