10.
その町は死に絶えていた。
「‥‥廃墟‥‥?」
と、言ってしまえばそれまでだった。
だがそのわりに、建物は崩れたところも少ないし風化も始まってはいない。生きた空気がないだけだ、無機物はほとんど壊れていない。
「‥‥マナファナ?」
彼女はなんだかものすごく呆然と、裏切られたような顔で、突っ立っていた。
「マナファナ?大丈夫?なんだか‥‥」
「‥‥もう遅いのか?」
怒っているような、それともやはり裏切られたような声音だった。え、と聞き返しかけて、きっと届かないと思ってやめた。
「もぅ間に合わないのか?本当に狂ってしまったのか?憎いのは殺したいのは、私ではなかったのか?シフォではなかったのか?もぅ誰でもいいのか?何も知らない彼らでも‥‥いいのか?」
シフォ。以前にもマナファナの口からその名はこぼれた。剣を受け継いだという、意味は分からないが、彼女の母の名だろうか。
「遅すぎたの‥‥か?今さらだと言うのか?それなら私のしてきたことはなんだ。母さんは何故死んだ?」
‥‥母の名ではないようだ。それでは祖母の名なのだろうか。そうかもしれない、マナファナは、何も告げてはくれないから、ソノリアには分からないことだらけだ。だからといって彼女を見捨てようだなんて思わないけれど。
「‥‥遅いのか?私ではもう足りないのか?」
ふ、と、彼女の手の中に見覚えのある光が生まれて、ソノリアはぎょっとした。これはもう終わってしまったことだ、周りに危険はないはずなのに。
「マナファナ?何やってるの?」
「もぅ‥‥これすら見失ったのか?」
鞘のない剣。鞘はマナファナ自身だろうか。それにしてはその剣は、他の誰かよりマナファナを傷つけようとする。
鞘のない剣。マナファナの手にいつの間にか握られ、けれど他の誰をも斬ることはできない剣。
出たときと同じように唐突に、剣は消えた。マナファナは軽く目を閉じ頭を振った。それから目を開ける。
「‥‥。
とりあえず、今日はここで休もう・・‥建物は無事みたいだし。食料は、‥‥期待しないで探してみようか」
何事もなかったようにマナファナは言った。何か、知らない不安を覚えながら、ソノリアはぎこちなく頷いた。
「うん・・・・そ、うだね。もうすぐ雨も降るみたいだし」
言われてはじめてマナファナは空を見上げた。
なるほど空気は湿っているし、空も雲で覆われていた。
「面倒な住人がいるよりはマシ・・・・だったかな?」
「マナファナそれ言い過ぎ」
なんとなくぎこちなく笑いながら、無人の街を歩いていく。




