75.我が家にご招待、そして夕食を
その日の夜は、ルーカス様とレティ様を我が家にお招きした。
そう、レティ様に我が家のことをお話するために。
レティ様も、うすうすは気づかれているかもしれないけれど、ちゃんとお話ししたことが無かったからね・・・。
今のところ我が家の事を知っているのはロア、ルーカス様、エランドさん。あとエルフさん達とホークさん達くらいか。神樹の精霊さんや妖精さんは除くと、だけど。
こんど獣人の国に行くのもヴィーちゃんに関することだし、子猫としてではなく、猫妖精さんとして紹介するつもり。もちろんこの事はヴィーちゃんの了承は得ている。
「ようこそ我が家へ。レティ様」
ルーカス様にエスコートされたレティ様は、淑女らしからぬポカンとしたお顔をされていた。・・・それでも絵にかいたような美女ぶりだけども。
「ここは・・・ここは異世界ですの?」
ようやく通常モードになったレティ様の第一声がこちらだ。
うん、我が家は確かに皆さんが見たら異世界が丸出しですよね。
それにしても、レティ様はルーカス様やエランドさんより冷静かもしれない。コメントも的確だし。
「はい、ここは異世界で私が住んでいた家になります。私は女神様にこの家ごと異世界に呼ばれたのですが、私はこの家を自在に呼び出すことができるようになっていました」
「何という・・・」
また絶句してしまったレティ様だけど、私がキッチンやお風呂などをお見せすると、ルーカス様達よりも格段に興味を持たれたようだった。
そしてレティ様が落ち着かれたところで、あらためてヴィーちゃんのご紹介。
ふたたび驚きに固まってしまったレティ様だけど、ヴィーちゃんの可愛さに、この時はすぐ再起動されました。
異世界のものより、同じ世界の妖精さんの方が、レティ様にとっては受け入れし易かったのかもしれないな。
「今日は、異世界のお食事を皆さまに食べていただきたくて、いくつかご用意をしました。と言っても私が作るのでたいしたものではありませんが・・・」
テーブルにはルーカス様のお好きなカレーライスに、ハンバーグ、うどんの温玉のせ(これは味見程度の量だけど)に、温野菜のサラダはマヨを添えて。
デザートにはアップルパイを用意してある。もちろんアイスクリームも一緒にお出しするつもり。
「おぉ、カレーライスは前とは肉の種類が違うのだな」
「はい。今回はチキンカレーです。ハンバーグもあるので、お肉の種類を変えてみました」
「このチキンカレーはまた旨いな。私はこっちの方が好みかもしれない」
確かに前よりも辛さを少し足してスパイシーにしてあるので、ルーカス様のお好みなのかも。
「ハンバーグにはチーズがはいっておりますが、おくちに合いますでしょうか・・・」
「このハンバーグというの?とても美味しいわ! もしかしてアルとヴァンのお店で出しているものと一緒なのかしら・・・わたくしがずっと食べたいと言っていたのを覚えていてくれて嬉しいわ」
うん、レティ様も喜んでくれて、いつもより食も進んでいるみたい。よかったー!
うどんの温玉のせは、話のネタ程度にと思い小鉢でお出ししたが、ルーカス様がもっと食べたいと、おかわりを所望されたのが意外だった。
「この”ウドン”というのは、いくらでも腹に入ってしまうな。このツルツルと喉を通るのがクセになる」
このおうどんはスープに入れても、野菜やお肉などと炒めて食べる事もあるんですよ、と話すと「次はそれも食べたい」とリクエストまであった。
デザートのアップルパイはさすがにお腹がいっぱいだろうと、ホールのパイを細めにカットしてお出ししたのだけど、アイスと一緒で食べやすかったのか、お二人ともペロリと食べてしまわれた。
「これがレティが惚れていたアイスだね」
「ほんとうに雪のように儚くも融けてしまうのですわ。前回はスイートポテトというケーキと一緒にいただきましたの。あれも美味しかったわ・・・」
そんなにお気に召したのであれば、と今度はアイスクリームにカットした苺などのフルーツを混ぜてお出しすると、そちらもあっという間に完食。
いや、ルーカス様はともかく、レティ様は普段そんなに量を召し上がらないですよね?!
いつもは小鳥の食べる量かと思うくらいなのに・・・あれかしら、デザートは別腹というのは異世界でも共通なのかな・・・。
ロアは育ち盛りだからしっかり食べる方だけど、そのロアと変わらないくらいレティ様は召し上がっていた気がする。本当に作った甲斐があります。おくちに合って何よりです。
そして食後には、お茶・・・ならぬコーヒーをお出しすると、今度はルーカス様がとても気に入られたようで「これは私の執務室に常備したいものだ」と、他国でコーヒーの木が無いか探すとまで仰っていた。
うーん、もしかしたら南国とか熱い国にあるかもしれないですね。だって、この世界に梅の木がある位ですからね・・・。
・・・それにしてもコーヒーの木って、この世界だったらどんな名前になるんだろう。
確かコーヒーって果実の一種だったよね?コーヒーチェリーって呼ばれるくらいだから、実もさくらんぼに似た小さい赤い実だったように記憶している。その中にある種がコーヒーになるんだけど、意外とフルーツとして流通していたりして。
まぁ、正直コーヒーの実からちゃんとコーヒーを作る方法なんて知らないのだけど、乾燥させて焙煎をするってことくらい?
誰か詳しいバリスタさんをこの世界にお呼びしてー!
そんな感じで終始なごやかな雰囲気で、我が家でのお夕飯はお開きとなった。
ルーカス様達をお送りしたあと、さて寝ましょうとベッドに入ると、ロアが「そういえば、あの黒い飲み物って、元はどんな形をしているの?」と聞いてきた。
おや?ロアもコーヒーが好きなのかなと聞いてみたら「香りが好き」と言うではありませんか。うん、コーヒーは飲めなくても香りが好きだという人も多いよね。私も最初はそうだった。
コーヒーの実は赤く小さい実で、その中に二つ半割りにしたようなお豆が二つ入っているんだよ、と絵にかいて説明した。
まぁこれは異世界のコーヒーの実の話なんだけど。もしこの世界にコーヒーの実があっても同じかは分からないのよね・・・。
「私の居た世界では、比較的暑い地域にあった木なの」
確か、主な産地のほとんどが暑い国のイメージだった。有名なブラジルに、コロンビアとベトナムなんかもそうだよね。暑くて雨の多い地域?
「そうなんだ。じゃぁこの国よりも、もっと南の方にならありそうだね」
「南・・・ドラゴンさんがいる島とかだったりして」
そういえばこの世界のドラゴンさんは、何を食べるんだろう。やっぱり魔獣のお肉とか?
ヴィーちゃんはいつもミルクを好んでいるけど、普通の?猫妖精さんって主に何を食べるんだろう。好きな食べ物ってあるかしら・・・。
となりでスヤスヤと気持ちよさそうに眠っているヴィーちゃんを見て、明日にでも聞いてみようと思うのだった。




