43.エルフの女王
エルフ国の王宮にようやく到着しました。
いやぁ、ここの高さは半端ないです。富士山でいうと何合目だろう? おそらく頂上に近いのではないだろうか。
だってお城がね、聳え立つ山の上にあるのよ。ここは確実に雲の上よね・・・。
そういえば、ここまで馬車を引いてくれたお馬さん。降りた時にお礼を言おうと思って正面にまわったら、あらビックリ。
角があるユニコーンさんでした。
まさかエルフの国のお馬さんは皆ユニコーンだったりするの?
ユーリスさんに聞いたところ、この山にしかいない種類の一角獣らしい。
ただ普通の一角獣よりも角が短い種族らしくて一見すると普通のお馬さんに見えるのだけど、正真正銘のユニコーンなんですって。
ちなみに二角獣や三角獣っていうのもいるらしい。角が多いほど気性が荒く、好戦的なんだそうで、馬車には不向きだとか。
それにしてもユニコーンって、馬車を引いてくれるんだ・・・。
湖の畔とか草原で佇んでいるような孤高なイメージしかなかったけど、普通にこうして使役されたりするんだね。
しかもこのユニコーンは普通のお馬さんと違い、魔法耐性が高いので火魔法なんかも恐れないので非常に優秀なんだとか。
ユニコーンって、よく小説の中でも乙女しか触れる事が出来ないとかあるし、よほど繊細な生き物なのかと思いきや、「そんなことはありません。角があるだけで普通の馬ですよ」と。
私の中でユニコーンの幻想的なイメージがガラガラと崩れた瞬間でした。
まぁ本当にこのエルフ国は、人も馬も色々とイメージが違ったよね・・・。
王宮の前で簡単な魔法具で身体検査をされた私達。
ギルドにある水晶の魔法具なのかと思ったら違うタイプの物でした。
私はテレビでしか見た事ないけれど、よく空港とかであるじゃない? あのゲートを潜るような金属探知機。
あんな感じで蔦の輪をくぐったのだ。
・・・あ、これどちらかと言えば、神社で災厄を祓う時の”茅の輪くぐり”に近いかもしれない。
ここはグラニスタ王国とは違い、王宮の中が迷路のようにはなっておらず、目的の場所まで数回曲がっただけで、ほぼ真っすぐに廊下を進んでゆく。
途中の中庭には噴水があり、美しい花々に彩られていた。
先ほどの山の殺風景だった景色とはずいぶん違い、王宮の中はまるでオアシスのようだった。
「この扉の向こう・・・謁見の間に、我らエルフの王がおられます」
扉の前の衛兵さんに取次ぎをしてもらったユーリスさんと私達。
少し待っていると、豪華な装飾の扉が開けられた。
そこは赤ではなく緑の草模様の絨毯が敷き詰められてあるお部屋だった。
その一番奥に玉座が見える。まだ誰も座っていなかったけど、ユーリスさんが礼を取るのに倣い、私達も見よう見まねで同じく礼を取る。
「エスターシャ女王陛下の御成り―――」
衛兵さんの声が響き、前方の扉が開くと美しい女性が現れた。
女王陛下が玉座に座ると、私達にお声がかかった。
「私はこの国を統べる女王、エスターシャ・フランドリーンである。愛し子殿よ、顔を見せておくれ」
その朗々とした声に聞き惚れていると、顔を見せるように言われたので、女王様の視界に入るよう顔を上げた。
「リサ・タチバナと申します。この度はお会いする機会をいただき光栄です」
「ふふ。そこのユーリスが珍しく慌てて緊急で使う空間転移魔法で知らせてきた。何かと思ったら、まさか女神様の愛し子が我が国に見えられるとは」
「突然の訪問にお詫び申し上げます。私はグラニスタ王国に住んでいるのですが、女神様の眷属である大白鷲殿のお迎えがあり、事前のご連絡もできませんでした」
「そうよの、速さではあの大白鷲殿に敵うものはおらんだろう。早馬なんぞ意味もない。ましてや女神様のお考えは我々には及びもつかぬわ」
よかった・・・! こんな突然の訪問なのに、女王様はご気分を害されてはいないようだ。
しかもどうやら大白鷲さんを知っているみたいだし、むしろ好意的な気が。
それにしても、エルフの女王様ってなんてカッコイイ美人さんだろうか。どちらかといえば中性的で、某・菫の花の男役トップスターのような感じ。同じ女性が惚れちゃうやつだね。
「して、エメの里へ行きたいと申したとか?」
うぅ、本題キターー!
ユーリスさん、きっと細かく報告をしているんだろうなぁ・・・社会人としてデキる人っぽいし。
報告・連絡・相談は社会人の基本だものね。
「はい。私がこの国を訪れた理由がそれです。エメの里に私が持っているエメの木を持っていくようにと、女神様から言われたからなのですが」
「エメの木・・・か。そなたエメの木を持っているのかえ? 人族の国には滅多に無いと思うのだが」
「そのようですね。でも我が家にはありまして・・・エメの木というか、異世界産の”梅の木”になりますが」
「・・・それは、どういう事か?」
エルフの女王に隠し事は良くない気がしたので、異世界召喚の時から今までの事を、順に話していった。
私は異世界から家ごと引っ越して来た事や、その我が家には庭があり梅の木があることを。
私の話を聞き終わっても、しばらく女王は黙っていた。
そして口に出すのを躊躇っているのか、しばし言い迷った後に私の目を見て「これはフローデリア様のご慈悲かもしれぬ」と仰った。
「ご慈悲・・・ですか?」
「うむ。まずはエメの里に案内しよう。ついて来るが良い」
えっ・・・いきなり? それに女王様が自らご案内もしてくれるの? 予想外の展開だわ・・・。
玉座の後ろにある扉・・・先ほど女王様が出てこられた扉から、今度は女王様が私達を引き連れて戻ってゆく。
「ここから先は、王族のみが使う宮殿となっている」
しばらく進むと女王様がそう言うと、さらに王の私室に繋がるという白亜の宮殿に出た。
緑きらめく美しい中庭を抜け、一段と豪華で美しいその宮殿の奥には神殿のような作りの建物があった。
「王族のみが入れる特別な神殿だ。王の許可なくば誰も入ることは出来ぬ」
扉の鍵のような場所に手をかざし、女王様が何かの呪文を唱えた。
すると、目の前の扉が消え、同時に白く長く続く階段が現れる。
「これが・・・天空の階段・・・?」
「そうじゃ。よく知っておったの。・・・あぁ。そこのユーリスが教えたのか」
「は、はい。私がエメの里をお聞きした時に、少しだけ・・・」
「よい。あれも王族の一員になるので当然知っておる。我ら以外は入れぬ場所であるゆえ、特に隠しているという訳でもないしの」
思わず一番後ろに居たユーリスさんを振り向くと、彼はちょっと気まずそうに微笑んでいた。
そっか、ユーリスさんも王族だったんだ・・・。
そういわれると初対面の時は確かにちょっと偉そうな感じがあったかな。職務的なものかと思ったけど、王族だからと言われるとちょっと納得してしまう。
でもだからこそこんなにもスムーズに女王様にお会いできたんだろうし、そこは感謝しなくちゃね。
しばらく階段を昇っていくと、途中で階段が雲の中に隠れていると言うか・・・実際は途切れているように見えた。
「このまま進むぞ。この雲の先がエメの里じゃ」




