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アゼルの傲慢 7

「アゼル!!!!どういう事だ?!」


私とヒュブリス様の事が噂になっていると聞いて約3週間後。それまで、レーヴ様に噂について話す為に会おうと連絡しても忙しいらしく会えなかった。


噂の事がとうとうレーヴ様の耳に入ったのか、凄まじい剣幕で私の元に乗り込んできたレーヴ様は手に持っていたハンカチを私の前に掲げる。



「これが君のベッドの下に落ちていたと侍女から連絡があった。どういう事だ?!」



すごく細かい紋様の刺繍が入ったハンカチをまじまじと見るが、身に覚えなんてない。噂の事について責められると思っていたので、困惑しながら身に覚えがないと答える。



「これはヒュブリスの、将軍家の家紋だ。噂だとあしらっていたが、よくよく考えれば火のないところに煙は立たないな。それに後宮に私以外の男は入れまい」



頭が真っ白になった。

いつの間に、そんなものがーー?


いつも私に付き従っている侍女がレーヴ様の後に控えるようにして静かに佇む。私が彼女を見ると、彼女は憐れみも何も映さない無感情な瞳で私を見返した。


そんな、寝所になんてヒュブリス様を迎え入れた事なんてない。それを侍女が一番よく知っている筈なのに。



「連れて行け」



絶句する私に構わず、レーヴ様は淡々と部屋の外にいた騎士達に命令を下す。私は騎士達に無理矢理引き摺られながら、レーヴ様を見た。



「誤解です。違うのです!私とヒュブリス様の関係はそんなものでは……っ!」



必死に声を上げた私を見て、レーヴ様はほんの少し口角を歪めた。



「お前のその無知な振りをした妄信で傲慢な所、私は()でてすらいたよ。アゼル」



こんな顔をしたレーヴ様は知らない。こんなゾッとするように冷たい声を出すレーヴ様は知らない。


そうよ、きっとそう、これは夢なんだわ。

だって、私を愛してくれる王子様はこんな事しないもの。


ほら、レーヴ様は今身重のヘレン様にかかりきりになっているけれど、真に女として愛しているのは私でしょう?



だから、これはきっと悪夢だわ。






連れてこられた地下の牢屋は石造りで、とてもカビっぽくて湿った空気が充満していた。叔母様の家にいた時に宛がわれていた屋根裏部屋を思い出すから嫌だった。



レーヴ様がちゃんと調べてくれて、侍女も私の無実をレーヴ様に説明してくれて、きっとごめん、勘違いだったってレーヴ様が来てくれるのをずっと待っていた。


きっと、一番最初に来てくれるのはレーヴ様だって信じてた。それでも牢屋の扉を開けたのは、違う人だった。



「王太子妃様……っ」

「私、とても驚いたわ。貴女が王太子様を裏切るわけがないのに……」

「勿論ですっ!何かの間違いです!私、不貞なんてしてません!私は王太子様だけを想って……っ!」

「ええ、ええ。知っているわ。貴女がどんなに王太子様を想っているか。王太子様を愛しているか」



ヘレン様は私の頬を優しく両手で包み込んだ。そして聖母のような微笑みを浮かべる。

ああ、この人は本当に聖母のような人だわ。ヘレン様からもレーヴ様に一言言ってもらえれば、きっとここから出してもらえる。



ヘレン様はそっと私の耳元へ唇を寄せて、優しく、優しく、慈愛に満ちた声で穏やかに告げた。



「ああ、可愛いアゼル。可哀想なアゼル。お前が私からあの人を取らなければこんな事にはならなかったのに。不相応にもあの人の愛を乞うて、あの人を愛したからこんな事になってしまったのよ。死んで楽になれると思わないでね。私が許せないわ」



ーーどういう、こと?



言葉はちゃんと聞こえてる、それでも心が認めない。

ねぇ、ほら、ヘレン様は仲良くしようと言ってくれたじゃない。

ねぇ、なんでそんな酷いことを言うの?



「ああ、そういえば将軍はお前に付き纏っているのですってね」



身体が勝手に震えだす。

なんでそれをヘレン様、貴女が知っているの。なんで、レーヴ様は私を助けてくれないの?



ーーねぇ、なんで?こんな事になったの?



全部ヒュブリス(あの男)のせいだ。




どれくらいの間牢屋で鎖に繋がれていたか分からない。ただ、誰も来ない静まり返った牢屋で張り詰めていた神経は、しばらくしたら切れてしまっていたらしい。

扉が開く音で、自分が少し眠ってしまっていたのだと気付いた。



「へぇ、こんな所で眠れるのか。本当に図太い神経してるなぁ?」

「…………っ!?ヒュブリス……さま」



鉛色の瞳がとても愉しそうに私を見下す。この人のせいなのに。

睨み付けるとさらにヒュブリス様は愉快そうに笑みを深めた。



「王太子様からの褒美だ。お前を俺の所に下賜するだと」

「かし……?」



かし、下賜って、なんだったっけ。



「まあ、あらかじめ予定されていた事だったがな。警備隊でお前と再会した時から」

「予定……?」

「ああ。そうだよ」



今までの無愛想はどこへ行ったのか。ニッコリと微笑むヒュブリス様は饒舌に語ってくれた。



「お前を離婚出来ないように妻にする方法がないか王太子様に聞いたら、王太子様がご自身の愛妾にしてからお前を俺に下賜すれば良いだろうって」

「なんで……それじゃあ……私は?」

「王太子様の愛妾になりたいと思い上がらなければ、お前はこんな事にならなかったのに」



あまり後宮に来ないのも、夜に私の所には来ないのも、ヘレン様よりも衣装の質と数も侍女も極端に少なかったのなんて、全部目を瞑ってた。

でも、レーヴ様が無理して私を娶ってくれたから仕方の無いことではなかったの?



「ずっと、俺は俺の母上を殺したお前の母親が許せなかった。アメジストみたいなその瞳を見た時、俺は直感したよ。神様が復讐の機会を(さず)けて下さったとね」

「……お母さんが?お母さんが、そんな、何かの間違いよ!!」

「間違いなんてあるものか。お前の母親は経営難に陥って借金を作った父親を助ける為に、自分の美貌を使って俺の父上に取り入った。そして、その寵愛を一身に受ける為に俺の母上を病気に見せかけて殺したんだ」

「違う!!お母さんはそんな事しない!!お父さんと恋愛結婚したお母さんがお父さんを裏切る筈がないもの!!」



今まで信用していた何かがガラガラと崩れていくような、そんな感覚に陥る。

聞きたくない、こんな妄言。こんなの夢だ。



「ならば何故、お前の母親も父親も、お前を迎えに来ない?」

「…………え?」

「証拠不十分でお前の母親も父親も普通に生活しているんだ。俺の家族をめちゃくちゃにしてくれた癖に。だから、思い付いたんだ。俺の大事な場所を壊したあいつらが、自分達から遠ざけてまで守ろうとした大事な娘が不幸な目にあってどんな顔をするのかってね」




嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。


レーヴ様は私の、私だけの王子様なの。

だからあの時助けてくれたもの。今回だって、何かの間違いよ。きっとまた来てくれるわ。



「お前が売女(あの女)みたいに婚約者のいる王太子様の愛妾になりたいなどと、図々しい思いを抱いたのが間違いだったのさ」



嘘よ。だって、本物の王子様が嘘をつくはずがないもの。

レーヴ様は、私だけを愛してくれる王子様は、



私の王子様は一体いつ私を助けに来てくれるの?



「手始めに、嫌いな男に嫁ぐ気持ちはどう?」



ーーヒュブリス(この男)さえ、いなければ。



王子様は、きっと迎えに来てくれるわ。

だって、私は王子様に愛されてるもの。

今回の主人公目線から見た登場人物紹介。


アゼル

本作主人公。現実逃避したくなる時ってあるよね。ヒロイズム。

母親譲りのアメジストのような瞳を持つ。ずっといい子にしてればいい事あるって信じてきてた子。でも、途中から思い上がっちゃった子。

愛妾さえならなければ多分幸せになってたと思う。モテる。


王太子(ヴィルクリヒカイト・レーヴ・ヴィッセル)

やっと名前出てきた人。青空のような瞳をしている美男子。

主人公は愛されてると思ってるし、自国の王太子が嘘をつかないと信じきっている。


ヘレン

アゼルの失墜主人公。王太子妃。聖母みたいな完璧な人だと思ってる反面、主人公は女として勝ってると思っていた。

藍色の猫目の持ち主。


将軍(ヒュブリス)

ホラーでしかない。

アゼルの両親に母親を殺され、家族をめちゃくちゃにされた事を恨んでいる。


侍女(アゼル付き)

王太子が付けたアゼルの侍女。





自分の登場人物の名前付け、とてもセンスないと思った。

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