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「問題は、密告したのが誰なのかより、どんな目的か、だがな」
「目的、ですか?」
「あぁ」
小さく舌打ちして、木路蝋は蘇芳に背を向ける。
「それで、どうするんだ」
「え?」
「露草が、呼んでもいないのに揃ってきた理由だ」
「あ、」
写真に気を取られてすっかり頭から飛んでいた内容に、蘇芳は慌てて居住まいを正す。
「私が強くなろうとすることは、露草が強くなりたいと望むことを拒む理由を奪います」
「呆れるな」
「そうですね」
蘇芳は、露草が強くなりたいと願うことを望まない。
露草は、蘇芳が強くなりたいと願うことを望まない。
けれどお互いがお互いを止める理由は、もはや失われたのだ。
「呼んで来い」
「え?」
「二度話すのは面倒だ。露草も連れてこい」
「はい」
「おい」
頷いて立ち上がった蘇芳は、唐突な呼びかけに振り返る。
「生きる理由は、どいつもこいつもが自分勝手な都合で作り出して弱い奴ほど誰かに押しつけるがな。押し付けられた方が迷惑してなきゃ、別にどうでもいいんだよ」
そう言ってから木路蝋はふと我に返ったように舌打ちして、追い払うように手を振った。
「さっさと行って、あの煩い甥を呼んで来い」




