助けと雅治の本音
雅治のフラグが立ちますww
『イノチをちょうだい…!』
「いゃぁああああああっ!!! 来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
菜々美はただ、ひたすら走り続けていた。
途中で躓いたりして膝からは血が出ており、どこかで捻ったのか足首がズキズキしてすごく痛い。
それでも菜々美は必死に走り続けていた。
しかし目の前には壁があり、どこも逃げ道が無い状況になってしまった。
『あなたのイノチ、もらうね……』
「あ、や、いやぁ…っ!」
殺られる、そう思った菜々美はギュッと目を閉じた。
そして女性の手が徐々に菜々美の心臓へ――――
「その手をいますぐ消してくれないかな?」
「え……?」
聞いたことのある声がして目をゆっくり開けると、全身血まみれの女性はいつの間にかいなくなっており、目の前に雅治がいるだけだった。
「え? あれ、女性は……、っ!?」
菜々美は思考回路が上手く活動していないせいか、ただ驚くことしか出来なかった。
そして雅治はそんな菜々美を……優しく抱きしめたのだ。
「ごめん、ごめんね。君が狙われていることはわかってたんだから、傍にいて守ってあげるべきだったのに…! 大丈夫? 何もされてない? どこも無事?」
雅治は思い切り顔を上げて菜々美の全身を確かめ、転んだ時に怪我をした膝の手当てを始めた。
菜々美は呆然としていたが、抱きしめられていたことを自覚し、一気に顔を赤くした。
それを悟られてはいけないと思い、慌てて立ち上がった。
「だ、大丈夫! どこも……いたっ!」
この時菜々美は足首を捻っていたことを失念しており、普通に立ち上がってしまって思い切り顔をしかめた。
それを見て足首を捻ったと悟った雅治は、菜々美に背を向けて軽くしゃがんだ。
「え……?」
「捻ったんでしょ? 僕がおんぶしていくよ」
雅治は笑顔でそう言ったため、菜々美は罪悪感を感じながらも断ろうとした。
「ああ、それともお姫様だっこが良いかい?」
しかしその言葉を聞いた瞬間、菜々美は断らずに黙っておんぶしてもらった。
あの後残りの生徒会メンバーと合流し、友理奈のところへ戻っていった。
友理奈に抱きつかれて嬉しいような困ったような顔をした菜々美を、4人は愛しそうに見ていた。
そして修学旅行初日の夜、旅館の風呂に生徒会メンバーは入っていた。
のんびりとしていた時、瀬里奈は雅治に問いかけた。
「まっくんさ……ななみんに何もしなかったよね?」
その言葉に雅治は動きを止めたが、再び動いてはっきりと告げた。
「してないよ。ただ…」
「ただ?」
雅治の言葉に疑問をもった瀬里奈は問いかけるようにして聞き返した。
その質問に、雅治ははっきりと意思をもって告げた。
「もう、遠慮無しでいかせてもらうよ」
雅治がそう告げると瀬里奈は満足したように頷きながら「そう」と言って、そのまま出ていった。
「「………………」」
また、その話を聞いていた健史と誠司は何も言えず、黙って動きを進めることしか出来なかった。