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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両


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1/11

1 加護もいいけどラーメンもね

「父様、私ね。将来ラーメンになるの」

「ははは、そこはお父さんのお嫁さんって言うところだぞノチア」


 そう言って、父ダスティン・ライ・ラウメ子爵が私の頭を撫でと、私を乗せた馬車が静かに止まる。

 父に引かれて、開かれた扉から外に出ると足元が揺れる錯覚に陥る。

 何日も馬車に揺られ続けたせいで、陸酔いしたのだろう。


「危ないよノチア。ほらおいで」


 スラリとした体躯だが、辺境の領主と言うだけあって、鍛えられてた父様が私を軽々と抱き上げる。

 父様の、体の前に流された結ばれた灰色の髪が、私の鼻をくすぐり思わずくしゃみがでる。

 父様が、優しい笑みを浮かべると、同じ色の私の髪を掬い上げてキスをする。


「ごめん、ごめん。くすぐったかったかな?」


 父様の顔を見上げると眩しさに目を瞑る。

 飛び込んできた太陽の反射に目を細めて視界向ければ、美しいステンドグラスを有した大聖堂が人々を迎え入れていた。

 ここで私は洗礼を受ける。


 七年だ。

 七年、私は待ったのだ。

 さぁ女神様、転生者の私にチートを。


 並んだ子供達が司祭様に次々に呼ばれていく。

 呼ばれる順番は、身分の低い順だ。

 子爵とは言え、父様の領地は目立った資源もない辺境の地。

 私の呼ばれる順番はかなり早かった。


 司祭様に呼ばれ、前まで行って私は願う。


 さぁ、女神様お願いします。

 私に〝ラーメンの加護〟を!


「女神の子ノチア。この者に加護を授け給え」


 跪いた私の頭に、聖水の満たされた杯から抜き出した月桂樹が触れる。

 すると頭の中に文字が浮かび上がる。


 〝剣聖〟 〝魔導王〟


 浮かび上がった文字を私の理解が拒んだ。

 予想外の酷い裏切りに眼の前がチカチカする。


「⋯⋯ラーメン⋯⋯じゃない」

 

 ショックのあまり私は気を失った。




 ——私の前世は幸福ではなかった。

 仕事もせずにギャンブルで借金ばかりする父。

 それにひたすら耐える母。

 いつもお腹を空かせていた。


 一月に一度だけ、母と分け合って食べたラーメンだけが私の幸せだった。


 高校生の時に母が亡くなり、私は一人になった。

 借金に苦しむ中、ラーメン屋のバイトで出る賄いだけが母を思い出させ、辛い生活を忘れさせてくれた。


 給料が入ったある日、後ろから何者かに殴られ給料を奪われた。


 ⋯⋯あの男だった。

 薄れゆく意識の中、近くの人に通報され焦って逃げようとしたあの男が、車に跳ね飛ばされるのを見た。


 ざまぁみろだ。




 ——目を開ける。


 ()()の父様が優しく覗き込んでいた。

 目を覚ました私の頭を、父様の手が撫でる。

 くすぐったくて私は笑った。


「おはようノチア。疲れていたのかな?」

「父様⋯⋯私⋯⋯ごめんなさい」


 ラーメンにはなれなかったの、そう言葉を続けようとしたが父様が遮る。


「いいんだよ、大した加護じゃなくてもノチアはノチアだ。そうだ、領地に帰る前に加護のお祝いに美味しい物を食べよう」

「⋯⋯うん。せっかく王都まで来たんだもの、ラーメンを食べないで帰れないものね」

「えっ? ラーメンは食べ物なのかい?」

「? 食べ物以外でラーメンがあるの?」


 父様と見つめ合う。

 私の頭にハテナマークが浮かび続ける。

 いまいち話が噛み合っていない。

 まさか、ラーメンが⋯⋯無い?


 内心で冷や汗を流しながら、笑顔で王都を回った。

 わがままを言って隅々まで回った。

 ラーメン屋は無かった。


「うあぁぁぁぁん。もうお家帰るー」

「おやおや、お母さんが恋しくなったのかな? 連れ回してわるかったね」


 帰るために乗り込んだ馬車で私は泣き続けた。

お読みいただきありがとうございます。


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