21
光を感じたが、何も見えなかった。
目を閉じまま、光源を見ているよう感覚だ。
そんな中、ネモの声が聞こえた。
(……感謝しろよ)
「……何の話だ?」
(誰のおかげであの場から抜け出せだと思ってんだ)
「……まさか、あれは……」
(そう、俺がやった)
それを聞いて、単純で尚且つ静かな怒りが浮かんできた。
「……余計な事を……」
(何?)
「何でそんなことした?俺を助けるためか?悪いが、ありがた迷惑だ」
ネモは言葉に詰まったが、すぐ怒った声が返った。
(馬鹿野郎!お前、あのままいたら……)
「時田にガチで喧嘩売ってたからな。ボッコボコかもな。だけど、それがどうした」
ネモが黙ったままなので、僕は彼の姿を探しながら続けた。
「少なくとも、こんな逃げ道使うよか「何か」を変えられるだろ?」
(……分かったよ!!)
彼が不機嫌に言った。
(俺が悪かった。後は勝手にやれ。ただし……)
何も見えないはずの世界が急速に回転し始める。
同時に、ネモの声が脅すような雰囲気を帯びた。
(この先、お前の身に何が起ころうと、俺は見てるだけだ。それで良いんだな?)
「良いも糞も、それがお前の仕事なんじゃないのか?」
彼は答えなかった。
そして、回転していた世界がぐっと上昇していった。
……いや、僕が落ちているだけかもしれない。
それは何の前触れもなく、闇に変わった。
僕は見ることを諦めた。