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学校に着いたのは11時半。



どうしようもなく微妙な時間だ。



校門の前で入るか入るまいか迷っていると、苦々しさを全面に出した声がした。



「……遅刻か」



まるで、極悪事件の被告を断罪するかのような言い方だった。


一体誰だろうと思って振り返ると、右手に火のついた煙草を持った校長「先生様々」が、仁王立ちして「いらっしゃった」。



「……理由は?」



「……特に何も」



彼は煙草を口につけ、深く吸った。



一瞬間をおいて煙を吐き出したかと思うと、煙草を地面に落とし、足で踏み潰した。



「……早く入れ」



校長の言葉や行動のせいで、胃がムカムカする。




「……道は―――」



「なんだ?」



彼は僕の言おうとしている言葉を知らず、煙草の箱を取り出した。



「道は喫煙所じゃありません。当然、灰皿でも」



校長が動きを止め、顔がみるみる怒りに染まっていったが、取り出した箱は元に戻した。



「……余計なことを言うな!」



「「余計なこと」?先生にとって「耳が痛いこと」は皆余計なことですか?」



「下らんこと言ってないで、早く授業を受けろ!」



僕は校長を睨み、かばんを担ぎなおした。



「ずるいですね」



怒りが体中を駆け巡っていた。



「都合が悪いことは拒絶するか、追い払うか、とはね」



校長が何か言おうとしたが、僕はさっさと校門をすり抜けてしまった。




幸い、彼は追ってこなかった。





「タケ!!」



ちょうど休み時間だった。



草薙は僕を見つけた途端、ほっとした様子でよってきた。



「気が変わったの?」



「……まぁ、そんなとこかな?」



その時、案の定時田もまた、すぐに絡んできた。



「学校一のちくり魔は、遅刻魔でもあったみたいだな、カス」



彼は唇を吊り下げて笑い、僕を上から見下ろしていた。



目を逸らしかけた自分をしかりつけ、その忌々しい目を睨み返した。



「……昨日は言いそびれたけど、あいつらに言ったのは俺じゃない」



時田は「それがどうした」と笑った。



「どっちにしろ先公達は動かないし、お前を散々痛めつけてやったから、また訴えるような馬鹿も出ないだろ」



「……テメェは何を勝ち誇ってるんだ?」



「タケ!?」



「あ?」



時田の右手が僕の髪の毛を掴もうと、伸びてきた。僕はそれをとっさに叩き落した。



「イッテ!!」



その次は、あまりに早くて反応できなかった。



時田は叫ぶと同時に、もう片方の手で僕の胸倉を掴みあげたのだ。



「……テメェ……!」



その時はラッキーだったというしかない。



ちょうど数学教師が入ってきたのだ。



「はい、席ついて~」



この一触即発の雰囲気には気付かないらしく、実にのんきな声だった。



時田は僕を睨みつけていた。



そして、椅子に突き飛ばした後、自分の席へ戻っていく。




僕は深く息を吐き出した。








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