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皆様お久しぶりです。
2026年2月にベリーズファンタジーよりデビューいたしました。
それ以降での初作品となります。
今回の作品はまっすぐな性格の伯爵令嬢がイケメン公爵に出会って公爵家を再建するお話です。わくわくしながら楽しんでいただけたら幸いです。
出来るだけ毎日投稿目指す予定。
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「君、誰だ?」
ロズウェル王国でもっとも広大な領地キングスフォード公爵領。
金麦と呼ばれる大陸一質の良い小麦がとれるこの地の領主城へ足を踏み入れたハンナは門を入ったところで彫刻のようなイケメンから無愛想な一言を浴びせられた。
プラチナブロンドの輝かんばかりの髪に真っ碧な瞳と高く通った鼻梁、そして形のよい唇が陶磁のごとく白い肌に絶妙なバランスで配置されている。
イケメンの威圧感に気おされそうになるが、ここで怯んではならないと改めて胸をはる。
「わたしは、『ハンナ・キャロライン・バーディナ』と申します」
あごに結んでいた紐をとき、ボンネットをとると、ハンナは丁寧に腰を折る。
「バーディナ伯爵家から参りました。姉の子どもたちを出来れば引き取らせていただけないかと……」
ふわりと初夏の風が吹くと、イケメンのサラサラの金髪は舞い上がり太陽の光をあびてキラキラと輝く。
うっ……。
この人。どこにいても絵になりそう。
少し細身だが、筋肉質な鍛えられた体躯に見える。先の公爵が亡くなるまでは王宮の近衛隊長をしていたと聞く。
シャツの前ボタンを上から三つほど開けたままにしているが、その間から見える胸筋は引き締まっており適度な足は長く背は高いので、背の低いハンナは見上げなければならなかった。
「バーディナ?ああ、あの女の実家か」
あの女……。
かつて自分の妻だった女性に対して、あの女とは。
吐き捨てるように言った、その顔さえ憎らしいほどイケメンだ。
だいたい近衛兵だったくせになぜこんなに色が透き通るように白いのだろう。
こんな品の悪い言葉遣いをしていても落ち着きと気品を感じるのは高貴な身分ゆえか。
だが、ここで見惚れていられはしない。
何としても子どもたちを引き取らねばならないのだから。
姉の忘れ形見を置いて帰るわけにはいかない。
「はい。本来は父の伯爵が参らねばならぬところを、先日姉の訃報を聞いて腰を痛めてしまい、後継者の弟は国境で任務中につき、妹のわたくしが参りました。初めてお目にかかります」
「あっそ」
興味なさそうにそう言うとイケメンは腕を組んでハンナを見下げた。
「悪いけど、双子を渡すわけにはいかないな」
「は?」
まさか、拒否されるとは思わなかったハンナは驚いて思わず素の声を出してしまった。
「あの……ですが」
結婚式以降一度も領地に戻らなかったという不誠実な夫で子どもには一切興味を示したことはないと姉のビアンカからの手紙には記されていた。
だから、快く引き渡してくれるはずだと。
ビアンカの話と違うじゃない。
もしかしてこの領地に戻って一緒に暮らすうちに親子の情が湧いてきたのかしら?
「あの子たちは公爵家の子どもだ。バーディナ伯爵家の子どもではないはずだ」
貴族は跡取りを儲けねばならない。
キングスフォード公爵家のような名門であればなおさらだ。
ビアンカは公爵家に嫁いでそこで子を儲けたのだから双子は公爵家の子ども。この人は別段、間違っているわけではない。
要するに跡取りの子どもを手放すわけにはいかないということなのかもしれない。
だけど、この人はまだ二十六歳。いくらでもまた若い女性と結婚できるし、子どもを作ることだって可能だろう。
事実、王都から流れてくる噂だと、この人はかなりの遊び人のはず。
結婚した夜以降、一度も顔を出さなかったほど愛情のなかった妻より、愛情のある妻を迎えた方がいいだろうに……。
愛情のなかった妻との間にできた子なのに今になって大切にしたいのだろうか?
「失礼ながら申し上げますと、双子には五年間一度も会われたことがなかったと姉から聞いております。それなのに今更……いえ、言葉が悪うございました。五年も会わなければ情はわかぬものではないかと……」
せっかく遠方からはるばる五日もかけてここまで来たのだ。ビアンカの意思どおり何としても双子を連れて帰らねば。
「情はない。だが、公爵家の子どもである以上、渡すわけにはいかない」
じ、情はない?
信じられない言葉に開いた口が塞がらなかった。




