14
ボーッとしたまま10分眺めていた。
このままじゃ駄目だよな、と思いながらも特大のやらかしが頭から抜けてくれない。
日記たちを眺めて自嘲的に笑う、
急激な寂しさすら襲ってきた。
ペラペラと紙を捲り元に置くを繰り返す。
散らばった本を先程まで居た鐘醴さんを思い出して座りが悪い。
なんとなく散乱しているのが気になって読んでいた本を整理する。
ふと、1冊気になる本があった。
何冊目か書いてない。
ペラペラと捲ると途中までで終わっていた。
カタカナが使われていることから3冊目以降で、まだ皇帝の妻が5人までとあるので7冊目以前なことが分かる。
もしかしたら、ここに載っているかもそう思い至り読んでみた。
最初のページは忙しい環境なのか、雑な土地説明が多めで始まっていた。
もしかしたら、急な移動で別紙に書き換え始めたのかもしれない。
最初の20ページまではその場所の説明だった。
そしてなんと薊兆にいるということが分かる。
泈箋川や未醒山、零局人の存在から確実に汲徳商館か芳来のどちらかに引っかかる話は出てくるはずだ。
半分読んで見つけた。
ちょうど芳来自身に対する言及があった。
__美しい人だ。僅かに赤みがかった髪は光に当たると金茶に写り、色彩のない灰色の瞳は下にかけて薄くグラデーションになっており、全てを虚ろに見透かしてるようである。
__しかし、彼女は美しいがゆえに水宝玉の信仰団体に目をつけられて買われて、更に零局人に売られたようだ。そこでスパイとして育てられたようだ。
__可哀想だと思っていたが、仕事を終えたら戻ってきて老後の生活ができるらしい。もっと長期的な計画だからまだ人がいるとも言っていた。しかし、あれは絶対使い捨てする算段だろう。計略がばれないと良いが。
見るからに書いた主は芳来に恋をしているようだ。
私自身に恋愛事を嘲笑するクセがあり少し嫌悪感を抱いた。
しかし、芳来自体がやはりスパイだったとなると調査は続行になってしまう。
ふと、嫌な予感がよぎる。
薊泈はやけにお金持ちの格好だし、同じく噂を気にしていた。
不安の種程度の大きさでしかないが、この違和感が実を結ばないことを祈る。
なんて考えながら次のページを見て、時が止まる。
自分を奮い立たせてその文を読んだ。
__今日は芳来さんの旅立ちの時だ。孤児院の人々は沈んだ空気なのと対象的に水宝玉の人間たちはおかしいくらいに上機嫌だった。芳来さんは顔色が悪く震えていた。今からすることがどれだけ恐ろしいかは測れない。私が知っていることはごく一部だからだ。しかし、彼女がこちらに向けてくれた表情とあの声音が忘れられない。ここに記しておく。
__『梨醴さんには伝えておくわね。私は今から上手くいくと皇帝を殺す。最低でも宮の通路全体を調べて謀反のための手伝いをしなきゃいけないの。これは後世への種まき、だから私も種まきをすることにしたの。あなたには私の手伝いをして欲しい、もし私が死んだときこの日記とともにこの国の謀反を阻止してね。あなたにしか頼めないの』
あぁ、一語一句違わず思い出せる。
だから、俺は隠せと言われた内容は少しも書かない。
__きれいな肥料だけをあげて、次の世代の芽が出るときにたどり着くようにする。
これを読んでいるならここに来て、とある住民にこの日記について聞いてほしい。
読んでいて疲れた。
託されたものの重さと、こいつの恋心の重さに。
きしょい…、てか醴ってことは鐘醴さんとの関係があるかもしれないということだ。
「今度聞いてみよう。」
というか、この人もグラデーションの瞳が好きなのか。
もし、鐘醴さんの親族だったら、鐘醴さんのグラデーションの瞳好きはここから来ているんだろうか。
色々報告することをまとめる意味も込めて、自分の日記を書いて寝た。




