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時間の転移より、場所の転移の光はかなり弱かったから、すぐ目をあける事ができ、ギンに魔力回復薬を飲ませる。
「ふぅ。 ありがとう」
エミリアはすでに船に向かって歩いていた。慌てて、護衛が追いかけて行く。
立派な船を用意してくれたんだな。
船に乗るのは初めてだ。どのくらい船で過ごすんだろう。なにしろ未経験なので今は不安の方が勝つ。
「はは。心配しなくても大丈夫だ。 俺も何度か乗ってるし、あれはマイロンにある船で最上級だ」
「そうか。 なら良かった。 落ちて溺れたらどうしようと不安になった。 泳いだ経験がないから、自分が泳げるかも分からないからな」
ギンは笑いながら、行こうと歩いて行った。
船内は、高位貴族の屋敷の中のようだった。 揺れもほぼないし、海の上にいるのを忘れるくらいだ。
「船長のロペスだ。 別大陸に行くのは初めてだが、天候の心配もないから、5日くらいで着くはずだ」
船に見合った船乗りが出てくると思ったら、もじゃもじゃの髪にバンダナをして、全身こんがりと日に焼けた、筋肉モリモリのゴツいオッサンが、この船で1番偉い人だった。
「航海士として彼の右に出る者はいません。 他の者はきちんとした船員達なので安心してください」
安心していいのか?
手には酒ビンを持っているぞ?
グラスも使わず、そのままラッパ飲みしてるぞ?
顔もだいぶ赤いぞ?
は? 酔っぱらってるじゃねーか!
「酔ってる方が、船上では力を発揮するタイプです」
「・・・そうですか。 よろしくお願いします」
ツッコむのも面倒になり、ぺこりとして、用意された部屋に行き休むことにした。
ベッドで横になっているとエミリアが来て、俺の隣に潜り込んできた。
「船、嫌い?」
「うーん、嫌いとは違うな。 不安なだけだ。 初めてだからな。 エミリアは泳げるのか?」
「・・・わからない」
「はは。 俺も経験したことがないからわからない。 だから何かあった時、エミリアの手が離れてしまうかもしれないと思うと怖いな」
「絶対に離さないし、離れない」
そう言って抱きついてきたエミリア。俺も抱きしめ返す。
「それにあと5日でいよいよオーンに着くってのを、今さらだが実感した。5年前までならアルが生きていることはわかったが、アルもレティも生きていれば68か69歳。 マリーは50歳。 レオンは200歳近いか? ギャッツは寿命を戻してもらったと言ってたから、生きてると思うが・・・不安だ。 アドはどうでもいいがな」
「・・・ん」
エミリアの抱きしめる力が強くなった。
「ごめん、不安にさせたな」
エミリアの頭をなで、こめかみにキスをする。
「・・・ううん」
そう言ってエミリアからキスをしてきた。
「ぺぺ、キスは唇にするのが夫婦」
「エミリアからのキスは可愛いのだけだからなぁ」
「むぅ・・・あむ・・・あむ・・」
悔しかったのか、俺の口を食べ始めた。
それからはお互いの不安を消すように、激しく求めあって、そのまま眠りについた。
ノックの後、夕食の時間ですと言われ目が覚めた。慌てて服を着て、エミリアを起こし、エミリアの髪を整え、服を着させて食堂に行くと、全員が揃っていた。
「すまない、遅くなった」
「ああ。 大丈夫だ、食べよう」
エミリアが俺から離れない。余計な事を言ってしまったな。不安がまだ消えてないようだ。
仕方ないので、俺の膝に乗せ食べ始める。不安なままでも食欲があるのがエミリアだからな。
「ほら」
「ん、あむ。 もぐもぐ」
「うまいか?」
「ん。 もっと」
「ちょっと待て、俺も食べたい。 あむ、ん、うまいな」
「「「「「 ・・・・・ 」」」」」
(何を見せられてるんだ?)
(・・・うらやましい)
(キャー、私もやってみたい)
(事後だな・・・ふざけやがって)
(夫人、なんかいつもはない色気が出てるな)
(なんかもう腹いっぱい)
皆に凝視されているが気にせず、慣れた感じでどんどん食べ進める2人。
「これも食べてみろ、うまいぞ」
「ん、あむ。 おいしい」
「だろ?」
「こっちもおいしかったから食べてみて。ん、あーん」
「あむ、ホントだ、うまいな」
最後まで周囲の目を気にせず、デザートまで食べきった2人。
「お腹いっぱいで眠い」
そう言ってぺぺにもたれるエミリア。
「風呂に入って寝るか」
「ん」
そのままエミリアを抱き上げ、
「俺達は早いが休ませてもらう。 じゃ、また明日」
スタスタと部屋に戻る2人。
(2回戦か!?)
(俺は1人でも何回も頑張ってやる)
(キャー、私も横抱きされてみたいわ)
(胸やけしてきた。あいつらのせいだ。それとも船酔いか?)
2人をよく知っている者には当たり前の光景だが、初見の者ばかりだったため、皆ただただ驚き、言葉が出ず、ツッコむ度胸のある者は現れなかった。




