73
王宮内をひたすら奥へ奥へと進み、最奥にある側妃の部屋のドアが見える所まで来た。 奥に行くにつれ窓はなくなり、光が届かないせいか薄暗く、空気さえもどんよりと暗く感じる。
ここまで来たメンバーは、陛下、ギン、ドン、エミリア、俺に護衛が5人。全員が呪い無効化、毒無効化の石を身につけている。
ここで止まったのは、ドアの前で控える側妃の護衛と思われる2人が全く動かず、顔はこちらを見ているのに、気づいていないような態度でいることの異様さに、俺らの足が止まったからだ。
「ぺぺ、少しだけ止めて。 陛下、ぺぺが時間を止めるから、2人を回収して1度ドアから離れ、あいつらの体を確認したい」
「ああ、わかった。 怪しいものは1つずつ解決しよう。 近衛兵、頼む」
「「「 ハ 」」」
俺が時間を止め、合図を出す。 護衛が2人を抱え、来た道を引き返し、1番近い部屋に入りドアを閉める。
「ぺぺ、もうちょっと頑張って」
「ああ。 あと3分くらいなら大丈夫だ」
エミリアが2人を観察する。
「隷属の魔法がかかってるな」
「「「 ! 」」」
エミリアが手をかざす。
「ぺぺ、解除していいよ」
「了解」
2人は、目をパチパチとさせたあと、バタンと倒れた。
「休ませた方がいい」
「そうだな。 この2人を別々の部屋に連れて行け。 見張りは多めにつけろ。それからこちらに人を追加で呼んでくれ」
「「「 ハ 」」」
それまでこの部屋で待つことにした。 俺はその間に魔力回復薬を飲む。
「あの2人は陛下が用意した人?」
「その通りだ」
「あの2人がずっとじゃないよね? 他の人もあのドアの前にいた?」
「「「!」」」
残った護衛の1人が、陛下の前で片膝をつき、
「直ちに調べます。 離れてもよろしいでしょうか?」
「ああ。 大至急で頼む」
「 ハ 」
1人の護衛が部屋を出て行った。
「父上、かなりの人数がヤバいことになりそうですね」
「ああ。 頭が痛いのう・・・」
「とにかく、部屋に入って自白剤を使って話をさせる。 水晶で証拠を残す。 息子がいる牢屋も怪しい。 牢番が操られてるかも」
「あいつならありえる。すぐ向かいたいところだが・・・。 ここまで来たんだ、側妃が先だな。本当にぺぺとエミリアがいてくれて良かったですね、 父上」
「まったくだ」
護衛が新たな護衛を連れて戻ってきて、陛下に報告をしている。エミリアは増えた護衛の体をチェックをして、石を渡している。準備が整いまたドアの前に行く。
陛下がドアをノックして、「私だ、入るぞ」と声をかけ、ドアを開ける。
「まあ、陛下。 随分と珍しいでーーー」
俺が時間を止め、側妃を拘束し、自白剤を口に流し込む。 水晶も置いて、皆に合図をして中に入ってもらう。
「これはどうやったら壊れる?」
エミリアが指差した方へ目を向けると、大使館にあったやつに似ている転移陣があった。
「クソ、これでどこに行ってたんだ、此奴は・・・」
陛下はそう言いながら物理的に壊し、これで大丈夫だとエミリアに言う。
え、蹴り? そんなに簡単でいいの?
これが片付いたら帰れる予定だけど、俺達が使う転移陣は無事に存在しているのだろうか。 ちょっと不安になってきたぞ。
でもとりあえずは、目の前にいるこの側妃だなと頭を切り替え、解除するぞ皆に言う。
陛下と側妃の対話が始まった。
**
話をした結果、判明したことは、
レジナルド殿下が陛下との子供ではない。転移陣を設置し、よく訪れていた隣国の宰相との子供。2人は想い合っていたらしい。側妃の魔力は少なすぎて、自分から転移陣を使った事はなく、あちらから宰相が来て、側妃やレジナルド殿下に色々と指示を出したり、たまに宰相本人が魔法で変身をして、マイロンの王宮内を堂々と歩き、色々と調べていたそうだ。側妃の出産にも変身して立ち会い、産まれた子供の色をすぐに変えたらしい。
側妃と宰相の子供、レジナルド殿下を王位につけるために、他の王子達に魔法をかけ、女性達には妊娠をしないように毒を仕込んだ。側妃の姪を魔法で唆したのも宰相。王子の中で唯一魔法が使えるギンを潰せと指示をしたらしい。そんなにお互いが好きなら結婚すれば良かったのにと思うが、許しがでず、離れさせる為にこちらに嫁いで来たそうだ。
エミリアが側妃の魔法を封印した。自分がこの国にいる間は有効だが、離れると効果は無くなるから、生きてる間は壊れる事のない首輪をつくる。その為の素材集めを陛下に頼んだ。
牢屋にいるはずのレジナルド殿下は牢番に魔法を使い、脱走していた。 第2王子殿下とブライアン殿下が兵を使い捜索に行った。
陛下は隣国の王とは普通に仲が良かったらしく、今回の件はとても残念だったそうだ。それでもペンをとり、隣国の王へ、宰相を上手く唆して大至急マイロンに連れて来いと手紙を書き、鳥を飛ばした。
面白いものを見せてやると添えて。
数日後、来訪した王と宰相。 すぐに宰相だけは拘束。着いていきなり拘束をしたマイロン国の対応に、目を見開き驚く王に、水晶を見せる。 その間に自白剤を飲ませた宰相本人からも自供させた。隣国の王は怒り狂い、宰相をボコボコにし、陛下に頭を下げ、ひたすら謝った。陛下は迷惑料をもらい、マイロン国に有利な条約を結んだ。
国王として皆の前でそう対応し、夜2人になってからは友として、酒を飲んだらしい。
首輪を作り終わったエミリアは元側妃、元宰相、捕獲されたレジナルド元殿下に首輪をはめた。
エミリアは、これをあげると自白剤と呪い無効化の石、毒無効化の石を隣国の王に渡す。
隣国の王の体にもかなりの毒があったのだ。これも宰相が、頭の回る陛下より、バカな陛下の息子を王にした方が、宰相として立ち回りやすいと考え、じわりじわりと毒を飲ませていたと自白した。
皆の前で、あいつらには自白剤を飲ませ、自分が何をしたか本人の口から言わせる方が、王の手間もかからず1番だとエミリアが言うと、毒が抜け顔色も良くなり、体がラクになった王は、
「名案だ。そうしよう。我が国にぺぺロール夫妻が来た時は歓迎する。なんならこのまま一緒に国に行かないか?」
マイロンの陛下が呆れた目をして、
「勝手に連れて行こうとするな。お前んとこの宰相のせいでまだ苦しんでる奴らを治すのが先じゃ。 とっとと帰って自分の城の掃除をさっさとしろ」
「あー、考えただけで面倒だ。 いったいどれだけの人数を粛清するのやら。とにかく綺麗に掃除をするから、いつか2人で来てくれ。 この国より旨いものがたくさんあるからな。じゃあな」
豪快に笑い、自国に帰って行った。
その後は王宮に出入りしていた者が魔法をかけられていないか調べる日が続いた。




