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大慌てで魔法陣を用意する。
「サミュ、そこの水晶を取ってくれ」
「ああ」
ギャッツが水晶を婆さんに渡す。
「ユリウス、魔力回復薬を今すぐ飲め。 解いた後もすぐに飲め!」
「ああ、わかった」
エミリアが、目をまんまるに見開き、俺を見上げる。
「ぺぺ?」
「はは、後でな」
エミリアにはたくさん話したいことがあるんだ。もうちょっと待っててくれ、ここを乗り越えてからだと頭をなでる。
この部屋の外に獣人が集まり始めたが、防御壁のおかげでこちら側には来られない。だが部屋の壁をぶち壊し始めた者が出てきた。
「「アドラー様!!」」 「「旦那様!!」」
「!」
ん? レオンが目を見開き、見てる方向は、集まり始めた獣人の方向だ。
「レオン?」
「・・・」
エミリアが 「サイモン・・・」と呟く。
エミリアの世話をした執事の名前だったか? 目を向けると、レオンの時と同じ様だった。右手右足が無く、右目には眼帯をしてる。鳥の獣人か? 飛びながらこの部屋まで来たようだ。竜人は本当にやり過ぎなんだよ! 可哀相に。 治してやりたいが時間がない。
「レオン・・・残りたいか?」
「いや、一緒に連れてってくれ」
レオンの顔を見ると、迷いはない様だ。
今度は婆さんが、
「ヒッヒ。聞こえているかい? こんな状態だから、魔法陣を使う事になった。 竜人に薬が効いているか、確認できないままだが、そこら辺は許しておくれ。 じゃあな」
ん? 婆さんは誰と話してる? さっきからあの水晶は何だ?
そんな事を考えていると、今度はエミリアが、
「ちょっとだけ待って」
サイモンの所へ行き、こちら側に連れて来た。
だから時間がないってのに、まったく・・・。
「一緒に行く?」
サイモンは、石から出て会話ができるようになったエミリアに、驚きながらもすぐに首を振った。
「サイモン・・・本当にいいのか?」
今度はレオンが話しかけると、また驚きながら声のする方に顔を向け、
「その声はレオン!? 生きていたのですね! あー本当に良かった。 ビーの事も私は知ってて黙ってました。 すみませんでした。私は・・・ここに残ります。 執事としての責任がありますからね。はは」
「そうか」
「後悔しない?」
「ええ。 エミリア様にも大変なご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。どうか、どうかご家族とお幸せにお過ごしください」
そう言って、綺麗なお辞儀をしたサイモン。
気持ちは変わらないようだ。
「もう時間がないよ! 全員魔法陣の上に乗れ。ユリウス魔法を解除しろ。 解除と同時に転移するよ!」
竜人の魔法を解除する。
ドタバタして時間がかかったから、意識が飛びそうで、倒れそうになったが、ギャッツに支えられ、すぐに魔力回復薬を口に流し込まれる。
「大丈夫か?」
「ああ、ギリギリだった。 ありがとう」
動けるようになった竜人が、周囲を見て目を見開いているが、レオンが入れた3発が効いているのか、顔が歪む。それでもこちらに攻撃してこようとした所を、サイモンが体を張って壁になった。
「「 サイモン! 」」
サイモンはこちらを向き、笑いながら
「ぐっ・・・行ってください」
何なんだよ、執事もいい奴じゃねーか。
魔法陣が光る。
もう転移が始まる所で、なんと、今度はアルとレティが俺のポケットから飛び出した。
「「 ! 」」
「こら!」
「ちょっと待て!」
「クソ、もう止められないよ! 戻れ!」
もう何なんだ、次から次へと・・・。
「「 だいじょーぶ! 」」
何が大丈夫だ! こんな土壇場で!
俺もクラクラして、とっさに動けなかったのも悪かったが・・・。
転移が終わったら説教するからな!
パパの初めての説教だからな!
2人とも覚悟してろよ!
それでも今、アルウィン、レティシアにかける言葉は、
「「「「「 信じる! 」」」」」
みんな同じ思いだった。
聞こえた言葉に2人は、ニコっと笑顔を見せた。
きっとアルウィンとレティシアは大丈夫。
あ、そういえば婆さんにもらった緑色の石があったな。
ポケットから取り出し手に持つ。
みんなで一緒に同じ場所に行けますように・・・。




