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ーエミリアsideー
俺は、サイモン。 鳥の獣人だ。 レオンは犬の獣人だ。
面倒な事になった。
エミリア様の世話を男2人はダメだろう。
化粧はしてないようだが、風呂に着替えなど、どうすればいいんだ?
下手に手伝えば、主にもエミリア様にも怒られる。
2人で面倒をみろと言われたのだから、女の使用人を呼んでもきっと主に怒られる。
怒られる未来しかないじゃないか!
主はだいぶお疲れのようだったから、2日間は眠りにつくだろう。 ただでさえ、弱ってきている。目覚めるのは3日後かもしれない。
レオンに視線を向けると、無表情だ。 人選ミスにも程がある! こいつは戦争で故郷を失っている。 エミリア様に対して、悪い感情が無ければいいが・・・。
「おい、レオン。 わかっていると思うが、あの戦争とエミリア様の国は関係ないですからね」
「・・・ああ、わかっている」
本当かよ? 信じるぞ? でも不安だ!
「・・・う」
エミリア様の目が覚めたらしい。
「おはようございます」
「・・・」
「執事のサイモンと申します。 よろしくお願い致します。 こちらが使用人のレオンでございます。 我々でエミリア様のお世話をさせて頂きます」
「ここはどこ?」
「竜人国でございます」
「家で夫と子供達が待っている。 帰りたい・・・」
「「・・・」」
なんと、結婚していたとは・・・。
これは外にバレたらマズいな・・・。
「えーっと、お食事になさいますか? それとも湯あみになさいますか? 我々しかいないので湯あみはご自身でしてもらうことになりますが・・・」
「帰りたい・・・」
「えーっと、取りあえずお食事のご用意を致しますのでお待ち下さい。 レオンはここにいてくれ。 では、失礼いたします」
サイモンの野郎逃げたな・・・。
人間か・・・。
いい思い出はないけど、 夫と子供がいるのに、連れ去られたのは可哀相だな。
「子供はいくつだ?」
「・・・2歳の双子」
「そうか・・・。性別は?」
「・・・男の子と女の子」
「・・・あなたは? なぜ竜人国に?」
「人間と戦争して、負けて国が滅びた」
「.・・・そう。あなたも番がいる?」
「いや、番に反応しなくなる薬を飲んだ」
「・・・そう。 恋人は?」
「・・・いる」
「幸せ?」
「・・・ああ」
「・・・私も幸せだった。 子供達とピクニックをしていて、夫に後ろから抱きしめられながら、幸せだなって話をしていたら、あの人が突然現れてここに連れてこられた。 帰りたい。 帰してよ・・・」
「・・・主がやったことは違法だ。 だから見つからないように、サイモンと俺だけでお前の面倒を見る。 隙はつくれるかもしれない」
・・・こいつは主の番だ。主の為に動かなければならないのに・・・。それなのに今、俺はこいつに何て言った? こいつがアイツに似ているからか? こじんまりして、いつもおどおどしてる俺の女に・・・。
「強そうな竜人だったから難しそう・・・。あなたもバレたらヒドい目に合うだろうからいい」
きっとぺぺが迎えに来てくれる。
「そうだな・・・聞かなかった事にしてくれ」
「・・・うん」
変な犬の獣人だ。
でもこの獣人は薬を飲んだが、ちゃんと愛する人を見つけてる。それに違法だと言っていた。100年経って何か変化が起きたのか?
「・・・違法って何故?」
「昔、俺の国の奴が連れてきた番が、婚約者のいる王女だった。 婚約者は他国の王子だった。その2国が怒って戦争になり、俺の国は負けた。 それからは種族が違う番をムリに連れて来るのは違法になった」
「・・・そう。 私の事もダメだね」
「・・・そうだな」
トントン
「失礼いたします。お食事をお持ちしました」
ん? 張り詰めた空気が無くなったか? まさかレオンがやったのか?
「どうぞお召し上がり下さい」
「・・・」
肉の塊がおいてある。コレを食べるの? お腹は空いてるけど・・・。
肉とにらめっこをしていたら、レオンがこちらに来て、ナイフとフォークを持ち、肉を切り分けてくれる。
「サイモン、人間は細かく切って食べる。 それに肉だけで食べる習慣はない。 パンやスープ、サラダが必要だ。 食後にデザートがあれば喜ぶ種族だ」
「そ、そうか。 エミリア様、申し訳ございませんでした。 用意してくるのでお待ち下さいませ」
レオンは戦争の後、少しの間、人間と一緒にいたから詳しいのか? さすが、主! 人選ミスなんて言って申し訳ございませんでした。レオンは役にたちますな! 心の中で謝りながら、部屋を出るサイモン。
「ほら、これで食べられるだろ?」
「ん、あーん」
「はぁ?」
何だこいつ・・・。 口をあけて待ってやがる。
クソっ。あー、わかったよ!
「ん、おいしい」
「・・・そうか」
何なんだこいつは・・・。また口をあけやがった。
「ほら、今日だけだからな。 次からは自分で食べろ」
「・・・・・・・ん」
信用ならない返事だな!!




