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エーテル国軍で雑用の日々(5/10)

黒き者どもとの戦いが始まる

(トルバノーネ最高司令官)「何だと! 俺たちが負けるだと!」

 朝早くトルバノーネさんと一緒に起きるとハンニバルさんとアウグストゥスさんが迎えに来ていた。

 トルバノーネさんはなぜ来たと怒鳴って、アウグストゥスさんが来ると声が聞こえたというと顔を歪めた。僕はトルバノーネさんを宥めた。神様から貰った耳のおかげだから、気にしないで、それより付いて行こう、黒き者どもと戦うんでしょ? と言うとトルバノーネさんは舌打ちしながらもハンニバルさんたちの後を追い、ハンニバルさんたちの屋敷に訪れた。

 そして食卓へ行くと質素ながらもとても美味しそうな食事が用意されていた。ハンニバルさんは僕たちに座って食事を一緒にとろうと誘った。けどトルバノーネさんは待ちきれないといった感じに用件を切り出した。そしてすべてを聞いたハンニバルさんは、無情にも、負けるから止せと言った。

(ハンニバル)「事実を言ったまでだ。頭を冷やせ。そして座れ。せっかく用意した朝食が冷めるぞ。ジャンヌが下手くそなりにも頑張って作ったんだ。食ってやれ」

(ジャンヌ)「あなたなぜ私に喧嘩を売るのですか?」

(ハンニバル)「事実を言ったまでだ。それよりトルバノーネ最高司令官。頭を冷やせ」

(トルバノーネ最高司令官)「うるせえ! 侮辱されて黙っていられるか!」

(ハンニバル)「侮辱では無い。事実だ。受け入れろ!」

(トルバノーネ最高司令官)「はい分かりましたと言えるか! だいたい俺はお前たちと協力するために来たんだぞ! なのに負けるだと!」

(ハンニバル)「お前たちが居ても足手まといになるだけだ」

(トルバノーネ最高司令官)「何だと! 俺たちがお前たちに劣ると言うのか!」

(ハンニバル)「当然だ。俺たちはあの小娘から強力な力を得た。それはお前たち全員を皆殺しにできるほどだ。俺たちは黒き者どもと戦うためにここに来た。ならば戦力差は当然だ。分かったな?」

(トルバノーネ最高司令官)「この野郎!」

(ナツメ)「トルバノーネさん! 止めて!」

(トルバノーネ最高司令官)「邪魔をするな!」

(ナツメ)「ハンニバルさんは口が悪いかもしれないけどトルバノーネさんを思って言ってる! それはトルバノーネさんが分かってるでしょ!」

 トルバノーネさんは歯を食いしばりながら僕を睨む。僕は睨み返す。

 トルバノーネさんは体の力を抜く。

(トルバノーネ最高司令官)「分かった。もうお前たちの力は要らねえ。俺たちで何とかして見せる」

(ナツメ)「トルバノーネさん!」

(トルバノーネ最高司令官)「ナツメ。確かに俺たちはこいつらよりも弱い。だがそれでも意地がある! 怯えて何もできません! それだと前と同じだ! あの腐った生活と同じだ! だからこれだけは譲れない! たとえ死ぬことになっても奴らと戦う!」

(ハンニバル)「逃げる気か?」

(トルバノーネ最高司令官)「何だと? 戦う俺たちが臆病者と言うか!」

(ハンニバル)「事実だからな。お前たちは黒き者どもを恐れている。だからこそ死に急ぐ。奴らと戦って死に、英雄として名を残したい。今怯えている姿を知られる前に死にたい。恐怖をこれ以上感じたくないから死にたい。見え見えだ。アウグストゥスがほざく前でも分かる」

(アウグストゥス)「さすがの俺でも空気は読める。むしろ今空気の読めない奴はお前だぞ?」

(ハンニバル)「空気が読めるのならば指摘するべきだ。バカなことをする前に」

(トルバノーネ最高司令官)「言いたいこと言いやがって!」

(ナツメ)「トルバノーネさん!」

(トルバノーネ最高司令官)「お前はこの侮辱を飲み込めと言うのか!」

(ナツメ)「トルバノーネさんは最高司令官だ! トルバノーネさんの命令で皆の生き死にが決まる! なのにハンニバルさんの助言を無視するの! ハンニバルさんはトルバノーネさんたちよりもずっと多くの黒き者どもと戦ってきたんだよ!」

(トルバノーネ最高司令官)「お前!」

(ナツメ)「殴るの? 止めてよ! トルバノーネさんはそんな人じゃないでしょ!」

 トルバノーネさんは腕を振り上げたが、すぐに下ろす。

(トルバノーネ最高司令官)「分かった。確かにその通りだ。腐っていた俺たちよりもハンニバルの方が正しい。だが、これだけは伝えておく。俺たちは怯えている。だからこそ、黒き者どもと戦いたい。俺たちが臆病者から脱するために!」

(ナツメ)「それは自殺と同じだ!」

(トルバノーネ最高司令官)「自殺じゃない! 俺たちは勝つ! たとえ0と言われても勝つ! ここは俺たちの世界だ! お前たちの世界じゃない! だから勝てないから引き下がれと言われても無理だ! 何もできなくても何かしたい! ただ指を咥えていろと言われて黙ってられるか! 黒き者どもに奪われて堪るか! お前らに奪われて堪るか! たとえ死ぬと理解しても、心は止められない! もしここで諦めたら、前と同じに、お前らが助けてくれるまで酒を飲む屑になる! もう嫌だ! 我慢できねえ!」

 トルバノーネさんは大きく怒鳴ると出口に向かう。

(ハンニバル)「黒き者どもの弱点を伝える。だからよく考えろ」

 トルバノーネさんは足を止める。ハンニバルさんが大声で早口に喋り出す。

(ハンニバル)「奴らの弱点。それは一言で言えばバカということだ」

(ナツメ)「馬鹿?」

 僕はトルバノーネさんに変わったつもりでハンニバルさんに聞く。

(ハンニバル)「黒き者どもは今のところ3種類の兵隊が居る。歩兵部隊であり最も数のある黒き者ども。騎兵部隊である黒き首なし騎士ども。そして城壁破壊を目的とした黒き巨人ども。こいつらは足をそろえてこない。必ず黒き首なし騎士、黒き者ども、黒き巨人の順番で戦うことになる。もしも3種が同時ならばなす術もなく殺される。だが奴らは同時に来ない。必ず黒き首なし騎士が先行し、次に黒き者ども、そして後ろに黒き巨人だ」

 トルバノーネさんの手がぐっと拳を握りしめた。多分、何か思いついたのだろう。でも僕は勝筋など理解できなかった。

(ナツメ)「どういうことです?」

 ハンニバルさんは腕組みしながら椅子に座る。

(ハンニバル)「続きは俺と一緒に飯を食いながらだ。座れ」

 トルバノーネさんは黙って背を向ける。明らかに腹を立てている。

(ナツメ)「僕が聞きます。だから腕組みを止めてください」

 僕はトルバノーネさんに代わって話を聞こうと椅子に座る。

 ハンニバルさんが顔をしかめる。

 ムッとする。僕は蚊帳の外かよ。

(ハンニバル)「お前が? 理解できるのか?」

(ナツメ)「理解します。ですから分かりやすく教えてください。そんな腕組みを解いて。失礼ですよ?」

 ハンニバルさんの目つきが鋭くなる。

(ハンニバル)「お前が俺に意見するのか?」

(ナツメ)「当然です。僕たちは黒き者どもを憎む仲間だ。対等な関係だ。それなのに腕組みをするなんて失礼だ。違いますか?」

(ハンニバル)「俺はお前と対等な関係では無い? 分かるだろ?」

(ナツメ)「対等です。違いますか?」

(ハンニバル)「違うな。俺は黒き者どもを倒す力がある。お前は無い。つまり対等では無い。分かるな?」

(ナツメ)「分かりたくないです。僕たちは仲間でしょ? なのに対等じゃないんですか?」

(ハンニバル)「戦闘力の意味だ。それは分かるだろ?」

(ナツメ)「僕は確かに弱いです。でもだからと言って対等ではないなんてあんまりじゃないですか?」

(ハンニバル)「兵士としての質を言っているだけだ。勝手に勘違いするな」

(ナツメ)「そうですか。ならば兵士としてバカな僕に分かりやすく説明してください」

(ハンニバル)「お前頭が悪いのか?」

(ナツメ)「悪いです。だから聞いています」

(ハンニバル)「分かった。もう帰れ。俺が話したいのはトルバノーネだ」

(ナツメ)「バカな僕も論破できないからこそ分かりやすく話すべきじゃないんですか? それが出来ないから祖国に無碍にされたんでしょ?」

 ハンニバルさんが机を叩いて立ち上がる。

(ハンニバル)「いい度胸だ。もう一回行ってみろ」

 見下ろす目を見上げる。

(ナツメ)「何回でも言います。ハンニバルさんは僕すらも説き伏せられなかったから国に裏切られた!」

(ハンニバル)「何も知らないお前がよくぞ言った!」

 ハンニバルさんが剣を取ると、沖田さん、ジャンヌさん、アウグストゥスさんも武器を取り、ハンニバルさんを睨む。ハンニバルさんはそれを睨み返す。

(トルバノーネ最高司令官)「まいったまいった! 俺の女が飛んだバカなことを! ジャンヌ! お前さんが作ったんだろ! 美味そうだ!」

 トルバノーネさんはがつがつと朝食を食べる。僕の、ハンニバルさんの、アウグストゥスさんの、ジャンヌさんの、沖田さんの朝食を瞬く間に食べつくす。

(トルバノーネ最高司令官)「美味い! 良い腕だ!」

 ジャンヌさんはそっと武器から手を離すとくすりと笑う。

(ジャンヌ)「こちらこそ、美味しそうに食べてくださり、ありがとうございます」

(トルバノーネ最高司令官)「美味かったからな」

 トルバノーネさんは沖田さんに顔を向ける。

(トルバノーネ最高司令官)「沖田、あんた中々に強いだろ。良かったら俺んとこ来ないか?」

(沖田)「俺がエーテル国軍に?」

(トルバノーネ最高司令官)「お前さんみたいに強い奴がくれば俺たちの訓練も励みになるし、異世界の剣術や剣士も体験できる。何より、お前さんと一度は戦って見てえ!」

(沖田)「ふーん。俺は頭の無いただの侍だ。役に立てるかな?」

(トルバノーネ最高司令官)「役に立つさ。死に戦のお供として最高の仲間だ。俺たちの勇士を伝えてもらいたい」

(沖田)「バカ言うな。もしもお前さんたちと仲間に成ったら、俺はおめおめ一人だけ生き延びるなんてできねえ」

(トルバノーネ最高司令官)「いい度胸だ。本当に俺んとこ来ないか? お前のことをもっともっと知りたい」

(沖田)「そうだな。ムカつく近衛兵たちをぶっ殺した、圧勝したエーテル国軍に入るのもいいかもしれねえ」

(トルバノーネ最高司令官)「決まりだな! 歓迎するぜ!」

(沖田)「入るかどうかはまだ決めてねえぜ。ただ、今度散歩ついでに顔見にに行くよ」

 沖田さんは薄く笑って刀から手を離す。

(トルバノーネ最高司令官)「アウグストゥス、俺はお前さんのことを全く知らねえ。悪い噂しか知らねえ。だから今度酒でも飲みに行こう」

 アウグストゥスさんは肩を竦めて武器から手を離す。

 トルバノーネさんは最後にハンニバルさんと相対する。

(トルバノーネ最高司令官)「ハンニバル。黒き者どもの弱点を教えてくれたことは感謝する。だから俺たちは二度とお前と会うことは無い。俺たちが無意味に死のうと放っておいてくれ。そしてお前は、お前が求める対等な存在とやらとで戦争をしてくれ」

(ハンニバル)「俺はお前を対等と思っている」

(トルバノーネ最高司令官)「違うな。お前は俺たちが居ても仕方ないと思っている。そしてそれは事実だ。俺たちはお前たちよりも弱い。できることは限られる」

(ハンニバル)「そうだ、限られている。だがその限られた役割こそ戦場で勝利を呼び込む」

(トルバノーネ最高司令官)「かもしれない。だが俺たちは前線で戦いたい」

(ハンニバル)「それは幼子が言う我儘と同じだ。軍師である俺は兵士の我儘を聞くわけにはいかない。お前も分かるだろう?」

(トルバノーネ最高司令官)「正論だ。だがそれでも俺はお前が気に食わない。もっと言うなら俺はお前の言うことが理解できない」

(ハンニバル)「何が? お前ほどの男が何を理解できない?」

(トルバノーネ最高司令官)「お前の話は納得できる。だがお前はナツメを無碍にした。そして何度も俺に命じた。だが俺もナツメもお前の部下じゃない。対等な関係のはずだ。なのにお前は俺たちを見下す。お前ほどの男だ。理由があるんだろうな。だがその理由が分からない。だから俺はお前が理解できない。どうしてお前は俺たちが下だと言い切れるんだ?」

 ハンニバルさんはため息を吐きながら頭を振る。

(ハンニバル)「俺はお前の言っていることが理解できない。何が言いたいんだ?」

(トルバノーネ最高司令官)「俺たちはお前の部下じゃない。仲間でも無い。お前は異世界人で俺たちはこの国の住人。それだけのことだ」

(ハンニバル)「だから何を言っているんだ?」

 トルバノーネさんはそれ以上何も言わずに、沖田さん、ジャンヌさん、アウグストゥスさんに頭を下げる。

(トルバノーネ最高司令官)「沖田、ジャンヌ、アウグストゥス、お願いだ。俺たちと一緒に戦ってくれ。以前の非礼は謝る。だから一緒に戦ってくれ」

 3人は頭を振って拒否する。

(沖田)「残念だが、ハンニバルが居ねえと黒き者どもに勝てねえ」

(ジャンヌ)「腹立たしいでしょうが、ハンニバルの実力は本物です。戦場に置いて最も頼りになる軍師が居なくては、私たちでも勝てない」

(アウグストゥス)「お前たち、そして俺たちは兵隊だ。足並みをそろえさせる軍師が居なくてはバラバラに戦うことになる。それはお前たちも良く理解していることだろう」

 3人の言葉を聞くとトルバノーネさんは納得した様に頷く。

(トルバノーネ最高司令官)「分かっていた。ありがとよ」

 トルバノーネさんが部屋を出て行くと、僕は急いで付いて行った。


(ナツメ)「これからどうするつもりなの?」

 トルバノーネさんが操る馬に乗って駐屯地までパカパカ進む。

(トルバノーネ最高司令官)「黒き者どもと戦う」

(ナツメ)「でもそんなことしたら?」

(トルバノーネ最高司令官)「エーテル国軍は消滅する」

(ナツメ)「そんな!」

(トルバノーネ最高司令官)「良いんだ。どの道、役に立たない軍隊なんぞ居るだけ無駄だ。いずれ解体する。ならば最後に、パーと散るさ」

(ナツメ)「そんなのダメだよ!」

 トルバノーネさんはそっと頭を撫でてくる。

(トルバノーネ最高司令官)「あいつらに会ってやっと、あいつらを嫌っていた理由が分かった。俺はあいつらに嫉妬していたんだ。それは俺以外の奴らもそうだろう。どんなに頑張ってもあいつらには勝てない。その事実が悔しくてたまらない。だが、もう、それならそれでいい。俺たちが居なくても、俺たちが死んでもこの世界にとって痛くもかゆくもない。あいつらが居る。なら好き勝手に死にに行ける」

(ナツメ)「そんな! 死んじゃ駄目だよ!」

(トルバノーネ最高司令官)「良いんだ。俺はどこまでいっても戦馬鹿だ。平穏に、黒き者どもに怯えて暮らすなんてできない。だからどう言われても戦う」

(ナツメ)「そんなのダメだよ……死んだら」

 トルバノーネさんにギュッと抱きしめられる。

(トルバノーネ最高司令官)「あいつらは、少なくとも、今まで戦ってきた奴らみたいに、俺たちを奴隷にしようとしたり、虐げたりはしない。話して分かった。あいつらは、この世界を守るために来た。なら、世界を守る役目はあいつらに任せる。だからもう、俺は好き勝手にやるさ」

 トルバノーネさんは泣いていた。

 ふと僕は、ここに来る前の世界を思い出した。

 僕は無力だった。何もできなかった。

 それは死ぬほど悔しかった。

(トルバノーネ最高司令官)「心配するな。帰ったら、金を渡す。それからあいつらのところに行け」

(ナツメ)「何を言っているの?」

(トルバノーネ最高司令官)「死にに行くようなバカにうんざりしただろ。だからお別れだ。今まで本当に楽しかったよ」

 腹が立ったので思いっきりトルバノーネさんの頬っぺたをビンタする。

(ナツメ)「勝手に決めんな! 男だったら死に戦じゃなくて勝ち戦して来い! そのために居るんでしょ! ハンニバルさんたちが強いからってふて腐れるな! 悔しいからって玉砕するなんて最高にカッコ悪いぞ! 悔しいんだったら勝ってみろ! 僕に見せてみろ!」

 初めて思いっきり怒鳴ると悲しくて耐えられなかった。

 僕はトルバノーネさんを止めることができない。止めたいけど、できない。

(トルバノーネ最高司令官)「悪かった。だから泣くな。必ず勝つ。約束する」

 おでこにキスされると、僕はトルバノーネさんに抱き付いた。

(ナツメ)「絶対に死なないでよ?」

(トルバノーネ最高司令官)「約束する」

 僕は無力だ。初めて、自分が弱いと実感した。


 駐屯地に戻るとトルバノーネさんは皆を訓練場に参集させ、言い放つ。

(トルバノーネ最高司令官)「1月後、黒き者どもに喧嘩をふっかける」

 駐屯地がざわめきに包まれる。だけどトルバノーネさんは聞こえないかのように続ける。

(トルバノーネ最高司令官)「まず当面の予定だが、俺たちは体が鈍りまくっている。だから2週間で基礎体力を取り戻す。そして残り2週間で全体訓練で戦場の感を取り戻す。そして黒き者どもと戦って勝つ。それにあたって以前のように、飲酒、喫煙、外出禁止。服装および部屋のチェックを行う。その他細かい日程は各部隊長が指示しろ」

 トルバノーネさんは言い切るとじっと兵士たちを睨む。兵士たちは声こそ出さないけど視線を迷わせていた。

(トルバノーネ最高司令官)「どうした? さっさと訓練に戻れ!」

(エーテル国軍防衛隊1番隊隊長ブラッド)「承知しましたトルバノーネ最高司令官! 何している! さっさと行くぞ!」

 ブラッドさんが皆に発破をかけると頼りないながらも兵士たちは訓練を再開した。

(ナツメ)「大丈夫?」

(トルバノーネ最高司令官)「ダメだろうな。だが仕方がない。これでやり切るしかない」

 トルバノーネさんはベールさんらを連れて作戦会議室へ集まる。

(トルバノーネ最高司令官)「外出禁止になった以上、1月分の飯が必要だ。ベール、用意してくれ」

(エーテル国軍炊事係隊長ベール)「承知しました。食料の用意と献立、そして給仕係の訓練は任せてください」

(トルバノーネ最高司令官)「1月後に黒き者どもと戦うと言ったが肝心の黒き者どもがどこに居るか分からねえ。ニッキー、探してくれ」

(エーテル国軍諜報部隊隊長ニッキー)「再度聞くが、ハンニバルたちとは共闘しないんだな?」

(トルバノーネ最高司令官)「俺たちが居てもあいつらの邪魔になる。だからハンニバルの元へ向かう黒き者どもを見つける。せめて数を減らす。だから奴らの根城を見つけろ! 俺たちはそこで一花咲かせる!」

(エーテル国軍諜報部隊隊長ニッキー)「良い話だ! 俺たちの最後に相応しい」

(トルバノーネ最高司令官)「残りのものは訓練だ。ここ1月で兵士たちに地獄を見せる! 死人を出すつもりで訓練させろ!」

(エーテル国軍歩兵部隊隊長キール)「脱走兵はどうする?」

(トルバノーネ最高司令官)「見つけ次第罰しろ。ただし、駐屯地の外へ逃げ延びた奴は放っておけ」

(エーテル国軍歩兵部隊隊長キール)「前なら草の根かき分けても見つけ出したのにずい分甘いな」

(トルバノーネ最高司令官)「そこまでして逃げたんだ。もうここに思い残すことなど無いだろう」

(エーテル国軍歩兵部隊隊長キール)「刑罰はどうする?」

(トルバノーネ最高司令官)「ビンタ一発で終わらせておけ」

(エーテル国軍歩兵部隊隊長キール)「甘いな。だが良いだろう。他の奴らがリンチしないように注意する」

(エーテル国軍切り込み隊隊長ザック)「それにしても、楽しくなってきたな! 今からでもやり合いてえ!」

(エーテル国軍狙撃部隊隊長ウォル)「それで作戦はどうする? 負け戦でも、勝筋くらいは考えているんだろ?」

(トルバノーネ最高司令官)「奴らの足並みはバラバラだ。だからまずは平原で黒き首なし騎士たちを狙撃する。狙撃するのはもちろんウォル、お前だ。そして黒き首なし騎士たちを減らしたら今度は俺たちの番だ。森に入り各個撃破する。もちろん森の中は罠だらけ。コスト、そこら辺はお前に任せる」

(エーテル国軍汎用部隊隊長コスト)「まあ、それしかないでしょう」

(エーテル国軍防御部隊隊長アール)「となると、罠に踏み込ませる役目は頑強さが取り柄の私たちがやりましょう」

(トルバノーネ最高司令官)「方針は決まった。黒き者どもがどこに居るかで作戦も変わるだろうがやることは変わらない。先に来る黒き首なし騎士たちを殺し、次に黒き者どもを殺す。そしてハッピーエンドだ!」

(エーテル国軍白兵戦部隊隊長バーリ)「不可能でないと言い切れる! 最高の戦だ!」

(エーテル国軍輸送部隊長マール)「では各自動きますか」

 隊長たちが部屋を飛び出すとトルバノーネさんの体が震える。

(トルバノーネ最高司令官)「俺は勝つ。必ず。だからナツメ、お前も手伝ってくれ。奇跡のアイテムで俺たちを支援してくれ」

(ナツメ)「分かったよ」

 ギュッとトルバノーネさんの手を握る。

(ナツメ)「大丈夫。絶対にトルバノーネさんたちは勝てる!」

 僕が微笑むと、トルバノーネさんも笑った。

(トルバノーネ最高司令官)「さあ! 戦の始まりだ!」

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