おじいちゃん(1/10)
追記修正が多くなってますのでこの章はテンポを意識して投稿するようにします。
8/18完成
8/18誤字を見つけたので修正
9/5タイトル変更
ナツメが山で憲兵に襲われた翌日の昼に、アウグストゥスは玉座の前で書類を読んでいた。
(アウグストゥス)「財政は順調に良くなっています」
(王)「結構結構。やはりお前を新生フランス帝国の外交官にしてよかった」
(アウグストゥス)「ありがたきお言葉です」
(王)「新生フランス帝国に火薬だかなんだかを輸出する。異世界人と取引きなど上手く行くはずがないと思ったが出来た。それはやはりお前が異世界人だからかね?」
(アウグストゥス)「それは違います。彼らは銃を使いますが火薬を作れません。この世界に来たときに神から大量に授かったようですが、万が一を考えるとそれでも不安です。それを知れば私でなくとも」
(王)「謙遜か? 本当にそう思ってあるのか?」
アウグストゥスは黙る。王は楽しそうに笑う。
(王)「まあよい。よくやった。退がれ」
アウグストゥスは一礼し、退場する。
その後大臣と王が笑う。
(大臣)「権力欲がありありですな」
(王)「奴は異世界では王だった。ならば望むのが自然。暗殺してでも」
(大臣)「本当に自由にしてよろしいのですか? 確かに利用価値はありますが、危険もあると。何せ私たちが示唆したとはいえ本当にゴルバトフ大臣補佐を暗殺したのですから」
(王)「私を殺しても国民も貴族も誰も付いてこない。それくらいは分かっている。だから利用価値があるうちは手放しだ」
(大臣)「価値が無くなれば?」
(王)「できれば殺したいが死ぬのかあいつ?」
(大臣)「どうでしょう。英雄には不老不死の者も居たようですから。まあ、体をすり潰して焼いたら死んだようですが」
(王)「そこまでしないと殺せないか。厄介だ」
(大臣)「今からでも準備をしておきますか?」
(王)「よい。今は新生フランス帝国と友好を結びたい。外交官である奴が死ぬと向こうの異世界人が怪しむ」
(大臣)「ならば、やはり国を一度売り渡してからですね」
(王)「そういうことだ」
王は懐からフランス語で書かれた君主論という本を取り出す。
(王)「しかし、ゴルバトフはこんな訳の分からん言語で書かれた本を読んでなぜ私の権力に制限をかけるなどと気を違えた? そこそこ使えそうだったから生かして置いたのに?」
(大臣)「フランス語やらで書かれたものらしいですね。私も詳しくは知らないのですが、どうも絶対君主制? を保つ力が無いと思ったらしいです。だから制限君主制? とやらに切り替えたほうが良いと」
(王)「やはり異世界人は害悪だな。そんな訳の分からない知識を振りまいてこの世界の平穏を乱す」
(大臣)「ですが、銃や大砲といった兵器は魅力的です。それさえあればブルーネ様は世界を支配できます」
(ブルーネ王)「異世界人が持ち込む神が与えたアイテム。すべて私が貰う。もちろん異世界人は黒き者どもが死ぬまで戦ってもらうがな」
(大臣)「黒き者どもが居なくなれば用済みですからね」
2人でほくそ笑む王と大臣の声を聞きながらアウグストゥスは王宮の影で壁を蹴飛ばす。
(アウグストゥス)「バカが! 国を売り渡す! 高が神の与えたアイテムを手に入れるために国を売り渡すのか! 王としてのプライドは無いのか!」
アウグストゥスは世論を知る能力を持っている(能力名:神の定めた政治家)。その効果は世界を見渡せる千里眼に近い。アウグストゥスはどんなに遠くに離れた存在でも、何を話していて、思惑はどうなのかを知ることができる。また耳を澄ませばどれだけの人が何を求めているのか分かる。つまり選挙にでれば誰が誰に票を入れるか分かる。また敵対政党を支持する人、友好政党を支持する人、自政党を支持する人、何より何票入るかが分かる。これは政治において喉から出るほどの力だ。インターネットを使って呼びかけなくてはならないほど、選挙において国民の票は重要だ。そしてもしも大多数の国民が望む政策が事前に分かったらどうなるか? もはや選挙の必要も無くなる。なぜならば、大多数が望む政策を実行するのだから必ず勝つ。それが通りだ。そしてこの力を持つ者は独裁者と成れる。選挙がただの儀式になるからだ。もちろん、国民にとって不利益は一切ないし、そのままではただの国民の代弁者に過ぎなくなる。だがもしも選ばれた独裁者の仲間が、国民に不利な政策を打ち出したとする。それが不利と反対できる国民は居るだろうか? 少なくとも私はしない。なぜならば、自分で選んだ独裁者が選んだ人材だ。反対しようと思わない。何より、私は自分の選んだ独裁者の言葉だけを熱心に聞き、その他の官僚の言葉など聞きもしないからだ。さらに独裁者には大きな利点がある。それは、仲間と成れる人材を好きなポストに配置できることだ。もしも最高裁の裁判官を任命で来たら? 最高裁の判決は必ず独裁者に賛同する。なぜならば、仲間だからだ。そして私はそれを見て、民主主義だと思うだろう。
神の定めた政治家は、共和制を保ちつつ独裁者となったアウグストゥスにぴったりの能力だった。
しかし悲劇はある。もしも、1人も自分を支持しないと分かったら? 何も出来ない。そして今のアウグストゥスはまさしくそれだった。
(アウグストゥス)「たとえ国のためを思っても、王は決して権力を手放してはならない! もしもそんなことをすれば国が割れる! なぜ奴らは気づかない!」
だがアウグストゥスにとって一番つらいのは、簡単に国を売り渡す王に文句も言えないことだった。
国のためを思い独裁者となったアウグストゥスにとって、たとえそれが最良であっても国を売り渡すことはしない。自分の方が、絶対に、他国の王よりも国民を幸せにできると信じているから。プライドがあるから。何より、国が割れる恐怖を知っているから。
(アウグストゥス)「あんな王でも賛同者が居る。全く、この世界は皆バカだ!」
激しく独り言で罵ると眉毛が吊り上がる。沖田の激昂が聞こえたのだ。
(アウグストゥス)「あのバカ! これ以上もめ事を起こしてどうする! ただでさえ私たちは誰からも支持されていないのに!」
アウグストゥスは足を怒らせて走った。
(沖田)「てめえら! 何でナツメを殺した!」
(近衛兵副隊長)「ナツメとかいう異世界人には射殺許可が出ていた。お前も知っているだろ?」
(沖田)「隊長に向かってお前だと! 何様のつもりだ!」
(近衛兵副隊長)「あんたはすでに隊長じゃねえ。俺が隊長だ!」
(沖田)「何だと?」
(近衛兵副隊長)「お前、俺の可愛い部下をリンチしただろ? どういうことだ?」
(沖田)「あいつらは無抵抗なナツメをリンチしたんだぞ!」
(近衛兵副隊長)「異世界人だ。正当防衛という奴だよ。お前たちの言葉で言うなら!」
(沖田)「無抵抗な奴を痛めつけて何が正当防衛だ! 降参した侍の首を切るなんてくそのやることだ!」
(近衛兵副隊長)「沖田。私はお前と口論するつもりは無い。お前には資格が無い。だから黙って私の言葉を聞け。いいか? お前は本日付で近衛兵隊長からただの憲兵予備になった。その結果、お前は私たちエーテル国に今までもらった金を返す義務がある。期限は明日、金貨三十枚、即金で払ってもらう」
(沖田)「金貨三十枚!」
(近衛兵副隊長)「今まで払った金額と違約金だ。書類を見なかったのか? 異世界人のくせに!」
(沖田)「ふざけんじゃねえ! 何で俺が払わなきゃならねえんだ!」
(近衛兵副隊長)「文字も読めないのか? さすが野蛮人!」
(沖田)「ふざけんじゃねえ! 俺は何でナツメを殺したのか聞いてんだ! なのに何で俺が悪いみたいになってんだ? 話を逸らすんじゃねえ!」
(近衛兵副隊長)「契約書も読めないお前が悪いだろ?」
(沖田)「この外道どもが!」
(アウグストゥス)「止めろ、沖田。今こいつらをぶった切っても何も始まらない。分かるだろ?」
アウグストゥスは沖田が居合抜きする前に刀を押さえて制する。
(沖田)「アウグストゥス! 邪魔をするか!」
(アウグストゥス)「私はこの国の官僚だからな。国軍の兵士を殺すなど言語道断だ」
(沖田)「こいつらはナツメを殺したんだぞ! それともお前があの小娘から授かった能力はナツメも気づけないほどバカなのか!」
(アウグストゥス)「知っている。だから言っている!」
沖田とアウグストゥスが睨み合う。そして先に折れたのは沖田だった。アウグストゥスの手が震えていたからだろう。
(沖田)「くそったれ!」
沖田が柄から手を離すとアウグストゥスが近衛兵副隊長に頭を下げる。
(アウグストゥス)「マンディル副隊長。申し訳ありません。同じ異世界人として頭を下げます」
(マンディル副隊長)「マンディル隊長だ。異世界人」
(アウグストゥス)「マンディル隊長。申し訳ありません」
(マンディル隊長)「分かればいい。沖田! てめえ! 払わなかったらてめえはただ働きだ! 明日から掃除洗濯炊事全部やれ! 良いな! 今までの様にただ飯食って散歩してるだけの気楽な人生じゃない! 地獄を見せてやる!」
(憲兵B)「おい! お前がここに来る前の人生を聞いたぜ! 女なのに男だらけの軍に入ったんだってな! 娼婦として入ったのか!」
(憲兵A)「皆あそこはデカかったか! 俺たちよりも! 何なら試させてもいいんだぜ! てめえの腐ったマンコでな!」
(沖田)「あの野郎ども!」
野次を背中に受けると沖田は鞘に手をかける。
(アウグストゥス)「堪えろ。奴らをぶった切ってもお前の地位は変わらない。むしろもっと不味くなる」
アウグストゥスは沖田の手を押さえながら歩く。
(沖田)「てめえはナツメが殺されたのに何も思えねえのか!」
(アウグストゥス)「死体は? 口だけの可能性もある。戦果の水増しなど日常茶飯事だ」
(沖田)「そう思った。そして死体は無かった。だから希望を持った。だが奴らは血まみれの銀貨を持っていた! 俺が渡した銀貨だ!」
(アウグストゥス)「銀貨? 見間違いじゃないか?」
(沖田)「汚れが付いていた。何より、血の臭いが同じだった。現場を見たが、あの出血で生きているとはいえねえ」
(アウグストゥス)「嗅覚も強化されていたか。この場だけ、気の毒と言っておく」
(沖田)「喧しい! それよりてめえはナツメが、仲間が死んで何も思わねえのか?」
(アウグストゥス)「死んだ者に価値は無い。死ぬまでに私のように価値を作り出した存在以外は」
(沖田)「やっぱりてめえはくそったれだぜ!」
沖田がアウグストゥスに背を向ける。
(アウグストゥス)「私の奴隷になるというのなら金貨三十枚肩代わりしてもいいぞ」
(沖田)「お前は君主じゃねえ。王様じゃねえ。そんな奴の奴隷になるなんて御免だ!」
(アウグストゥス)「自分の立場が分かっているのか!」
(沖田)「分かってるさ! あのくそみたいな王様をくそと思ってるのに何もできないくずだ! お前と同じだ!」
アウグストゥスは沖田が肩を怒らせる背中を黙って見送った。
(アウグストゥス)「蛮族国家のバカが! 自分の立場が分かっていない!」
アウグストゥスは当てもなく怒りながらどこかへ速足で歩を進める。
足が止まるハンニバルの声が聞こえた。
(アウグストゥス)「あのバカ! 英雄とは名ばかりの戦争狂だ!」
アウグストゥスが走る。
(ハンニバル)「金は用意した。約束の金額詰まっている。数えろ」
(ブルーネ王)「結構。しかしお前は何時見ても無礼だな? 言葉を選んだ方が身のためだぞ?」
(ハンニバル)「生憎、軍の増強もできないバカげたお山の大将に使う言葉を学ばなかったものでね」
(ブルーネ王)「素晴らしい口ぶりだ! さあ、金を置いて帰れ」
(ハンニバル)「何だと! 兵隊を1万寄こす約束だった! その金なら十分だろ!」
(ブルーネ王)「帰れと言っているんだが?」
(ハンニバル)「くそみたいな国だ! 今のままだとお前らが死ぬんだぞ!」
(大臣)「私の記憶では、あなたがここに来て初めての戦で9000の兵士が死んだ。君が無血で勝てたなら喜んで兵士を送る。だが君はできなかった。弁解の余地はあるか?」
ハンニバルは押し黙る。そしてやっとこさっとこ口を開く。
(ハンニバル)「分かった。ここは引く。だからせめてその金で群を増強しろ。そろそろ俺もヤバい」
そしてハンニバルは何も聞かずに玉座から姿を消した。
(アウグストゥス)「意外だ。最悪背中から刺す必要があると思ったが」
アウグストゥスはハンニバルが廊下に出るとすぐに声をかける。
(ハンニバル)「すげえバカ野郎だ。俺の正しさを理解できない奴等死ねばいい。お前も含めて」
(アウグストゥス)「何を言っている?」
(ハンニバル)「すまねえ。ただの愚痴だ。聞き流してくれ」
(アウグストゥス)「ダメだ。はっきりと聞かせてもらう」
(ハンニバル)「聞きてえのか? なら言うが、不満があり、上に立つため、そして対象がいかにバカであろうと暗殺するような人間を信用できるか!」
(アウグストゥス)「確かに私は汚いが、お前もゴルバトフに賄賂を贈っただろ?」
(ハンニバル)「ああ! 国を守るためとか言っていたが実のところ自分が王になりたいだけのバカ野郎だった! だがそれがどうした? 奴は俺を買っていた! 今よりももっとマシな軍隊を作った! ナツメなんて殺させねえさ!」
ハンニバルが去る。その背中にアウグストゥスが叫ぶ。
(アウグストゥス)「そろそろ気持ちを入れ替えて、奴らに従うべきじゃないか? 私はお前を買っている。今なら私とお前で最高の軍を作り出せるはずだが?
(ハンニバル)「何もできない俺たちに、何を作る? 寝言は寝てから言え」
ハンニバルはすぐに去った。
(アウグストゥス)「ジャンヌはどうしている?」
耳を澄ますとジャンヌの悲痛な叫びが大教会の中から聞こえた。
(ジャンヌ)[ですから、集めたお金をどうして私兵に回すのですか! そんなことするならば国に寄付するか信者に使うのが道理でしょう!]
(大司教A)「おかしなことを言う。私たちの信者を黒き者どもから守るために金を使うのがそんなに大事か?」
(大司教B)「このやり取り何回目ですかね?」
(大司教C)「4回目ですね。ただ田舎娘は記憶力が低いようで」
(ジャンヌ)「ならばこれをお見せします! これはあなたたちが実際に使った金の流れが記載される。そしてこれが収入! お布施等で手に入れた汚い金の合計です! 明らかに収入の方が多い! あなた方! 私腹を肥やすだけに金を集めているのではないのですか!」
(大司教D)「憶測で物を言うのはご法度だ。ご両親に習わなかったかね?」
(大司教A)「なるほどなるほど! 田舎娘が素晴らしい妄想をのたまってくれた!」
(大司教B)「その数字の根拠は? お前が改変しなかったという証拠は?」
(ジャンヌ)「あなたたちは!」
(大司教C)「そもそも私たちはあなたにエーテル教以外の宗教を伝えてはならないと告げた。なのに伝えている。この裏切りはどうするつもりですか?」
(ジャンヌ)「ならば結構! 私は今日限りでエーテル教を」
(アウグストゥス)「確かにこの書類の字は汚い! 不正はないと証明もできない! 私からお詫びします」
(ジャンヌ)「アウグストゥス!」
(アウグストゥス)「堪えろ。お前に利用価値があるから奴らはお前を大司教にした。だからキリスト教の布教も黙認している。それが敵意むき出しと分かってみろ。お前どころか、数少ないキリスト教徒すらも殺される。奴らは異端という理由でいつでもお前を殺せることを忘れるな!」
アウグストゥスが小声で叱るとジャンヌは押し黙る。それにエーテル教の大司教たちは笑った。
(大司教A)「下がれ。お前は異世界人。共に歩めぬのなら敵だ」
(ジャンヌ)「……分かりました。失礼します」
ジャンヌの震える後姿を見て、大司教たちは笑いで震えた。
2人は廊下に出るとがなり合う。
(アウグストゥス)「ジャンヌ! いつも言っているだろ! 冷静になれ! ここで騒ぎを起こしても何の意味も無い! むしろ今の地位を利用する! それくらいの意気込みが必要だ!」
(ジャンヌ)「まさかあなたからありがたいお言葉を貰えるとは思いませんでした!」
(アウグストゥス)「俺だって本当はお前なんぞと話したくも無い! だが理解はできるだろ? 私とお前の利害は一致している。私は王となり、お前はエーテル教の教皇となる。そうすればキリスト教を普及させ、エーテル教を衰退させることも可能だ! 私が王になれば政策で後押しできる!」
(ジャンヌ)「ナツメが殺されたのに平然としているような人を信用できません!」
(アウグストゥス)「死んだ者を思ってどうなる! 今必要なのは私とお前の連携だ!」
ジャンヌがため息を吐く。
(ジャンヌ)「あなたはナツメと出会い、彼を知った。彼が死んだのに平然としている者と歩むなど無理です」
(アウグストゥス)「ジャンヌ、冷静に成れ。それにそれを言うとお前は何人の兵士を殺した? キリスト教は何人の人間を殺した?」
(ジャンヌ)「戦争ならば仕方ありません。異教徒ならば、それで戦争が起こったのだから、弾圧するのも分かります。ですがナツメのような無抵抗な存在を殺すなどしなかった!」
(アウグストゥス)「ジャンヌ!」
(ジャンヌ)「ごめんなさい。私はどうしてもあなたが信用できません。あなたはこの世界を救うつもりなど無い。新生ローマ帝国を作り、今度こそ永遠の王でありたい。それがあなたの本心。そう思ってしまった」
(アウグストゥス)「ジャンヌ! 強い世界を望んで、強い国を望んで何が悪い? 私ならそれができる。ただそれだ!」
(ジャンヌ)「でしょうね。否定できません。ただあなたはナツメが死んだというのに王になることばかり考えている。そんな人間と一緒にはなれません」
ジャンヌが踵を返す。
(アウグストゥス)「新生ローマ帝国を作れば! 私が王になれば世界は救われる! 私たちはいがみ合っている場合ではない! 私たちは協力すべきだ! 私に力を貸すべきだ! 私なら必ず黒き者どもを超える国を作れる! なぜそれが分からない!」
ジャンヌは振り向きもせず、去った。
(アウグストゥス)「くそったれ! 何で大司教どもの考えが耳に入る!」
先ほどジャンヌを笑った大司教の言葉が聞こえる。
纏めると、ブルーネ王と同じことを考えていた。
向こうが国家権力ならこっちは宗教による結束力。
そもそもエーテル教は異世界人から身を守るために作られた宗教だ。そしてエーテル国も。だからこそ、確執は埋まらない。当然だ。ジャンヌもアウグストゥスも人間なのだから
(アウグストゥス)「くそ! 畜生! 私が平然としていると思うのか? ナツメが死んだのに平然としていると思うのか!」
アウグストゥスは誰も居ない廊下でさめざめと泣いた。
(ナツメ)「……ここは?」
一命をとりとめたナツメが目を開くと、そこはお城の中であった。
絢爛豪華な装飾品にテーブルクロスやシーツの質、高い天井を見ると嫌がおうにも城の中というイメージが湧いてしまう。
(ナツメ)「僕、死んでない?」
(お爺ちゃん)「起きたか!」
悩んでいるところに、お爺ちゃんのしわがれた声が部屋に木霊した。




