第二十八章:狩猟(3)
神崎 蓮たちは、アーロンが以前逃げ出したことのある街へと地上に戻った。地上へ出た途端、目に飛び込んできたのは荒廃した街並みだった。怪物と人間の死体がそこら中に転がり、血の臭いが充満している。ここでも戦闘が続いていたようだ。
血肉の悪臭を避けるために鼻を覆いながら、一行は二棟の建物に挟まれた高層ビルを見つけた。神崎 蓮は全員に中へ入るよう合図した。皆、最低限の荷物を身につけたままだった。
全員が建物へ入った直後、どういうわけか、彼らが地上へ上がってきた地下通路が跡形もなく崩れ落ちた。残っていたのは瓦礫だけで、まるで最初から何もなかったかのようだった。老朽化が原因かもしれないし、何かが駅全体を崩壊させたのかもしれない。いずれにせよ、崩れても不思議ではなかった。
一方、暗殺者たちが神崎 蓮たちの痕跡が最後に残っていた場所へ到着すると、地下通路がいつの間にか崩壊していることに気づいた。追跡の手がかりは、そこで途切れてしまった。
「どうやら、先に逃げられたようだ。こっちが一歩遅かったな。まったく、こそこそ逃げ回るネズミどもめ。ここまで来るのに時間がかからなければ、逃げ切れなかっただろうに」一人が怒りをあらわにした。何時間もかけて現場へ来たというのに、結局、標的に先を越されてしまったのだ。
「あいつらが逃げられるかどうかなど、お前たちには関係ない」いつの間にか背後へ近づいていた黒い影が言った。暗殺者たちは驚いて振り返ったが、言葉を発する間もなかった。影が放った闇の刃が一閃し、全員を一刀のもとに斬り伏せた。
赤い目が暗闇の中から倒れた死体を見下ろした。彼らの命が完全に消えたことを確かめると、黒い影はゆっくりと立ち去った。遠くの闇からは、別の視線が神崎 蓮たちの出てきた地下通路をじっと見つめていた。もしそこに誰かが居合わせていたなら、背筋が凍る思いをしただろう。
すでに夜になり、一行は戦闘でかなり疲れていた。高層階まで上がる余力はなかったため、全員がひとまず一階で眠ることにした。それでも安全を確保するため、正面の扉は塞いでおいた。アーロン、クリス、ひな、神崎 蓮が交代で見張りを担当した。神崎 蓮はかつて兵役に就いていたため、夜警など慣れたものだったが、残る二人と一匹にとっては初めての経験で、少々勝手が分からなかった。
翌日の午前十一時ごろ、一行は疲れ切った一夜を終えて目を覚ました。皆が気持ちよさそうに伸びをし、大半はぐっすり眠れたようだった。夜通し見張りをしていた者だけは少し疲れていたが、長い睡眠のおかげで、ほとんどの者はすっかり目が覚めていた。
遠くから大きな物音が響いた。何か巨大なものが動いているらしい。神崎 蓮たちが急いで外へ出ると、レベル25の変異モンスターが姿を現し、移動を始めていた。
事態を警戒した神崎 蓮は、皆に白銀の妖狼の群れについていくよう指示し、自分とクリス、ひなだけが先行した。二人はひなの背に飛び乗った。ひなの足音は極めて小さく、怪物に気づかれることなく、長い距離を追跡できた。数分後、ようやく目的地へ到着した。
高所から下を見下ろした神崎 蓮とクリスは、信じられないほど大量の不死系モンスターが群がっている光景を目にした。まるで軍隊のような規模で、正規軍ほど整然とはしていないものの、その数は圧倒的だった。これほどの群れを相手にすれば、どれほど多くの職業者がいても、攻撃によるダメージが敵の進軍速度に追いつかなければ押し返すのは難しい。
だが、その光景は神崎 蓮に奇妙な高揚感をもたらした。こうした大規模戦闘こそ、トップクラスのレベリング代行プレイヤーなら一人で何度も突破してきたものだ。そうでなければ、神崎 蓮がサーバー上位のレベリング職人として、十年以上前から名を連ねる者たちと肩を並べることなどできなかっただろう。
神崎 蓮は迷わず、クリスに下へ降りて雑魚を片づけるよう指示した。ひなには白銀の妖狼たちを率いて子供たちを援護させ、特にアリスを守るよう念を押した。アリスはチームにとって生きた回復薬のような存在であり、彼女を守ることが最優先だった。
白銀の妖狼たちとひなの「咆哮」が次々と響き、周囲の怪物を挑発した。怪物たちはすぐに狼の群れへ引き寄せられ、ほかの者たちは狼の背に乗ったまま戦い始めた。神崎 蓮とクリスも後方から素早く怪物を片づけていく。怪物たちのレベルは比較的低く、クリスたちや妖狼にとってはともかく、神崎 蓮にとっては歯ごたえもなかった。
プレイヤーが低レベルの怪物を狩って簡単にレベルを上げるのを防ぐため、ゲームでは自分より三レベル以上低い怪物から得られる経験値が大幅に減らされていた。たとえばレベル14の者がレベル10の怪物を倒しても、得られる経験値は最大で本来の30%にすぎない。反対に、自分より高レベルの敵と戦う場合はそうではなく、追加報酬を得られることさえある。
神崎 蓮は多くを語らず、「毒牙狼刀」を手にした。以前の章で軍用ナイフは手放していたため、今はこの武器を使うしかなかった。彼はひなの背に乗り、やや扱いにくさを感じながらも無極剣法を繰り出した。万極神剣は壊れており、修理に必要な素材もまだ足りない。威力も有効範囲も以前より劣るが、今はこの次善策で戦うしかなかった。
それでも、無極剣法の基本的な剣技を次々と放てば、怪物を片づけるには十分だった。神崎 蓮はためらわず「狂乱」を発動し、斬撃を連続して繰り出した。「捕食」と「消失」を組み合わせることで、以前の戦闘ほど体力を消耗せずに済んだ。今回の戦いが終わったら、自分のステータスを振り直す必要がある。すでにレベル20に達しているのに、能力値が低すぎるままでは不利になるからだ。
やがて、彼はあの巨大な影と直接対峙することになった。それでも手を止めず、まっすぐ突進した。相手とのレベル差はわずか五だったが、能力値をまだ強化していないため、神崎 蓮は少し苦戦し始めた。動きが十分に速くなければ、一撃で命を落としていたかもしれない。
再び、硬い金属を叩くような斬撃音が響き渡り、剣戟の甲高い音が途切れなく続いた。神崎 蓮はすぐにADへ4ポイント、物理貫通へ4ポイントを割り振った。すると与えるダメージが増し、毒を帯びた斬撃も本来の威力を発揮し始めた。
二十分以上にわたる激戦の末、巨大な影はついに倒れた。戦利品はすべてシステムによって回収された。怪物の死体はギルドへの納品や装備の強化に使えるが、その核は売却すればかなりの値がつく。
神崎 蓮は余計なことを言わず、暗殺者たちから回収した装備と、今日手に入れた核をすべて売却した。彼にとって一般的な装備はそれほど役に立たない。プレイヤーたちがこの世界へ降臨する段階にもまだ達していないため、今すぐ活用する必要もなかった。
巨大な影が倒れると、子供たちはようやく安堵の息をついた。怪物たちとの戦闘だけでも十分に疲れていたのに、最後にあれほどの強敵まで相手にするとは思っていなかったのだ。子供たちは神崎 蓮を尊敬の眼差しで見つめた。一方、クリスはさほど気にしていなかった。神崎 蓮の実力はすでに目の当たりにしている。考え方でも戦闘能力でも、自分が彼を超えるのは無理だと分かっていた。
それも当然だろう。もし子供が、神崎 蓮のようなプレイヤーを思考力や知識、戦闘能力で上回っていたなら、そのほうがよほど不自然だ。
皆が再び集まり始めたとき、怪物の死体の背後から声が聞こえた――




