第十八章:狩猟(2)
ホテルの扉を出ると、午後の柔らかな日差しが降り注ぎ、一人ひとりの顔の半分を淡い金色に染めた。昨夜の廃墟に漂っていた邪気は薄れ、代わりに終末世界特有の重苦しい静けさが広がっていた。しかし、五人の亜人の子供たちにとって、これはただの午後ではない。人生が最も暗い行き止まりに差しかかったと思っていた彼らにとって、まったく新しい始まりの瞬間だった。
神崎 蓮は空き地に立ち、目を閉じて『生物検索』と『マインドマップ』を同時に発動した。すると、三次元の空間構造が滑らかに意識の中へ浮かび上がった。標的を示す魔物のような赤い点が、あちこちで点滅している。モンスターの大半は地下深くに集まっているか、大きな広場に潜んでいた。神崎 蓮は落ち着いて操作し、心霊レーダーの走査範囲を北へ広げ、約2キロ先の開けた空間まで探知を続けた。
今回、神崎 蓮はひなを拠点の守備に残すことにした。これは子供たちだけの「実戦訓練」なのだ。高位の霊獣である銀狼の王女がそばにいれば、無意識のうちに頼ってしまい、生存本能が鈍るうえ、彼が苦労して組み立てた戦闘訓練の計画も台無しになってしまう。
神崎 蓮が一行を指定座標へ導くと、目の前には荒らされた小さな広場が現れた。そこには醜悪な獣型の変異モンスターの群れがひしめいていた。幸いにも、恐ろしいアンデッド種族ではなかった。敵のレベルは5から8程度にすぎないが、長い虐待生活で衰弱した子供たちのレベルも、それほど高くはなかった。戦力差がわずかしかないからこそ、彼らが無謀で無意味な正面衝突に飛び込まないよう、神崎 蓮は緻密な戦術を立てる必要があった。
前世での野外掃討戦の経験を踏まえ、神崎 蓮は出発前に五人全員へ心霊通信のリンクを施した。魔法による接続が成立した瞬間、子供たちは自分の脳へ直接つながる不思議な思考回線を感じ取った。これにより、神崎 蓮は声を出さずとも、命令を伝えたり、位置を調整したり、危険を知らせたりできる。戦場で隠密性を保つうえで、これは計り知れない利点だった。
基本の配置を伝え終えると、神崎 蓮は身を沈めて跳び上がり、近くの高層ビルの屋上へ移動した。高所から戦場全体を見渡す。最初のモンスターの群れが人間の匂いを嗅ぎつけ、狂ったように突進してくるのを確認すると、落ち着いた声が五人それぞれの意識へ直接響いた。
「アーロン、セレス、前衛に出ろ! 二人で敵の注意を引きつけるんだ。アーロンは動くタイミングに気を配り、セレスと連携して攻撃を受け止めろ。マナは後方から遠距離魔法で敵の体力を削れ。距離を保ち、早まって前へ出るな! アリスはアーロンとセレスのHPを85%以上に維持することに集中しろ。Manaを惜しんだり、状態異常解除のスキルをためらったりするな。クリス……敵の後衛深くへ潜り込み、厄介な敵や遠距離攻撃を仕掛ける敵を優先して暗殺しろ。一撃で仕留められなければ、すぐに離脱するんだ!」
「了解!」
心霊リンクを通じて五人の力強い返事が一斉に返ってきて、神崎 蓮はひとまず安心した。まだサブ職業系統の高度な補助スキルは解放できていないが、この亜人の子供たちが生まれ持つ素質なら、支援しながら頂点へ導くことも時間の問題だと信じていた。
広場では、モンスターたちの凶暴な咆哮が静寂を引き裂いた。子供たちはすぐに陣形を組んだ。最初は動きに戸惑いが見られ、アーロンは血気にはやって盾役のタイミングを外しかけ、セレスは敵の凄まじい衝撃を受け止めようと苦戦した。しかし、その隙が生まれた瞬間、屋上から神崎 蓮の鋭い指示が羅針盤のように響いた。
「アーロン! 重心を三センチ下げて、肩を引け! セレス、盾を45度傾けて突進の力をそらせ! マナ、左の敵の足元に火球を撃ち込め!」
神崎 蓮がミリ単位で調整を加えると、チームの連携は驚くべき速さで変わり始めた。
キンッ! シュッ! グオオオッ!
高所から見下ろせば、小さな五人の姿は、凶暴なモンスターの大軍に囲まれた毒アリのようだった。数の差は圧倒的だが、それは戦闘開始直後だけの話だった。神崎 蓮の巧みな指揮のもと、モンスターは次々と血の海へ倒れていった。セレスの魔法鎧は頑丈な鉄壁となり、アーロンの獣化した強烈な拳が敵の突撃を打ち砕く。マナのレイピアと魔法は敵を貫き、クリスは幽霊のように姿を消しては現れ、遠距離攻撃を担う敵の喉を切り裂いた。安全な距離を保つアリスは、温かな治癒の光を絶えず放ち、二人の前衛のHPを満タンに近い状態で維持していた。
最初にのしかかっていた圧迫感は次第に消え、子供たちの顔には息の合った動きと自信が浮かび始めた。最後のモンスターが絶望的な咆哮を上げて倒れると、おなじみのシステム音が突然、神崎 蓮の頭の中に響いた。
「ピン! 特殊クエスト『同盟者の受け入れ』を見事に達成しました。報酬:『潜在ポイント』×30」
「説明:潜在ポイントは全能システム専用の機能で、NPCの同盟者の実力を直接強化できます。潜在ポイントを同盟者に与えると、急速なレベルアップ、隠しスキルの解放、既存能力の強化が可能になります。運がよければ、種族の血統能力が覚醒することもあります(Bloodline Awakening)」
通知を見て、神崎 蓮は驚きを隠せなかった。元トップクラスのレベル上げ代行者として、大作ゲームにおけるNPC育成システムを数多く知っていたが、NPCの潜在能力や血統に直接干渉できる仕組みは初めてだった。自分だけの戦闘軍団を築くうえで、これは明らかに破格の機能だった。
……
同じ頃、まったく別の空間で、次元を透視する魔法道具のレンズ越しに、一人の人物が神崎 蓮と亜人の子供たちの戦いぶりをひそかに見つめていた。
部屋は深い闇に覆われ、人物の輪郭のほとんどが隠れていた。しかし、よく見ると、それは気品と神秘的な美しさを備えた若い女性だった。彼女は手の中の赤いワインを揺らしながら、魔法の映像に映る神崎 蓮の後ろ姿をじっと見つめた。そして、後ろでひざまずく部下に、ゆっくりと退出するよう合図した。映像の向こうから音は届かなかったが、女性の魅惑的な薄笑いからは、神崎 蓮に対する特別な評価と強い興味がうかがえた。
その部屋の窓の外に広がっていたのは、荒廃した終末都市ではなかった。息が詰まるほど暗い空に、邪悪なオーロラの光の帯がかすかに揺らめいていた。眩しい太陽はなく、ただ巨大で不気味な満月が妖しい銀色の光を放ち、暗い異次元の一帯を照らしていた。
……
広場の戦場へ戻ると、頂点に立つプレイヤーならではの鋭い生存本能から、神崎 蓮はふと眉をひそめた。見えないどこかから、謎めいた視線が自分を見つめているような気がしたのだ。しかし、レーダーの走査では近くに直接的な脅威は検知されなかったため、疑念はいったん脇へ置き、屋上から軽やかに飛び降りて仲間たちと合流し、戦利品を回収することにした。
「おっ、今回はなかなかの収穫じゃないか?」神崎 蓮は散らばったモンスターの死体を見ながら、満足げにうなずいた。
彼は小声でつぶやいただけだったが、亜人の子供たちの鋭い感覚にははっきり聞こえていた。アーロンが頭をかき、好奇心いっぱいに尋ねた。
「収穫ですか? ここには汚いモンスターの死体しかありませんよ。それに近くにギルドも商人もいないのに、何が収穫なんですか、神崎 蓮さん?」
隣にいたクリスもアーロンの疑問に同意するようにうなずいた。モンスターの死体には素材が少なくないが、いちいち手作業で拾って持ち運べば、小さな荷物袋などすぐにいっぱいになってしまう。
神崎 蓮は微笑むだけで、説明しなかった。モンスターの死体へ近づき、手を軽くかざす。すると不思議な回収魔法が発動し、牙や爪、獣皮、魔石、ドロップアイテムがすべて虚空へ吸い込まれ、一瞬で消えた!
回収した高品質の素材を見て、神崎 蓮は珍しく満足げに笑った。売却できる品はそれほど多くなかったが、子供たちの装備を強化するために加工できる素材が豊富にそろっていた。これこそ本当の「大豊作」の狩りだった。
「ピン! 魔石3,766個を獲得しました。現在の魔石累計:15,532個」
システムの音声が響いた。魔石3,766個は高級な取引に比べれば莫大な量ではないが、終末世界の序盤では非常に貴重な資産だった。魔石を何十万個も蓄えるまでは、神崎 蓮は決して浪費するつもりはない。ただし、自分と仲間の生存に欠かせない戦闘装備への投資なら、惜しむことはなかった。
神崎 蓮が手をひと振りしただけで、何百キロもの素材を虚空へ回収する光景を見て、五人の亜人の子供たちは完全に度肝を抜かれた!
終末の異変が起こる前の彼らの世界の常識では、これほど巨大な容量を持つ永続的な『空間インベントリ』を個人が所有するなど、古代魔法の伝説に登場するか、神々の手にあるものとしか考えられなかった。昨日、調理器具や携帯コンロを取り出したときは、高級な空間袋で説明できたかもしれない。しかし、今回モンスターの死体を一掃したことで、彼らの常識は完全に打ち砕かれ、根本から塗り替えられた。
幼いリーダーであるクリスは、表情を冷静に保とうとしていたものの、鋭い狼族の瞳の奥では好奇心の嵐が渦巻いていた。生まれつきの暗殺者の本能が、この謎めいた男の正体を突き止めろと告げていた。
「みんな、装備を全部少し貸してくれ。改良してやる」神崎 蓮が言い、子供たちの驚きを破った。
五人の子供たちは疑いもためらいもなく、武器、胸当て、肩当てをすべて外して神崎 蓮に渡した。彼は平らな石に腰を下ろし、野外鍛造用の道具一式と、今しがた回収した素材を取り出した。
キンッ! ジュッ! キンッ!
正確な槌打ちの音と、魔法で素材を組み合わせる火花が、神崎 蓮の巧みな手の下で次々と弾けた。約一時間の急速な加工を経て、装備の強化が完了した。モンスターの部品を組み込んだ装備は、見た目こそ粗く、いかつくなっていたが、耐久性、防御力、追加ダメージは驚くほど跳ね上がっていた!
実戦を重視するゲーマーとして、神崎 蓮は華やかな見た目など気にしなかった。生存率を高め、敵を仕留めやすくする装備こそが、完璧な装備なのだ。
改良された武器と防具を受け取った五人の子供たちは、喜びの声を上げた。アーロンとセレスの鎧はさらに頑丈になったのに、重さは半分ほどに減っていた。マナとアリスの魔法の杖には魔石が埋め込まれ、スキルのクールダウン時間が明らかに短縮されていた。
クリスだけは、作り直された二本の短剣を手にして完全に動きを止めた。
冷たい鋼の刃には、モンスターの棘のある骨が精巧に編み込まれていた。見た目は少し不気味だったが、試しに振ってみると、バランスも切れ味も完璧だった。それだけではない。鋭い暗殺者の本能を持つクリスは、刃に沿って走る細い溝に、神崎 蓮が魔法の猛毒を巧妙に塗り込んだことにすぐ気づいた。突き刺した相手を麻痺させ、継続的に出血させる効果があったのだ!
クリスは顔を上げ、神崎 蓮を見つめた。狼族の少年の瞳には、深い敬意と尽きない好奇心が入り混じっていた。心の中に、思わず一つの問いが浮かんだ。
*「いったい……あなたは何者なんですか?」*
クリスの記憶は、ふいに二日前の暗い光景へとさかのぼった……。
悪臭と湿気に満ち、絶望が漂う地下室。太陽の光はなく、米一粒さえ口にできなかった。四人の亜人の子供たちは鉄檻の中でぐったりと横たわり、空腹に苦しめられて目はうつろになり、焦点さえ失っていた。ただ一人、クリスだけは最後の力を振り絞り、冷たいコンクリートの天井をにらみ続けていた。王子として、そして仲間を率いる者としての本能と責任が、年下の子たちより先に倒れることを許さなかった。
「クリス……ぼ、僕が完全に理性を失う前に……僕を……殺してくれないか……」当時のアーロンが震える声で、途切れ途切れに言った。
それは、長期間の飢餓によって起こる「狂暴獣化」の残酷な兆候だった。アーロンの虎の目は狂ったように赤く染まり、二本の牙が血をにじませながら伸び、身体は絶えず痙攣していた。
「アーロン! だめだ! 落ち着くんだ! 絶対にここから脱出できる……そんな極端なことを考えるな!」クリスは全身が衰弱しきっていたが、それでも一語一語をはっきり発音し、仲間を落ち着かせようとした。アーロンが食料を得られず、理性を失った狂獣へ変わってしまえば、全員が虎族の少年自身の餌食になりかねないことを、クリスはよく理解していた。
隣の檻では、セレス、マナ、アリスの三姉妹が隅に身を寄せ、恐怖に満ちた目でアーロンを見つめていた。彼らは幼なじみとして一緒に育ってきたが、この残酷な状況ではどうすることもできなかった。以前、軽い発作が起きたときには、アリスが魔法『鎮静』を使ってアーロンの精神を落ち着かせた。しかし今は魔力が尽き、地下室の魔素まで枯渇していたため、もう一つの魔法さえ使えなかった。
まさに絶望が頂点に達したその瞬間、錆びた木の扉が爆発するように吹き飛び、がっしりとした背の高い人影が暗い地下室へ足を踏み入れた。
他の子供たちがアーロンの狂乱に恐怖している中、クリスだけはその人物の背中を見上げた。生き残る者としての最も強い決意を胸に、彼は人生最大の決断を下したのだった。見知らぬこの男に、自分たち全員の命と信頼を託すと。
……
夕日に照らされた現在へ戻ると、クリスは毒の二刀を強く握りしめ、口元に珍しく笑みを浮かべた。あの日の賭けは、完全に正しかったのだ。神崎 蓮という男は彼らの命を救っただけではない。終末世界の過酷な運命を自ら切り開ける、本物の戦士へと彼らを日々変えてくれている。




