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あらぎ島戦隊ソーリュージャー  作者: 黄昏 番長


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1/12

巻き込まれて初陣

梅雨の、ある天気の良い日

バス亭に一人旅の女性が降りた。

オレンジ色のカーディガンを纏いハードタイプのキャスターバッグを引きキビキビした若い女性だ。

続いて、辺りを見回しながらもう一人。

スカートにピンクのベストを着てボストンバッグを持った童顔の女性。

なんとなく20歳ぐらいだろうか?

服装や様子から、二人は別々に乗ってきたとわかる。


「あれ?ずっとバスいっしょだったね、目的地もいっしょだなんて」


オレンジのカーディガンの女性は立ち止まり、クルッとピンクのベストの女性の方を向く


「私、穂波、黄山穂波!」

挿絵(By みてみん)

張り上げた声、指先までピンと右手をさしだす。


「えーっと ・・・桃井あかり・・・です」


小さな声でうつむきながら返事した。

気のせいか頬が赤い。穂波は気にせず


「あかりちゃんて言うんだ!よろしくね」


迷うあかりの右手をヒョイと取り、その手を握った。


「強制握手、、、(笑)

私は大学の研究でここに来たんだけど、あかりちゃんは?」


「・・・に呼ばれて・・・」


小さな声で自身で呟くように答える。


「・・・優しい声・・・」


「ん・・・?!何か言った?」

ボボボーンと大きな排気音が聞こた。

マフラーが破れているのだろうか?!

坂の上から赤い軽トラが近づいてくる。

くるくるっと窓を開け、日に焼けた青年が窓から顔を出す


「あらぎ島、見んに来たんか?」


彼の車の荷台に目をやると、長靴やカマが乗っている。

挿絵(By みてみん)


「あらぎ島の人ですか?」


聞いてくる穂波に


「せやねん、あそこで米作っとるんや」


ニッと笑う彼、顔の日焼けが、白い歯を目立たせる。

さっと穂波の後ろに隠れるあかり。


「怖がらんでええで、怪しいのはこいつだけやから」


「何言うてんねん、耕平!」


「霞は怪しさのカタマリやさけな・・・」


笑いながら耕平は 助手席の霞をいじる。


「先日、うちの大学の方から。あらぎ島の会長さんにお願いしてあるのですが・・・棚田の中に行きたいんですけど」


穂波は耕平に要件を話す


「せやせや!なんやら大学から来てくれはるって・・・おっし、お二人様ご案内やな」


「あ、私は・・・」


下向きながら小さな声であかりは静止するが、既に耕平はスマホで会長に電話中。


「女の子が二人、大学から来てくれとるで・・・

 うん分かった、ほな連れてく!」


「案内するようにって、おっと!俺の軽トラは二人乗りやし」


そこへ遠くからエンジン音、濃緑の軽のSUVが止まる。


「耕平の車、どっから見てもわかるわ」


運転席の窓からウィーンと顔出すのは、彼らと同じ歳ぐらいの青年。


「ミド、ちょうどええ、このお二人さん乗せて付いてってくれよ!俺の軽トラ2ドア2シーターやし」


「ええで、ちょうどお前らに差し入れしたろか思て」

挿絵(By みてみん)


後部座席のドアを開け、中からあらぎマートの袋を持ち上げよけた。

そして青年は、快く後部座席の椅子を手で指す


「どうぞ、僕は緑山と言います」


「ありがとうございます」


穂波はあかりの手を引き車内へ乗り込む


「穂波さん、私・・・」


小声で

「部外者は滅多に入れない場所だもん、一緒に行こうよ」


無邪気に微笑む穂波に、抵抗できないあかり。


「さあ!乗せてもらおう」


穂波に背中を押されて席に着く。


「えっ はい・・・」


穂波はバタンとドアを閉め、小走りで反対側の後部座席に回り乗り込んだ。


「自己紹介遅くなって黄山です、こちらは桃井さん」


ハンドルを切りながら


「オッケー覚えました、さっき軽トラ運転してたのは“赤井耕平”、助手席にいたのは“白石霞”、三人共地元の同級生ですねん」


左折し坂道を降ると、さっきの赤い軽トラが停まっていた。濃緑の軽のドアを開け、三人は降りる。

そこにいた初老の男性が


「ここの会長です、お待ちしてましたよ」


「大学から来ました、黄山穂波です」

「お一人と聞いてましたが、こちらの方も大学から?」


「・・・ええっ!桃井あかりちゃんです」


穂波は心の中で少し焦る

…嘘ついちゃったよぉ…

気持ちを切り替えて会長に向き合い、話題を変える


「じゃ、夕方まで拝見させていただきたいのですが」


キャスターバックを持ちあげる。


「どうぞ、苗にはむやみに触れたりしないでくださいね。それと・・・耕平!中ぁ案内したってくれ」


会長の言葉に耕平が走ってくる。


「任しときー!えっと黄山さん、なんでも聞いてや!桃井さんもな」


「ありがとう、頼りにしてるわ」


穂波はパンっと右の平手で耕平の肩を叩く。


「ほな、どっから行く?」


ワクワクした声で、霞が元気よく聞く


「遊びに来たんちゃうど、霞の嫌いな お・べ・ん・き・ょ・う・や」


「エエ〜」


霞のリアクションに女子二人が同時にクスクス笑う


「あかりちゃん、笑ぁーらった」


はっと顔を真っ赤にして俯く。

だがその瞬間、あかりの顔は曇る

何かの違和感を感じたのだ。


その頃、展望台に青いワーゲンバスが勢いよく止まる。

ナンバーは奈良、年式は古い。

降りてきた長身の青年が、後部のドアを開ける。

取り出したのは――600mmの望遠レンズ。カメラに装着し


「この胸騒ぎ、いったい何の違和感や」


長玉(望遠レンズ)をあらぎ島へ向ける。青年はあらぎ島の中心あたりを見ると、陽炎のように黒く歪む空気


「気のせいやない・・・人が中に・・・四人・・・」


どんどん中心に向かっている。


「あかん!そっから先行ったらあかん」挿絵(By みてみん)


大声で叫んでも、この距離では聞こえるわけない、見えないだろうが大きく両手を振った。


「あかん!行くな!」


と叫んだ。


「上、遠くのあの人、何かを感じてる・・・」


展望台の青年を指差すあかりに三人は疑問しかない。


「何を言うてんの?何かって?」


穂波が疑問を投げかける。

その時、耕平達の周囲の空気が半球形に濁りだす。渦を巻きながら、どんどん大きく色濃くなる。光が吸収され、球体内部はまるで夜のようだ。あらぎ島を包み込むぐらいに、大きくなってきている。


一方、展望台の青年は


「あの空間だけおかしい!今の四人を助けやな」


ワーゲンバスのエンジンをかけ、あらぎ島への入り口に向かう。

ハンドルを握り青年は自問自答した。


「助ける?なんで僕が?どないして?とやかく言ってる場合やない!」


あらぎ島の入口、防獣用の柵の前に着き慌ててドアを開け、車から飛び出すワーゲンバスの青年。

前方に、濃緑の車の横で狼狽している人影を見つけた。

ワーゲンバスの青年は


「中の人達は?」


いきなり緑山に尋ねた・・・。


「えっ自分・・・誰なんですか?」


緑山の小柄な目線では、長身の青年が異常に大きく見えた。


「僕は“奏(かなで)”!“青山 奏”、君はあの人たちと知り合いなん?」


「そうなんやけど、あれは何が起きてるん?」


「上から見てたら空間が歪ん出るみたいや、かなり危険やと思う」


奏の真剣な目にミドも応えた。


「僕は“緑山ミド“!”ミド“って呼んでや、奏くん」


「ミド君、僕らで彼等をあそこから連れ戻そ」


「奏くん、何か策はあるの?」


「全く思いつかへんけど、そのまま見捨ごすわけにいかへんやん」


二人は柵の前から、このまま走り出すか?奏が口を開くか、ミドが口を開くか?お互いの出方を待っているような空気になった。


その頃 耕平達四人は闇の球体のなかで、自身の腕で顔の周辺を覆う


「痛い!肌が痛い、小さな小さな針が肌表面に刺さるような感覚や」


耕平が構えながら叫ぶ。


「何や!急に暗なりおって、まだおやつの時間やんけ」


霞が叫んだ


「この圧『闇の核』の『半封印』が弱まったの? だから・・・」


小さな声であかりが呟く。


「え、『闇の核』?『半封印』?って何なの?!・・・」


穂波が両手であかりの肩を揺らす、

遠い目をしたあかりは言葉をそっと放つ。


「私はソーリューを護ってきた者の末裔、ここに五人を導くのが役目」


声は小さいが、口調は落ち着き先程とは違い別人のようだ。


「ソーリュー、ソーリューってか?」


耕平が言葉を続ける。


「中学ん時の先生・・・言うとったやろ、なぁ霞!この辺は昔は海の中でソーリューってのが、ようーけ泳いどったって」


「そんなん習ろたっけ?!」


彼に聞いたのは間違いやったと後悔した。益々風が強くなり肌に刺す痛みが更に増した。先頭にいるのは耕平、すぐ後ろはあかり、穂波、最後尾は霞だ。


「霞、入口まで後退や たしか一段上の木なぁ、一本だけ根腐りしかけとった。倒れてきたら、ケガで済まへん」


「耕平!風めっちゃ風強うて痛うて無理や!」


霞は完全に気持ちが折れている。その時だズズッバキッ!地面が避ける音と木が割れる音がした、まるで雷の音のようだ。


「きゃっ!」


あかりは驚いて耕平の元に駆け寄る。しかし大きな音の源は、耕平とあかりのすぐ頭上だ。


「やばい」


無意識に空に向かい手を伸ばす。 

耕平の右手の掌には、幹の感触が重くのしかかる。ズンかかとまで重さが伝わるが、身体は倒れず持ちこたえ、両脚も踏ん張れている。


「桃井さん、慌てんでええ・・・、後ろにおる黄山さんの方へ行ってくれる?」


後ずさりするように移動するあかり。

穂波と合流したのを確認すると


「せいのっおっ!」


倒れて来た木を、稲に当たらない場所に置く。


「危ない危ない、せっかくここまで苗育ったのによ」


優しい目をして苗を見る。


「何でそんな木ィ持てるんや耕平!なんぼなんでも、それって大木やぞ」


霞が言うのも当然だ。幹の太さは20cm以上あるし、全長は6m超えて枝振りもかなり大きい。

一瞬の中で片手で受け止めるなどは、人間業ではあり得ないことだ


「『光の核』の力・・・」


そう言うとあかりは、力が抜けたように膝が折れる。それを受け止める穂波。その腕の中で、力なく指差す方向は入り口の柵だ。


「他の二人もそこに・・・」


「二人って、ミドしかおらんはず、ん・・・もう一人、影が見える」


入り口付近からワーゲンバスのヘッドライトが放たれている。その逆光の中に二つの人影、こちらを心配そうに見てるようだ。


その時、耕平は両拳を握りしめ叫ぶ


「何や、足から、地面からビンビン伝わるこの邪な気配」


「ザワザワと稲も危険や言うてる、え?私、何でわかるん」


穂波も何かに同調したように言う。霞が声にならない声で


「なんか気持ち悪いモン来たあー」


黒い影、素早く動く中に光るのは赤い目達。複数、いや多数だ!


「シカやっ! 」


ツノをまっすぐ四人に向け、体当たりしてくる構えだ。


「霞、後ろは任せた!ミド!もう一人!みんな固まってた方がええ!こっち来て女子二人囲んでくれ」


駆け寄ってきたミドと奏は、四人に合流する。


「耕平!なんか知らんけど、この事態どないか切り抜けらんと」


ミドの言葉に


「あ・・・あ、当たり前や」


霞が裏返った声で答える。無理に虚勢を張っているっていうのは、古い付き合いのミドと耕平には分かる。


「霞、一緒にやろや!頼りにしてんで!」


霞の肩をポンと叩くミド。


「おう、任しとき」挿絵(By みてみん)


一気に霞の心境は動揺からカラ元気に変わる。さすが幼馴染だ、性格の深いとこまで理解している。力ないあかりと抱きかかえる穂波を四方に囲むように

耕平、ミド、霞、奏 四人で固める。容赦なしに体当たりを始めたシカたちは、赤い鋭い目で取り憑かれたように攻撃をしかけてくる。

寸分の間も無く、次々と別の鹿も加勢してくるのだ。

武器も農具も無い。素手で対抗するしかないのだ。しかし、思いの外クリティカルヒットするキック、あとずさりさせるほどの拳。この力に霞はいきなり調子付いた。


「耕平!後ろは任せい」


そして数分後、息が荒くなった四人は、全てのシカたちを、何とか気絶させることができた。四方を固める四人の足元から、放射状に横たわるシカたち

風は弱くなり、周囲の空間は徐々に明るさを取り戻す。


「やりきった感あるな」


ミドが言う、耕平は


「よおーやったなミド、霞、それとぉ〜・・・!?」


「はぁ、はぁ、奏、青山奏」


両膝に手置いて、前かがみに肩で息する奏が答える。


「奏くんかぁ〜ありがとなぁ〜、めっちゃ助かったよ」


秀でた体力の耕平はいち早く回復し、言葉に余裕がある。


「これで六人・・・揃った・・・ソーリュージャー」


穂波に肩を借りたあかりが、力を振り絞って言う。


「ソーリュージャー?」


他の五人が顔を見合わせる。あかりは力なく展望台を指差し


「なんかあそこにあるん?あかりちゃん」


穂波が声かけても、あかりは力尽きそうになったのか答えることができない。人工の光が展望台の基礎部分で光り点滅する。


「あんなとこ、ランプやら何やあったか?耕平」


指差すミドに


「初めて見たぞ、あんなとこに電気って」


と答える耕平。


「こっち来い言うてるみたい」


奏が言う。


「みんなで行ってみよや? いや、行かなあかん気がするわ」


穂波も無言で頷き、同意見のようだ。展望台の展望スペースは上下二段になっている。


「した・・・へ」


あかりのかすかな声に従い、下の段に降りる六人。あかりは穂波の手を借り、手すりの末端の裏面を人差し指で触る。雑草の中、奥深くにあったのか金属の引き戸が自動で開く。

中はトンネルのような通路だ、誰かに呼ばれるように中に入る。


「扉は今時の指紋認証やったけど、裸電球って・・・時代がバラバラやん」


ミドが見上げて歩きながら小声で言う電球が所々切れて、暗い部分もあるが、下りの階段に引き込まれるように降りて行く。

最後の一段を降りると広い部屋だ。

部屋というには、天井が高く工場のような空間だ。グリースだろうか油の匂いと、切断砥石の粉の匂いが六人を包む。

その一画に白いプレハブがあった。窓越しに見えるその中には、昭和の特撮で見るような機器が奥の壁に並ぶ。昔の真空管のようなものが機器の上に刺さり、オレンジの弱々しい灯火がいくつも見える。機器は古いコンピューターなのだろうか、テープリーダーがついている。だが平成生まれの六人には、何をするものかすらわからない。外部の壁面に設置されたのは温度計と、湿度計。電流計の針だけが微妙に動いている。多分、空調が動いているのだろう。六人は入口ドアの方へ歩く。窓越しに会議テーブル、スチール製書庫、そして製図板が見えた。アルミのドアを開き、中に入った六人を湿気のない清々しい空気が包んだ。中のパイプ椅子に腰掛け、会議テーブルに向かい合う。


「誰もおらんのに空調効かせて、ここってなんやろ」


ミドが言うと、続けて霞も


「何かの施設?」


穂波がグレーの書庫のガラス戸をスライドする。


「おいおい勝手に・・・」


耕平が止めるのも聞かず背表紙に「次世代の皆へ」と書かれたボール紙製のファイルを引き抜いた。ぱらっと開け


「この日付・・・、半世紀近く前になってる」


ページをめくる。手書きの文字が並ぶ。実直な性格が出たような文字だ。


「過去の伝説に『闇の核』が目覚めたとき、海は苦しみ、山は呻き、川は畝ったという。ある時から、六人の元へ毎晩のようにソーリューの声が届く

『地球のために力を貸してほしい』と」


穂波の声に五人は静かに耳を傾けていた。


「我ら六人は悩んだ末 申し出に応えることにした。

科学に時間を捧げ、知恵を捧げ、実生活を犠牲にした。脳内イメージで送られ得られる映像を、手書きして、つなぎ合わせて、我々の知識で具現化する。

一番最初に設計したのは『D(ドラゴン)ジェネレータ』だった。太陽の光エネルギーを『竜力』に変換・増幅する装置だ。この設計図を1年かけて引いた。『完全な光の核』があればより効率が高く『竜力』というエネルギーの充填も早いらしいのだが、我々には『不完全な光の核』が宿されているだけだ。そんな中、最初に図面引き終わってから三年、実物が建造できた。ソーリューから送られてくる中には、突拍子もないイメージも送られて来たこともある。理屈も分からず図面を引き試作すると、自重を軽減しコントロールできる半重力装置だった。それを搭載させ、ジェネレーターを現地に運搬する手段として―ロボを造った。 つまりはジェネレーターの器だ。

空を切り、大地を揺るがし、竜の光を放つことができるという目論見だ。だがいくら毎晩のように仕事を終えた後、六人で集まり作業しても時間が足りない。更に、資金もない。そんな時ソーリューからの技術の一つで“ある合金”のノウハウが欲しいと言う話が来た。百井工業と名乗る、紀南で展開する企業だった。合金の製造権と販売権を大金で買い取り、更には以降の研究の資金援助を申し出てくれた。だがいくらなんでも話がうますぎる。すぐに警戒したが相手から電話連絡がきた。百井の会長と社長らは、二人だけで自らあらぎ島に出向いて、事の詳細を六人の前で話し出した。百井工業の屋号は使っているが、本名は桃井の姓らしい。ソーリューの存在は何代も前より把握していた。だが存在を隠し、人間の強欲から護ることが使命のようだ。ソーリューからのイメージを我々のように受け取り、その技術を使い富を得る。そして『闇の核』が暴走する『来たるべき日』の対抗策ため蓄えていたのだ。彼等は、我々と同じ危機感を持ち合わせていたのだった。そのためにか、紀南の人目には付かぬ洞窟の中に、神殿を築きソーリューを神のように敬っていたのだ。彼らは、海と繋がった洞窟に来訪するソーリューに年に一度だけ対面が許されるまた彼らの直系の血縁者は、一代に一人だけソーリューの声が聞こえるそうだ。先日桃井会長と社長が『神殿の日』にソーリューとの対面時に、我々あらぎ島のメンバーの存在を伝えたそうだ。

あらぎ島のメンバーに資金面、技術面で、協力してやって欲しいとの懇願

があったというのだ。だから、今日のこの話し合いができたのだ。だが『来たるべき日』は待ってくれない

明日かもしれない、一年後かもしれない。より一層、急がねばならないと六人と桃井家の二人は誓い合った。

月曜から、土曜日は本職終えてから 毎日23時までの作業。

日曜日は朝8時から22時頃までが、研究開発および試作、製造の時間だった。『闇の核』の恐ろしさを聞かされ、我々の危機感は相当なものであった」


ページをめくる音が、静かな空調の音しかない部屋に響く。

穂波は続ける。


「しかし、我らには技術と知識が蓄えられていっても、メンバー六人の誰の身体にも“光の核”がない。

正確には、声が聞こえる程度の『不完全な光の核』が宿されているだけだ。そこから発する程度の力では、Dジェネレーターへの『竜力』を充填できる力は無い。ましてや、完全な起動すらもできなかった。

だが。前触れもなくやってきたのは、あの日『闇の核』が暴走した夜だった。あらぎ島の中心に黒い影が現れた。光を吸い込む漆黒の空間だった。憑依された野生の動物たちが、赤い目を光らせ暴れ出した。田を荒らし、稲を守りに入った人々を次々と襲っていった。漆黒の空間はやがてあらぎ島全体を包み、有田川を越えて展望台に来ようという寸前に、私はやっとDジェネレーターを動かす事ができた。太陽光線の蓄積、我々の『不完全な光の核』からの供給で、膨張した空間を数時間かけて収縮させた。できる限りの力を振り絞り、ひざまづき、生命を吸い取られるように六人は倒れていった。

どれぐらい時間が経ったのだろう、私は意識を取り戻した。皆が倒れる中、気づいたのは私一人だけだった

先ほどの空間は野球のボールの大きさぐらいになり、Dジェネレーターから発する光に押されるように、あらぎ島の中心の地中に消えていった。どうやら完全な封印には足りなかったが『闇の核』をあらぎ島に縫い付け、抑え込むことができたのだ。

展望台の地下の基地より、微量の封印エネルギーを長期的に放射するようにセットできた。

この放射という行為は、我々六人の生命を削っているらしい。まだそんな年齢でもないはずが、白髪になり、シワも増え、腰も曲がり、加速度的に老いていった。そして一人、二人、次々と鬼籍に入って行く仲間たち。最後まで残っってしまった私はメッセージを後世に残す為このファイルを記す。

年数を重ねるたび、我々の生命を使った封印の力はどんどん弱まるだろう

『半封印』これだけが唯一の未来を繋ぐための方法だった。

私には何十年後になるか解らないが、完全な『光の核』を持って生まれてくるであろう、次の代のソーリュージャーの力を貸して欲しい。

せめてもの我々からの助力として、改良したDジェネレーターと、その器であるロボを残す。

そして体内に宿す『光の核』から発する竜力を効率よく使えるパワードスーツだ」


「私たちが戦うの?たった六人で?!」


穂波は不安な思いから唇を噛む。


「そんなん無理ちゃうん?!」


そんな霞の言葉を遮るように、穂波は最後のページを開いた。

震えるような筆跡で最終ページに書かれていた文字を、穂波は自分の声でなぞる。


「後継者の六人が現れたとき、ロボは完全起動する。『半封印』は、我々の命をかけた未来への橋渡しだ。

未来の六人の戦士達よ――。

命を賭した我らの想いを、どうか継いでくれ。君達の力で完全封印を・・・」


パタン、穂波はファイルを閉じた。

そしてファイルを両手で抱きしめ、膝から床に崩れ落ちた。目にはいっぱいの涙を浮かべている


「……受け取った・・・先代のみんな……ちゃんと、受け取った・・・」


穂波の言葉の次に、声をつまらせながら言葉を発した奏。


「僕たちが受け継ぐのは、先代の願いなんですね」


目の前の真空間のオレンジ色の光が揺れた。先代の思いが届いたのかと思える瞬間であった。六人は言葉も出せず、心で泣いていた。



外はもうすでに日が暮れ、小雨が降りだしていた。一台のワイパー動かした白い軽バンが、展望台駐車場にやってきた。ヘッドライトは霧のように降る雨を照らす。消灯し停車しエンジンが止まると同時に、白衣を着た男が降りる。黒いフレームのメガネをかけ、風体は若くは見えるが五十代。真っ白な髪だが艶やかで太くハリがある。男は熟知したかのように、カードキーを手すりのセンサーに当て入口を開ける。迷いもなく勢いよくツカツカと奥へ進む。そして長い階段と廊下を抜け、六人のプレハブ部屋へとやってきた。

バンッとドアを開けて


「ウィーっす」


「え?柳生せんせー」


ミド、耕平、霞がパイプ椅子からガタンっと反射的に立ち上がる。他の三人は何が起こったのかわからず、目が点になっている。


「おーお前ら悪ガキ三人、お前らが選ばれとったんやのぉ?中学三年間担任したけど気づかなんだわ」

挿絵(By みてみん)


「他の3人、いや2人は初めましてやな、俺は柳生大輔 地元の中学の理科教師や」


いきなり話しだしたところへミドが


「なんか事情を全部把握してそうですよね・・・

この出てくるタイミングといい、昔の授業中のソーリューの話といい」


一瞬で皆が納得した、昔ソーリューの話をした理科の教師が、この目の前の人であると。

柳生先生は、冷蔵庫を開け六人の前にスポーツドリンクを置きながら


「おーばれたか!ハハッハ、ここの扉が開いたらなセンサー作動して俺のスマホに通知くるし、そこにつけたカメラの映像も、タブレットで見とっ

たし、おっと君!ファイルもう読んだんやったな!俺の親父の書いた記録ファイルやねん、まあこれで説明の手間省けたわ」


え?全員で顔見合せ口々に

 

「先代ソーリュージャー の息子!?」


「せやねん!せやねん!ここの管理とメンテナンス俺がずっとやってたわけなんよ。スマホに『お知らせ』きてやっと来たわと思たらや、教え子三人もおるやん、びっくりやわ」


「軽い、軽すぎる・・・さっきの涙返せ・・・」


穂波は机に両肘をつき、両手に顎を乗せて唇を尖らせた。


「すまんの、背の高い彼、自己紹介頼むわ、むくれた黄色い彼女もな」


「青山奏(かなで)奈良から来ました」


起立して答える奏。


「むくれたは余計です・・・黄山穂波 兵庫生まれやけど大学の加減で、今住んでるんは和歌山市内」


穂波は座ったまま答えた。


「奏くんと、穂波ちゃんやな。ほんでと・・・紀南の桃井の家の」


少し体力を取り戻したのかあかりは


「あかりです、お兄ちゃんわたしに“付きおうて”って言うたの忘れてないよ」


かすれた小さな声で、あかりは自分の言いたいことだけ言った。


「・・・また、誤解を招くような言い回しせんでくれよ〜13年前の言葉の行き違いや、って!ほなら初対面は二人だけかぁ」


柳生先生は返事しながら自分の後頭部を手のひらでパンパン押さえる。


「んっ、耕平、なんか聞きたそうやの?」


嬉しそうに耕平は


「センセ♪ロボって何ですのん?」


柳生先生は話題がずれたことに安堵した。と同時に部屋の隅っこへ歩き出す。


「よっしゃ!興味のあるとこからいこか」


部屋の片隅のオレンジ色の額縁のスイッチには上下の表記の丸いボタンがある。そして上の文字のボタンを押すと

ゴウンゴウン ウィーン

大きな音とともに巨大なシャッターが巻き上がる。中には足場が組まれ、ロボのつま先だろうか銀色の鉄の塊が見え始めた 

シャッターが上がりきると全容が見えた。黄色と銀の胸に赤い頭部。そのてっぺんには、銀色のパラボラアンテナが付いている。

昭和のオモチャ感が炸裂したようなフォルムだ。ゼンマイまわしが背中にあるのでは?と思わせる。


「親父らが作ったソーリューロボや!ずっとメンテしとるから、すぐ動けるで」


「こんな大きいのん運転するんかいな」


霞が声を張り上げる。


「霞、操縦って言えんか?」


秒で耕平にツッコまれた。


「今日は疲れたやろし、ミーティングは明日やろうか思うけどええか?」


柳生先生は、さっきの話に戻らないよう先手を打った。


「それからーっと、穂波ちゃんと、あかりちゃん、今日わは泊まるとこは?」


「民宿の柳家さんってとこです」


続けて、少しづつ体力が回復してきたであろうあかりも


「私もおじいさまがそこに予約を」


柳生先生は笑って


「それ俺の実家!、母親と弟ら夫婦がやっとるんや」


そこへすかさず耕平がツッこむ


「センセは気ままな自由人やもんなハハハ」


「それ、言うなよぉ、よっしゃ、柳家に送るわ」


ミドが


「奏くんは?」


「僕、道の駅で車中泊やねん」


「ほんで、おっきい車」


全員、首を縦に振って納得した。


「みんな今日は疲れたやろ、しっかり夕飯食べて、よう寝て明日は朝10時に展望台の駐車場に集合やで♪〜」


「先生こそ遅刻厳禁やで、俺らは朝早くからあらぎ島の中で仕事するよって」


「ちゃんと早よ来るんで任しとき!お先ぃ〜!」


「ちょっと先生、鍵閉めやな〜!鍵ぃ〜!あー逃げられた」


ミドの声だけが長い階段に、空しく響くのだけだった。



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― 新着の感想 ―
正直、かなり、長くて読むの苦労しましたが、読み出すと世界観に吸い込まれて感動しました。次作楽しみにしています。
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