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9/15

カカシの効果。

 次(つぎ)の日ボクは、庭につくりたてのカカシを置いてみた。

 例(れい)の女の子が来る。あの場所へ。

 

 人間たちは、『カカシ』を立てておく。

 よく見えるようにかな? だからボクも立てておこうって思ったんだ。だけど、どうにも上手(うま)くいかないんだ。

 

 布で作ってあるせいか、ボクのカカシは『立た』なくてどうやっても座(すわ)ってしまう。力なく崩(くず)れるその姿に、ボクは何度(なんど)も、ため息を吐(は)いた。

 

 しかも、背中(せなか)の方に何かないと、座らせるのも難(むずか)しい。

 

『………………』

 こんなはずじゃ、なかったんだけど……。

 

 そう思ったけれど、仕方(しかた)がない。

 ボクは『カカシ』を榎(えのき)の木の幹(みき)に立てかけて、様子を見ることにした。


 どうせいいんだ。

 小鳥たちは飛(と)べるから、空(そら)から来る。

 あの子は飛べないもの。だから歩(ある)いてくる。


『……』

 歩(ある)いて来るなら、むしろ座らせていた方がいいのかもしれない。

 そう思い直(なお)して、そっと二階の窓から覗き見る。




 ──ごおぉおぉぉ……


 

 

 時折(ときおり)、強い風が吹いた。

 

 カカシの耳(みみ)とヒゲが、寒そうにハタハタと踊(おど)った。


 木の葉が雪のように降(ふ)ってきて、寒さに弱(よわ)いボクは、身震(みぶる)いする。


 ボクは毎朝(まいあさ)いつも、外を箒(ほうき)で掃(は)くんだけど、これじゃあ全(まった)く意味(いみ)をなさない。

 あっという間(ま)に落ち葉は降(ふ)り積(つ)もり、辺り一面(いちめん)枯葉(かれは)だらけになった。

 

 ……そんな、めんどくさい秋の午後(ごご)。あの子はやってきた!

 ボクはハッとする。

 

 さっそくボクのカカシの出番(ではん)がやってきた。

 上手くいきますように! ボクはドキドキした。

 

 ワクワクするような、すごく怖いような、何だかとても変な気分(きぶん)だ。

 高鳴(たかな)る胸(むね)を押(お)さえつつ、ボクはそっと二階の窓から下を覗き見た。

 

 

「──!」

 

 女の子はすぐに『ボクのカカシ』に気づいた──!

 そして──

 

 

 

『……っ!』

 そしていきなりボクを振(ふ)り返ったんだ!

 

 ボクは思わず悲鳴(ひめい)を上げて、しゃがみこむ!

 

 

 ……言っとくけど、怖かったんじゃない。驚いたんだ。隠れていたのが見つかりそうになったのは、初めてだった。

 ほら、二階の窓から下を覗いていたんだったら、すぐにしゃがめば、ボクの体は見えなくなるだろ?

 だからボクは、しゃがんだんだ。

 

『……』

 

 しばらくそのまま しゃがんでみて、ふと思い出す。

 

 

 

 ──そういえばボク、『認識されない』んだった……。

 

 

 

『………………こ、こほん。』

 ……少し、決(き)まりが悪(わる)くなって、咳払(せきばら)いをひとつして、ボクはそっと頭を持ち上げた。

 

 認(・)識(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)んだったら、かくれる必要なんてない。

 

 ……だって、しょうがないだろ?

 

 確かに女の子は、飽(あ)きもせず、毎日毎日ここへ来ていたよ?

 ボクも決まって、この窓から下を覗てたけれど、女の子はそれに気がつきもしない。

 家の中を覗くとか、呼(よ)び鈴(りん)を鳴(な)らすとか、そんな事はしなかった。

 

 だから……だから、初めてこっちを振り返った時、ボクは心臓(しんぞう)が止まるかと思ったんだ!

 とても驚いて、……とてもドキドキしてワクワクして。

 

 

 

 ──『ワクワク』して……?

 

 

 『……』

 そんな自分のその感情(かんじょう)に、少し疑問(ぎもん)を持(も)ちながら、ボクは窓の下を見下ろした。

 


 

 窓の下には……けれど、

 カカシだけが、寝転んでいた……。

 

 

 

『……』

 

 女の子の姿はすでに、

 そこにはなかった──。

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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