カカシの効果。
次の日ボクは、庭につくりたてのカカシを置いてみた。
例の女の子が来る。あの場所へ。
人間たちは、『カカシ』を立てておく。
よく見えるようにかな? だからボクも立てておこうって思ったんだ。だけど、どうにも上手くいかないんだ。
布で作ってあるせいか、ボクのカカシは『立た』なくてどうやっても座ってしまう。力なく崩れるその姿に、ボクは何度も、ため息を吐いた。
しかも、背中の方に何かないと、座らせるのも難しい。
『………………』
こんなはずじゃ、なかったんだけど……。
そう思ったけれど、仕方がない。
ボクは『カカシ』を榎の木の幹に立てかけて、様子を見ることにした。
どうせいいんだ。
小鳥たちは飛べるから、空から来る。
あの子は飛べないもの。だから歩いてくる。
『……』
歩いて来るなら、むしろ座らせていた方がいいのかもしれない。
そう思い直して、そっと二階の窓から覗き見る。
──ごおぉおぉぉ……
時折、強い風が吹いた。
カカシの耳とヒゲが、寒そうにハタハタと踊った。
木の葉が雪のように降ってきて、寒さに弱いボクは、身震いする。
ボクは毎朝いつも、外を箒で掃くんだけど、これじゃあ全く意味をなさない。
あっという間に落ち葉は降り積もり、辺り一面枯葉だらけになった。
……そんな、めんどくさい秋の午後。あの子はやってきた!
ボクはハッとする。
さっそくボクのカカシの出番がやってきた。
上手くいきますように! ボクはドキドキした。
ワクワクするような、すごく怖いような、何だかとても変な気分だ。
高鳴る胸を押さえつつ、ボクはそっと二階の窓から下を覗き見た。
「──!」
女の子はすぐに『ボクのカカシ』に気づいた──!
そして──
『……っ!』
そしていきなりボクを振り返ったんだ!
ボクは思わず悲鳴を上げて、しゃがみこむ!
……言っとくけど、怖かったんじゃない。驚いたんだ。隠れていたのが見つかりそうになったのは、初めてだった。
ほら、二階の窓から下を覗いていたんだったら、すぐにしゃがめば、ボクの体は見えなくなるだろ?
だからボクは、しゃがんだんだ。
『……』
しばらくそのまま しゃがんでみて、ふと思い出す。
──そういえばボク、『認識されない』んだった……。
『………………こ、こほん。』
……少し、決まりが悪くなって、咳払いをひとつして、ボクはそっと頭を持ち上げた。
認識されないんだったら、かくれる必要なんてない。
……だって、しょうがないだろ?
確かに女の子は、飽きもせず、毎日毎日ここへ来ていたよ?
ボクも決まって、この窓から下を覗てたけれど、女の子はそれに気がつきもしない。
家の中を覗くとか、呼び鈴を鳴らすとか、そんな事はしなかった。
だから……だから、初めてこっちを振り返った時、ボクは心臓が止まるかと思ったんだ!
とても驚いて、……とてもドキドキしてワクワクして。
──『ワクワク』して……?
『……』
そんな自分のその感情に、少し疑問を持ちながら、ボクは窓の下を見下ろした。
窓の下には……けれど、
カカシだけが、寝転んでいた……。
『……』
女の子の姿はすでに、
そこにはなかった──。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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