なぜだか苦しい、ボクの心。
──ズキン……
『……』
ギュッと何かが、ボクの心を わしづかみにした。
ひどく、心が痛かった。
苦しくて、どうしょうもなくて、ボクは戸惑った。あの時と一緒だ──。
盛誉と玖月善女さまが亡くなってしまったあの日。
ボクがひとりぼっちになってしまった あの悲しい日。
『……』
盛誉が亡くなったあの日あの時、雪がつもってた。
あの状況は嫌でも心に刻み込まれている。
庭に降り積もった木の葉がまるで、あの時の雪みたいだった。
全てが凍りつくように冷たくって、あの時のボクは、どうしたらいいのか分からなかった。
今みたいに心がギュッと縮こまって、ボクを苦しめた。
どんなに悲しんでも、泣き叫んでも、盛誉は かえって来ない。もう、死んでしまったんだ。
そばにいて欲しいとどんなに願っても、盛誉は冷たくなるばかりで、ボクはとても恐ろしかった。
こんなことする人間が、許せなかった。
『……』
ぽてぽて……と階段を降りる。
……あぁ、だけどボクも一緒だ。
ボクも、あの大嫌いな人間たちと同じだ。
……だってボクは、あの女の子を追い払ったんだから。
あの子はここに来たがった。
けれどそれを追い払った。
あの時の盛誉もまた、この世から追い払われた一人だ。
ボクは、窓の外を見た。過ごしやすい季節はとっくに過ぎて、今はもう外にいるのだって寒くてツライはずなのに、あの子はまだここへ来た。
……それほどここが、気に入ったんだろう。
『……』
もともとボクは、この屋敷の住人じゃない。
本当は、別の誰かの物だ。それをボクが勝手に住みついちゃったんだ。
──持ち主は結局、現れなかったけれど……。
確かにボクは、変な力があったよ?
だけど、はじめの何十年かは、力を使ってない。
ひどい戦争があったから、それで元の持ち主は死んでしまったのかも知れないし、高台にあるこの大きなお屋敷は、敵に狙われやすいと、手放したのかもしれない。
現にここは空襲を受け、ひどいありさまになった。住めないほどではなかったけれど……。
けれど、持ち主は帰って来なかった。
……その理由は、分からない。
多分もう、知ることは叶わない。
だから自惚れてたんだ。ここはボクの家だって。
ボクだけの居場所なんだって。
……だけど、そうじゃない。
ここは、誰かべつの人間の居場所……。
『……』
ボクは屋敷の戸を開けた。
ひどくサビ付いていて、扉は悲鳴のような音を立てた。
ギギギ……。
『……』
庭に出たボクは、辺り一面に舞い散った落ち葉を踏みならし、榎の根元へと行く。
カサ、カサ、カサ──
庭に散った木の葉が小気味よい音を立てる。
掃除は大変だけれど、落ち葉は嫌いじゃない。
ボクは木のそばに たどり着くと、カカシを見下ろした。
カカシは、泣きそうな顔でボクを見る。
ボクの心も泣きそうだ。
どうしたらいいのか、分からない。
分からなくなって、ボクは
そのカカシに、抱きついた──。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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