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短いのでこの後、もう1話投稿します。
魔人が平民街を襲撃したその日、イベリアは即決で平民街へ救助に向かった。レイアも魔人と戦えると胸を高ぶらせて歓喜するも、その歓喜はすぐに期待外れに終わってしまう。カルフェール騎士団の騎士とともに、レイアは平民街の住民を避難するよう指示を出された。
「ちっ、なんで私が避難を誘導させなきゃいけねぇんだ。あのくそ喧しい薄毛ジジイから、イベリア様の護衛を言い遣わされているのによ」
レイアとカルディは攻守ともに優秀な戦闘力を買われ、自分の命を二の次にしてでもイベリアを護衛するよう、イベリアの直属部下、ネルディー中将から命じられていた。彼女から信頼され、先代の将軍であるイベリアの父親の代から大将の副官を任されている屈強な騎士だ。
「しょうがないだろう。イベリア様からの指示なのだから」
カルディは、レイアの不満に苦言する。彼はレイアの先輩で、なにかするたびに言動や立ち振る舞いに、とやかく口出ししてくるため、目の上のたんこぶ的存在であった。
隙を窺っては本気で殺す気で斬りかかるも、すべて空振りに終わってあしらわれていた。だてにイベリアの護衛をやっていない。鉄壁な盾をすり抜け、斬り込むことはレイアを持ってしても生易しいものではない。
本来、騎士は自分らの大将を命がけで守るものだ。その大将が単独で魔人に乗り込んでいったのなら全力で止めるか、せめて強引にも同行を申し出るのが常識だろう。
しかし、イベリアはルドルフ王国が誇る大将である。その戦闘力の高さはトップレベルだ。
相手が魔人と強敵であれば、レイアやガルディといった護衛を同行すれば、かえって足を引っ張ってしまう。救助の人員がただでさえ足りていない中、イベリアは自分が扱える兵隊を用いた。
遠見できる魔人の姿と、強大な禍々しい魔力はレイアがいる貴族街近くまで届いていた。彼女の闘争欲を掻き立て、碧の瞳の奥深くから狂気の炎が引火する。
あれほどの大物とは、頻繁に出会えるものではない。
平民街には、先々代のカルフェール伯爵家の当主が提案し、街の地下に空洞を掘らせた。ルドルフ王国に危険が迫った緊急時に、住民を逃すための避難所だ。空洞を掘った後、天井、壁、床を土魔法で硬質なものとし、堅牢な避難所を用意された。日持ちする十分な食料や地下水から水も引いているため、最低でも一ヶ月ほど避難所に籠ることができる。
住民たちを粗方避難所へ収容を完了されると、今まで我慢させられた思いから自然と笑みがこぼれる。その笑みは、お世辞でも可愛いものとは言えないものだった。
「これで、魔人のもとに向かっても文句はないよな」
「いや、街の住民を避難させたが、俺らはイベリア様が魔人を打ち倒すまで、ここで待機だ」
なにを言っているとばかりに、カルディは呆れ顔で述べる。しかし、レイカには聞いておらず、すでに出口へ向かっていた。
「なっ、レイア待て!」
遠ざかるレイアへ呼びかけるカルディの声は、地下の避難所でむなしく響いた。
レイアが魔人のもとに到着して見たものは、股間以外ほぼ全裸の男が、魔人に躍り込む姿だった。内壁ほど大きい巨人の胸元まで達すると、殴りかかろうとしていた。
男の身体は空高くまで跳び、魔人の胸元へと拳激を打ち込んだ。その瞬間、魔人の身体に大きな空洞を刻み、散り散りに弾けた。
驚愕とともにその光景を目にし、レイアの心が疼く。
歩を止めて、棒立ちとなる。思いがけないものを見せられ、瑞々しい総身が震える。恐怖からではない。
レイアの瞳は狂気を混じり、妖しく輝かせている。歓喜の波紋で溺れそうとなり、今にも剣を抜きさって走り出したい衝動に駆られた。
魔人をいともたやすく、そして圧倒的な力で葬る存在が目の前にいる。強者と闘うことが、なによりも好きなレイアの闘争心に、火がつかないわけがない。
「あいつと戦いたい」
後から駆けつけたカルディから説教をもらうも、レイアの頭の中は全裸の男で埋めつくした。




