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『 王者への挑戦です(1) 』

  

  

 カエデは、目の前のドアノブをひねり、ゆっくりとその扉を開いていく。

 そこはルイス宅の二階にある、ゲームルーム。カエデがこれから挑む戦場である。

 英国では、こういう遊戯室がある家は、当たり前とは行かないが、珍しくは無い。

 だがその部屋の様子は、普通のゲームルームとは大きく異なっていた。


 開いた扉からみえる部屋には、ビリヤード台が無い。カードゲーム用テーブルも無い。バーラウンジも無い。

 この部屋には、ゲームルームとして在るべきはずものがなにもないのだ。


 その代わりにあるのは、巨大な液晶モニターに、大量の家庭用ゲーム機。大型のパソコン数台に、ゲームセンターにあるような筐体。

 壁には、スチールラックが並び、攻略本にゲームの箱、クレーゲームの景品などなど、とにかく本と箱が詰め込まれている。

 フローリングの床の上には、コードやらケーブルやらがはいまわり、ヌイグルミがあちらこちらに転がっていた。

 そんなカオスの中、モニター前の空間だけ整頓という概念がある。そこには、座り心地がよさそうなピンク色のクッションと小さなウッドテーブルが静かにたたずんでいる。


 そう、ここはテレビゲームで遊ぶための専用部屋なのだ。

 ただし、カエデのではなく、両親の部屋だけれど。





「いまさらなのですが……汚い部屋なのです」


 散らかりまくった部屋を見て、カエデはため息をつく。

 掃除をしたいところだが、この部屋は両親のものなので、勝手に片付けたら怒られるのである。

 いわく、何がどこにあるのか判らなくなるから、らしい。

 なのに遊ぶのは全然問題ないあたり、カエデは納得できない理不尽さを、感じたりする。



「今は、気にしないのです。

 それよりも、ミノ王を倒すのが先です」


 気を取り直して、モニターとパソコンに電源を入れて立ち上げる。静かにファンが回りだし、ハードディスクが音を立てて、システムが起動していく。

 マシンが動き出すときの高揚感は、いつだって心地いいとカエデは思う。だれも同意してくれないけれど。


 モニターの起動画面を見ながら、テーブルの上に持ってきた500mlのペットボトルを置いて、クッションに座りお尻の位置を調整。左右に少し揺らすとどうにかいい位置に収まった。

 じゃまにならない様に長い髪をシフォンで後ろにまとめ直す。そして頭に大きなサイズのヘッドホン(マイク付き)をかぶる。

 最後に、テーブルの上に配置したキーボードとマルチデバイス(トラックボールみたいな操作デバイス)の上に、軽く両手を置いた。



 目を閉じて、精神を落ち着けるように深呼吸をひとつ。


「準備よし、です」


 目を開き、マルチデバイスを操作して、モニターに表示されたデスクトップ画面からアイコンを選択する。そしてクリック。


 壮大なテーマソングが流れ出す。


 その音楽はいつだってカエデの冒険心に火をつけてくれる。現実からゲームへと意識を切り替えてくれる。

 やがて、デモが終わりタイトルロゴが浮かび上がった。


 〈ELDER TAIL〉


 意匠化されたそのロゴは、どこかドラゴンが広げた翼にも似ていて、見ているだけで鼓動が高まる。

 始まるたびに見ているのに、いまだにその興奮は消えない。


「いきますですよ、リーチェ」


 ロゴが消えた後に現れた、キャラクターセレクトのウィンドウ。そこに並んだ『リーチェ・フルー』のタグを、カーソルがクリックして、今日もリーチェとの冒険ゲームが始まる。









 かつてあった高度な文明『旧世界』が滅び、自然と魔法に満たされた空想の世界。

 冒険者プレイヤーたちに、冒険と戦いを、夢とロマンを与えてくれる仮想の世界。

 精密なCGコンピューターグラフィックで描かれた電子の世界。

 それが、〈エルダーテイル〉の舞台である〈セルデシア〉という名の異世界である。



 そんな異世界の大地を、カエデのが操作するキャラクターである、リーチェが走ってゆく。

 小柄な少女は、ツーテールにした漆黒の髪を風にゆらし、黒曜石のような色の瞳で、広大で荒れ果てた大地をまっすぐに見つめている。

 身に着けているのは、長いスリットが入った白いローブに、手足と胴体を包む青銀色の鎧。

 右手には身長より長い魔法の杖を、左手には紋章が描かれた盾を持っていた。


 一見するとまるで、子供が大人の服を着たような印象を与える。だが、少女にはそれらの装備がまるで最初からその姿であったように似合っていた。

 そう、彼女は戦うものなのだから。



 勇ましく鎧をまとう少女が、石灰岩と短い草におおわれた丘を駆け上っていく。

 やがて頂上にある、大理石で敷きつめられた決闘場が見えてきた。


 四角い舞台の上で待ち構えているのは、3mはありそうな巨大な怪物モンスター

 たくましい筋肉におおわれた巨体の上にあるのは、見下す笑みを浮かべる牛の頭。その両脇から生えた角は、天に向かって鋭く伸びている。

 丸太のような両腕が握っているのは、少女の身体よりも巨大な斧。その刃はギラリと太陽の光をはね返した。


 その姿こそ、カエデが、リーチェが挑み続けている相手。難関クエスト『王者の挑戦』のボスである、牛頭大鬼・闘技王ミノタウロス・チャンピオンなのだ。





「今度こそ、倒してやるのです」


 カエデは、モニターの前で不敵につぶやく。

 部屋には他に誰も居ないし、ボイスチャットの相手もいない。だから返事は、どこからも来ない。

 もちろん、彼女もそれはわかっている。それでも、つい喋ってしまうのだ。

 長い間、〈エルダー・テイル〉を遊んでいる間に付いてしまった残念な彼女の癖の一つだった。



「まずは、強化魔法バフをかけてっと」


 リーチェは、舞台の直前で立ち止まり、各種の自己強化魔法を順番に唱えて、自分の能力を底上げしていく。

 舞台にあがらなければ、このモンスターは反応しない。だから、このようにゆっくりと準備できるのだ。なんともゲームらしい話である。

 だがそれは、王者ゆえの余裕の表れなのかもしれない。


「準備よし、なのです」


 事前にかけれるだけの魔法をかけ終わったリーチェは、小さくジャンプして舞台の上に降り立つ。

 それを合図にしてミノタウロスは、台詞メッセージを喋り始めた。


『よくぞ、ここまで来たな脆弱な生き物よ。その蛮勇だけは褒めてやろう。だが……』


 それは挑戦するたびに、聞くことになる台詞である。もちろん毎回同じだ。

 けして「再び来るとは身の程知らずめ」とか「まだ諦めないのか?」などとは言い出さない。こんな限定的なクエストがそこまで細かく設定されていることなど稀なのだから。


「そのセリフは、聞き飽きましたのです」


 なので、カエデは躊躇無くマルチデバイスを叩いて、メッセージを省略スキップさせる。

 人相手なら怒られる態度だが、ミノタウロスはAIが操作するモンスターだ。特に怒ったりすることはなく、メッセージを言い終えて満足したように頷くと、腰を落として戦いの構えを取った。

 同じく、リーチェも杖と盾を構えて戦闘態勢になる。



〈DUEL〉



 このクエスト専用の演出効果エフェクトである、決闘開始のロゴがモニター中央に現れて、そして燃えるように消えていく。

 アップテンポの背景音(BGM)がヘッドホンから流れ出して、戦いの始まりが盛り上がる。



「参りますっ」


 カエデは、リーチェを一気にミノタウロスの足もとに走りこませるために、マルチデバイスを操作する。

 リーチェはその操作にしがたい、小さな体をさらに前に傾けて低くして、ミノタウロスの足元へ走りこむ。


 ゴウォン


 重い音を残して、リーチェの頭上を巨大な斧が横に通り過ぎた。


「小さくて、助かった……じゃないです。

 小さくても関係ないのです」


 あくまで演出。単に怪物の命中判定に対して、運よく「回避成功」という結果が出ただけ。『姿勢が低かった避けた』わけじゃなく、『避けたから姿勢が低くなった』なのだ。

 そんな不安定な姿勢になっても、バランスを崩したりはしない。なぜなら『バランスを崩す』という判定が、この攻撃によって発生していないのだから。


 ゆえに、白いローブの裾をはためかせて走りながら、よどみなくリーチェは攻撃の動作に入る。

 構えるのは、紫の装飾がされた一本の長い杖。妖術士ソーサラーが使う魔法である紫電の投槍ライトニングジャベリンが込められた魔杖マジックワンドだ。


「それっ」


 閃光

 そして轟音――


 リーチェが振るうマジックワンドから、ミノタウロスへ紫色の雷光がほとばしり、落雷のような音が響き渡る。

 ダメージを与えた効果音(SE)が重なり、攻撃が有効なダメージを与えたこと教えてくれた。


「良いスタートです」


 カエデは、出だしから調子がいいことを感じる。いつもよりデバイス捌きも軽い。



 ミノタウロスは、痛みを訴える鳴声をあげながも、その闘志を萎えさせない。

 先ほどとは反対の手に持った斧を、今度は叩きつけるように振り下ろしてきた。


 鈍く響く音。

 金属がぶつかり合う。


 今度は回避できない。小さな体を守る青銀色の鎧に、巨大な斧があたり派手な火花を散らした。

 表示されているリーチェのHP(ヒットポイント)を示すバーが、一割ほど短くなり、少なくないダメージを受けたことをあらわしていた。

 だが、たかが一割。まだまだリーチェの動きには何の問題も無い。


「効きませんですっ」


 前衛職以外で、唯一金属鎧を装備できるクレリックは、全職業の中でも防御能力は高い方だ。

 前衛職のように、「足止め」したり「引き付ける」ような特技は無いため、いわゆる壁にはなれないが、耐えることだけなら回復魔法や防御強化魔法もあり、他の職業に負けはしない。

 ミノタウロスの巨大な斧の強烈な一撃も、事前にかけた守りの魔法ホーリー・シールドと、身に着けている魔法銀の青鎧ブルーメイル・オブ・ミスリルの装甲が、大幅にダメージを減らしてくれている。

 発生するはずのスタンの状態異常バッドステータスさえ、大地母の聖衣セイクリッド・ローブ・オブ・ガイアが持つ効果で打ち消してしまっているのだ。



「いきますですよ」


 受けるダメージが少ないことを確認して、さらにカエデは、リーチェにマジックワンドを発動させる。

 続けざまに放たれる紫色の光。それは、ミノタウロスの身体を貫き、確実にHPを削っていく。

 だが、ミノタウロスも怯まないい。その巨大な身体は伊達ではなく、少々の攻撃では揺るぎもしないのだ。


 両手に持った斧が、幾度も小さい少女の身体をなぎ払い、打ち払い、叩き潰す。


 重い鎧に身を包んだリーチェには、攻撃を軽やかに避ける事はできない。何度も鋭い火花が散り、そのたびにHPのバーがその長さを減らしていく。


「その程度の傷なんてっ」


 カエデは、メニューウィンドウのショートカットから魔法のアイコンをクリックする。

 リーチェは、呪文を詠唱し、魔法陣を出現させて魔法を発動させた。回復魔法ヒーリングライトの白い光が傷を癒してHPバーを元の長さに戻していく。

 クレリックが、回復職と呼ばれるゆえんは、この治癒能力である。まさに本領発揮というわけだ。

 瞬間的な回復量こそは、同じ回復職の森呪遣い(ドルイド)に劣るけれど、1回の魔法での回復量ならば負けはしない。

 そしてリーチェは、1回の回復魔法でミノタウロスの5回分の攻撃によるダメージを全部回復しきっていた。


「次、いくです」


 それは、お互いに5回攻撃する間に、リーチェは1回だけ自分を回復し、後の4回は攻撃することが出来るという事だ。

 だが、ミノタウロスには、回復手段は無い。リーチェのHPは一定以上は下がることは無く、ミノタウロスのHPは削られ続ける。

 もし、このまま最後まで続くのなら、リーチェは何の問題も無く勝てるだろう。





 小さな少女と巨大な怪物の戦いは、お互いに向き合ったまま正面から殴りあう。



 斧が地面を砕く。

 紫の雷が皮膚を焼く。

 筋肉の塊がぶつかる。

 杖が魔力を失い砕ける。

 挟み込むように左右から刃が襲う。

 白い光が傷を癒す。

 少女の腰より太い足が、蹴りをいれる。

 新しく構えた魔法の杖から、鋭い水の刃が飛び出す。

 牛頭が吼える。

 モニターの前で少女が静かに呟く。



 戦いはさらに進む。リーチェは、マジックワンドから次々に魔法を放ち、確実にミノタウロス・チャンピオンへダメージを与えていった。

 けれど順調だったのはそこまで。


 咆哮。


 山が震えるかのような重低音の波が、カエデを襲う。

 今までの動きがまるでそよ風だったかのように、猛烈な勢いでミノタウロスは巨大な斧を振り回し始めた。


「来ましたのです。こ、ここからが本番ですっ」


 カエデは、慌てることなく、正確なタイミングでマルチデバイスを叩き、減少したHPを魔法で回復させていく。


「こ、今度こそ、耐えてみせるのですっ」


 毎回、ここまでは順調に戦えていた。最初に戦ったときは、あまりの一方的な展開に楽勝だと思っていたほどだ。

 だが、HPが一定値以下になるとミノタウロスの行動パターンが明らかに変わる。

 正面に立ち、ほとんど位置を変えないで攻撃するスタイルから、まるでボクサーのように軽やかに動き、巨大な斧を小枝のように猛スピードで振り回すスタイルに。

 判りやすくいうと攻撃の手数が倍に増えるのだ。リーチェが五回動く間に、10回殴られてしまう。


「あうあうあうあう」


 今まで5回のうち1回で済んでいた回復魔法が、3回に1回になり、2回に1回へと減っていく。


「くう……このままだと」


 やがて、リーチェはその攻撃を凌ぐだけで一杯一杯になり、やがてMPマジックポイントが尽きて、魔法を使うことができなくなり、そのまま倒されてしまう。

 それが今までのパターンだった。この猛スピードで繰り出される攻撃こそが今まで負けていた理由。



 回復を捨てて、攻撃したこともある。だが倒す前に、リーチェのHPが尽きてしまった。

 相手の動きを邪魔する魔法などを使って搦め手で攻めてみたこともある。けれど、高い魔法抵抗を持っていて、その類はまったく効かなかった。

 いっそ、舞台の外から攻撃してみたこともあった。だが、舞台の周囲に結界バリアがあって、そもそも中に攻撃することができなかった。



「つまり、運営はチャンピオンに正面から挑んで倒せって言っているのです」


 正々堂々と挑み倒す。たしかにそれが『王者』というものだ。

 だが、リーチェでは倒せない。正々堂々では、勝てない。

 それでも勝ちたいのならば。


「奇策を使うしかないのです。ずるといった方がいいかもですけれど。

 メガネの人の情報が本当なら、反撃のチャンスがあるはずなのです」


 カエデは、マルチデバイスでカーソルを動かし、キーボードからショートカットを叩く。

 その時が来るまで、リーチェは〈反応起動回復〉と通常の治癒魔法を組み合わせて、斧の連打に耐え忍ぼうとする。



 右からの斧が頭を殴る。

 すばやく回復魔法を唱える。

 左からの斧が足をなぎ払う。

 立ち上がりながら、ワンドを使ってHPをわずかに回復させる。

 左右から、畳み掛けるように斧、斧。そして最後に蹴り。

 〈反応起動回復〉〈小回復〉〈大回復〉。立て続けに魔法陣が輝いて傷を癒していく。



「ううう。ま、まだですか……。このままじゃ……」


 回復がダメージに追いつかない。じりじりとHPバーが減っていく。


 特技や魔法には、〈再使用制限時間リキャスト・タイム〉が設定されている。

 一度使ってから、もう一度使えるようになるための待ち時間があるのだ。そのため、同じ特技や魔法を連続で使うことはできない。

 リーチェは、複数の回復魔法と、マジックワンドの魔法を順番に使うことで、リキャストタイムの待ち時間を稼いでいる。

 だが、ミノタウロスの斧が早すぎて、その時間が間に合わないのだ。次々に魔法が待機状態になってしまい、使える回復魔法が無くなっていく。

 また連続して魔法を使っているため急激にMPも消費してしまい、残り少なくなっていった。



「これが最後のチャンスなのに……」


 ミノタウロス・チャンピオンは、いわゆるボスモンスターにあたる。そして、戦うためには『王者への挑戦』というクエストをクリアしなければならない。

 だが、チャンピオンに負けると「強くなって出直すが良い」というメッセージが流れ、一週間が経過しなければ『王者への挑戦』を受けることができなくなってしまうのだ。

 つまり今回負けると、三日後には――日本へ行くのには――間に合わない。



「最後だからこそ……」



 マルチデバイスを握り締める手にぎゅっと強く力が入る。

 たかがゲームである。

 ミノタウロスを倒せないと悪いことがおきる、などという事は無い。

 日本にいる仲間たちに、会えなくなるわけでもない。

 まして、死んだりはしない。

 そう、たかがゲーム。三ヶ月の間、続けてきたクエストが失敗に終わる。


 それだけだ。



 でも。

 それでも。



「ここで、負けたら悔しいのです」


 勝ち目はある。まだ諦める必要はない。

 だがそのためにはチャンスを待つ必要がある。その時が来るまで耐えなければならない。

 ならないのだが、今までチャンスが来るときまでリーチェが立っていたことは無かった。


「……っ。違うのですよ、ボク。

 今までは、今まで、です。

 今日は、今日なのですよっ」


 今日は違う。モミジとも約束をした。今までダメだったからと言って、今回もダメな理由は無い。


 カエデは、必死にキーとデバイスを操作する。

 リーチェはプレイヤーの操作に応じて、バランス良く魔法を唱え、HPを回復していく。

 まだ、倒れない。リーチェは、必死に踏ん張り続けている。


 けれどMPのバーは、0に近づいていく。


「リーチェ、もうちょっとなのです。お願いです、頑張ってですよ……」



 パリン


 澄んだ割れる効果音が鳴り響く。



 事前にかけていた防御強化の魔法が消えた音だ。


「効果時間、切れ……!?」


 カエデの痛恨のミスだ。回復に集中しすぎて、バフ魔法の持続時間を失念していた。

 守りの魔法の輝きが、リーチェの身体から消えていく。

 もう、王者の猛攻から守ってはくれない。


「リーチェっ!」


 カエデは、モニターの向こうのもう一人の自分に向かって思わず叫ぶ。

 ミノタウロスの咆哮が、ヘッドホンから大音量で響き、その声を掻き消した。

  

  

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