SCP-049 ペスト医師(Plague Doctor)
オブジェクトクラス:Euclid
SCP-049は人型で身長は約1.9mあり、中世のペスト医師の格好をしている。厚手のローブと手袋、くちばし型のセラミックマスクを着用しているように見えるが、実際にはこれらの衣類はSCP-049の肉体から生成されているよう。ローブと手袋は皮膚と、マスクは骨と同じ成分である。人型部分との区別が出来ないにも関わらず、X線検査によると内部に人型の骨格構造がみられる。
※そもそもペストとかペスト医師って?
ペストとは、古来より複数回の世界的大流行が発生した感染症。14世紀に起こった大流行では、世界人口の22%が死亡したと言われている。ペスト医師は蝋を引いたガウン、つば広帽子、マスク、木の杖を持つという独特な格好をする者もいた。マスクが特徴的で、17世紀頃には悪性の空気により感染すると考えられていたために大量の香辛料などを先端に詰めたくちばし状のものであった。
(SCP-049はマスクの先端に何かを詰めてはいないのだろう、多分)
通常は標準安全人型収容セルに収容されるが、移動する際はクラスⅢ人型制限ハーネス(施錠した首枷と拡張拘束具を含む)の中に固定し、2人以上の武装警備員によって監視される。
SCP-049は様々な言語を話すことができ、英語と中世フランス語を好む。本人曰く、15世紀のフランス出身。基本的に財団職員に対して情に厚く協力的である。しかし、あるものに直面すると態度が急変、苛立ち攻撃的になる。
それはSCP-049自身が「悪疫(Pestilence)」と呼ぶものである。SCP-049は悪疫に大きな関心があるようだが、財団研究員は現在までその正体を知ることは出来ていない。
攻撃的になったSCP-049は、ラベンダーの精油を散布すると鎮静化、ほぼ抵抗せずに再収容に応じる。
SCP-049は、悪疫に冒されていると判断した人に対して拘束が必要になるほど敵対的になる。もし鎮静化させなかったら、SCP-049は例外なく悪疫に侵された人を殺そうとする。
SCP-049は不明な原理により、直接皮膚接触した全ての生命体の生物学的機能を停止させることができる。つまり、触っただけで即死する。
SCP-049自身は対象を殺害した際に落胆や後悔する。そして、その殺害行為が悪疫に対する治療にならなかったようである。
その後SCP-049は、自身が肌身離さず持ち歩いている黒い医療用バッグの中から様々な道具を出し、死体に手術を行おうとする。バッグより大きな道具を出すこともあり、バッグの中は外観よりも異常に広いと思われる。
SCP-049が死体に施した手術により、しばしばSCP-049-2と呼ばれる異常存在が生み出される。
SCP-049-2は生存していた際の記憶や精神機能を持っておらず、基本的な運動能力や応答のみが可能。ほとんどは活動しないが、SCP-049による命令を受けた場合は攻撃的になることもある。SCP-049は、SCP-049-2のことを治療されたと認識するが、通常の生理機能とは全く違う仕組みで活動している。
つまり、SCP-049は自身が殺してしまった対象を治療し、ゾンビとして復活させるということ。
報告書ではこの後に補遺としていくつかのインタビュー記録が記載されている。ただし、長い。引用しようものなら物凄い文字数になってしまう。
そのため、ここではさっくりとした概要だけにする。
補遺1: SCP-049の発見時
フランスでの連続失踪事件により存在が発覚。
SCP-049は自ら進んで管理下に。
悪疫について語るが、腺ペストについては知らないと述べる。そしてSCP-049-2は効果的な治療ではあるが完璧ではなく、研究するための設備をくれと要求。
財団が「実験被検体」の提供を許可すると、好意的な態度になった。
補遺2: SCP-049に対しては「実験被検体」として哺乳類の死体などが提供される。そして
SCP-049はほとんどの時間、それらの研究や手術を行っている。
Dクラス職員:胸部に口、多数の手足を持つ状態で蘇生。
ヤギ:蘇生に成功。しかし、獣医師としては初歩的な技術しか持っていないと述べる。
オランウータン:数回の蘇生に成功したが結果に満足はしなかったようで、再度手術を行う。その後5回も蘇生に失敗したのち、救済への障害の存在を認識できたと述べる。
ウシ:頭部が逆転、四肢が再配列された状態で蘇生。手術には四体液(中世の西洋医学では人間の体液は血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4つからなり、調和が崩れると病気になるという四体液説が唱えられていた)が用いられた。
被検体に関しては、人体に近い方がより好みのよう。
オランウータンってもしかしてブライト博士の残骸じゃ…いや、違うよね。うん、きっと違う…はず。
補遺3: SCP-049が、今までのインタビューにおいて質問者をしていたDr.ハムを攻撃、殺害。その後SCP-049-2に改造済の状態で発見された。
SCP-049はDr.ハムの悪疫を治療したと主張。
補遺4:Dr.ハムを殺害した事件に関する最後のインタビュー。
同胞の医師の死には罪の意識を感じるが、悪疫には迅速に、躊躇なく対処しなければならない。そして死体からの情報は全て収集したため、今後は生きながらにして病気に苦しむ人を世話したいと述べる。
これらのインタビューには実際の音声記録が存在し、SCP-049の生声を聞くことができる。イケボなのでぜひ聞いてみて欲しい(笑)
インタビューの最後、「おおドクター、それはどうかな。(Oh doctor, I wouldn't be so sure.)」というセリフはTale記事へのリンクとなっている。財団職員が全く理解できなかった悪疫という存在。本当にあるの?無いんじゃない?と思われていた。しかし、本当に存在していたら…財団職員も含めた人類が悪疫に感染!荒廃した世界に残されたSCP達のお話。
SCP-049の話す悪疫。ペストではない様なのだが一体どのようなものなのか?ゾンビ化が治療とは?分かるようで分からない、そこはかとない不気味さが人気の秘密なのかも。
そんなことより、やっぱりペストマスクってカッコイイよね!今年のハロウィンの仮装はペスト医師一択!(これで締めていいのだろうか…)
「SCP-049」 Gabriel Jade氏作
http://www.scp-wiki.net/scp-049
「Going Home」 Gabriel Jade氏作
http://www.scp-wiki.net/going-home
次回紹介するSCPは、フランス支部から。
ゲームの世界に転生!?みたいなお話が流行っている今日この頃。主人公ならまだしも村人Aみたいなモブキャラになったら…?
フランス支部にはオブジェクトクラスの他に「脅威レベル」というものが設定されている。それについても次回。