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俺。出番なし

完全不定期更新です

*オスクラ視点*


 それは、突然のことだった。


「な、なんだ! 男の様子が!」


 隣で死にかけていたフウトの体が震えだした。

 今までグッタリしていただけの体が小刻みに震え、徐々に起き上がろうと動き始めている。

 兵士達はそれを見ているだけしかできていない。



(まさか、脈動が深層に打ち勝つのか!?)



 神多夢同士の戦闘の場合、いち早く相手の十字架を知るのが勝利へと繋がる。

 そもそも十字架は本人の望みを描いたものだ。

 それが結果的に『脈動』か『深層』というカテゴリー分けされ、それを本人が信じることで何方かに傾くというだけの話で、元を辿れば同じ物だ。



 だが深層は脈動にとって天敵のような存在だ。

 脈動は速く動くことしかできないが、深層は殆んどなんでも出来てしまう。

 昔会った奴は何もないところから武器を作り出し、射出していた。

 それほど深層という奴らは相手にするのは分が悪い。




 だからこそ脈動主体である自分の負けは必然で、死ぬことも受け容れていた。


 ただ、それは事実を知っているからだ。



 今目の前で脈動を使おうとしている男は何も知らない(・・・・・・)

 ということは、負けるという結果が見えていない。

 無知は恐ろしいとは良く言ったもので、この男はまさにその体現と言える者だった。




 思わず大声で忠告しよと口を開く。


「……………っ!?」


 だが唐突に奴の深層が発動し、私の声は喉元で冷え固められる。

 今更になってなんのつもりだと思ったがそうこうしている間にも脈動が完成しようとしていた。


 いくら肉弾戦特化の脈動でもこう大勢の人間に剣を向けられれば、相手が無自覚者(ノーレディ)でも分が悪い。

 だから、まだ生きる見込みを信じてジッとしていればいいものを……



(この馬鹿が……)


 ドクン!


 一際大きく跳ね上がると、フウトの震えが止まる。

 一同がホッとする中で、私と、おそらく奴だけがソレを知っていた。





 ッダン!


 フウトの腕が、地面を掴んだ。

 どよめきが起きる中で、さらにもう一本の腕が持ち上がり



 ッバン!


 両腕が、地面を完全に掴んだ。

 すると金属の擦れ合う音。

 おそらく私を捕まえていた兵士の誰かが剣を抜いたのだろう。

 そして、地面を蹴る音が聞こえた。



「やっ、やあああああああああああ!」


 声の高さを考えると、まだ新米か、今日が初任務だったのだろう。

 上官の命令も待たずただ神多夢という存在に恐怖して、それを排除するために動き出したのだろう。


 兵士が振りかぶり、まだ起き上がっていないフウトへ剣を振り下ろす!








 ガイィン!


 その音に、誰もが目を疑った。

 音の発生源はーーーフウトの手だ。


 フウトが振り下ろされた剣を、片手で受け止めていたのだ。

 受け止めた手は怪我一つなくしっかりと受け止められている。



(……硬化系の脈動?)


 考えてみたが、まだ分からない。

 だが確かに分かることは、アレは硬化ではない。


 すると、フウトが剣を掴んだ。

 そこから血は流れず兵士は必死に抜こうとするが抜けないようで、ひたすら踠いている。



「このっ、化け物! 手を退けろ!」


 その言葉にフウトの体が一瞬震えると


 バキャッ!

「ひっ、ひいいいいいいいいいい!!」



 掴んだ剣を、そのまま折ったのだ。

 そしてフウトはまだ止まらない。




 手のひらから、黒い大剣が生まれる。

 それは太陽の光を反射することなく飲み込む漆黒の剣。


 それをフウトは軽く振るった。





 シュン。


 殆んど音は無かった。

 悲鳴もない。

 ただフウトが振るった先にいた兵士が、綺麗に真っ二つになっていた。

 そして、後ろの方で雲が割れていた。



「う、うああああああああああああああああああああああ!!」


 兵士の誰かが叫んだ。




 それが、虐殺開始の合図となった。

やってみたかった「○○視点」をやってみました

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