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変転

完全不定期更新です

 攻撃を開始してからすでに2分は経過している。神多夢部隊相手にたった4人でここまで戦えていることにスフィーダは少々驚きを隠せないでいた。

 それでも、いくら倒しても元通り(・・・)になる先鋭たちに対し徐々に押されていっているのが目に見える。

 しかし油断は禁物だ。なにせ今戦っているのはアバントリア含め3つの街を血の海に染めたシュナイデンと魔女のオスクラなのだ。時間を巻き戻せるとはいえ油断できる相手ではない。現に満身創痍であるシュナイデン1人すら捕獲できていない有様だ。


 スフィーダが思考に耽っていると、轟音と共にまるで爆発したかのように人が吹き飛んだ。

 目を凝らしてよく見てみるとその中心に立っていたのはシュナイデンでもオスクラでもなく、あのフウトだった。


「………」


 気付くとスフィーダは顔を苦しいものに変えていた。

 戦場のど真ん中で仲間を引き連れ戦うフウトの姿は、捜索を開始する際に調べたどんな情報ともかけ離れているものだったからだ。



 ユアン・オールグレン。

 とある片田舎を収めるオールグレン家の次男として生を受けた彼はこれといった特徴のない平凡な少年だった。妹を眼の前で失ってからは剣術に精を出したらしいがそちらの才能は一切なく、基本の型を覚えるだけで精一杯だったようである。しかし成人後の検査により神多夢であることが判明し、神多夢が集うエテンレケイス学院に入学。その際偶然居合わせたフィオレ姫と意気投合、友人関係に至る。

 その後フィオレ姫の後押しなどもあり学生をまとめる役員「クリンゲル」に所属し成果を上げる。だが学院入学後も剣術の腕は上がらず肝心の神多夢も“深層”ということ以外判明せず肩身の狭い生き方を強いられる。そんな彼は学院始まって以来の恥晒しとして全校生徒に知れ渡っていたようだ。



 ――そう、彼は学院きっての最弱生なのだ。


 ならば目の前で先鋭たちに圧倒している彼は何なのだろうか。

 人違いなのではという考えも過ぎったが、純白の剣を自在に使いこなしていることと煌めく最新型の鎧に彫り込まれた王家の紋章。間違いなくフィオレ姫から与えられた世界でただ1人しか使用できない武具達だ。

 彼が剣を振ると辺りにいた人々は玩具のように軽々しく飛ばされていく。その戦闘能力は深層とはかけ離れてているにも関わらず、度々形を変える漆黒の武器が深層らしい動きを見せる。

 必死に剣を振り続ける彼はフィオレ姫が嬉々として話していた姿とは似て非なるものだ。

 知らず内にスフィーダは喉を鳴らした。


 初めて戦いぶりを見た武器屋の地下でも情報にない動きをしていた。その後のシュナイデン戦、彼に危険が迫れば蔭から助けようとしていたがそんなもの必要ないほどの力差で、こちらから動けばかえって邪魔になってしまうほどのものだった。

 そして今、その力は迎えに来たはずの自分達に向けられていることに言い知れぬ恐怖が湧き上がり、一つ身震いをした。


 なぜ彼がフウトなどと呼ばれているのか自称しているのかはこの際どうでもいい。早く彼を中央で待つフィオレ姫の下まで届け、二度と顔を合わさないようにしたい。

 そこまで考えていた時、包囲から抜けてきた若者がスフィーダの方に駆けてくる。


「ヘラウス様!」

「ん、どうしました?」


 若者が目の前で立ち止まり敬礼する。


「現在ヘラウス様の神多夢のおかげで少しずつではありますが有利になりつつあります。しかし多くの者が死を経験したため全体的に精神が疲弊してきています。現状が続くようであれば、こちらの包囲網が崩れ突破される恐れがあります」

「……もうそんなに経っていましたか」


 スフィーダの神多夢は時戻しである。

 これを使うことで戦闘不能になった者も元通りになり即座に戦えるようになる。たとえ死んでいたとしても45秒さえ経たなければ例外なく代償なく蘇らせることができる。つまり彼女さえ無事ならばどれだけ死のうが生前の状態に戻れるのだ。

 だがデメリットもある。

 それは時が戻り生前の状態に戻ったとしてもそれまでの記憶はリセットされることはないということだ。死んだ時の恐怖や痛覚を持ったまま無傷の身体に戻るというのは、脳が混乱し精神が擦り減る非常に危険なもので慣れることは決してない。


 いくら魔女がいるからといって限界に達するまでの被害は出ないだろうと高をくくっていた。

 しかしフウトという予期していなかった要因により、戦況はどちらに転んでも不思議がないほど均衡している。

 いつも以上に神多夢を発動していたスフィーダは自身も使用限界が近づいてきていることを悟っていた。これ以上続ければ限界に達するのは彼らより自分の方だと理解し、作戦を変えることにした。


「それではユアン様とルーズに割いている部隊の3割をシュナイデンと戦闘中の部隊に合流させてください」

「しかし……それではすぐに押し返されてしまいます」

「いえ、それは決してないはずですよ。ふふ」


 これ以上話すことはないというようにスフィーダは顔を背ける。若者は何か言いたそうにしていたが態度を変えないスフィーダを見て諦めたのか敬礼をして持ち場へと戻っていった。

 後ろ姿を見届けた後、視線をフウトの元へと戻す。

 いまだ襲い来る脅威を振り払い続ける彼にスフィーダは先ほどとは違って期待の眼差しを向けていた。


「期待通りに動くことを、期待していますよ」


 そう呟くと腰から銃と剣を抜き、戦場の方へと静かに歩き始めた。

途中投げてたフラグを振り切って続きます

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