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俺。事件は現場で起きているんだ!

完全不定期更新です

「売り切れェ!?」


 とある道の交差点を右に曲がり二本目の路地を左に曲がってさらに右左右右。

 そこにはこじゃれた宿があった。名前は『ガンタム』どこかで聞いた名前だけど気にしない。

 問題は名前じゃなくて宿の裏手にある規定より小さな地下入り口なのだ。

 三丁目のパクストン・ホステルさんの情報によると、というよりも拷問街で友達を拷問され殺されて命からがら逃げるも助けたヒロインが自殺しそうな名前だけど、それも気にしない。

 改めてパクストンさんの情報によると地下入り口の向こうから夜な夜な獣の鳴くような声が聞こえるらしい。

 恐らく飼い主が捨てた獰猛生物だろう気にすることもないが気になるので入ってみる。

 うわ、えらいことになってる。


 そんな場所に神多夢のアイテム所があった。

 正直面倒なのでホーだけ取って逃げようとしたが、入り口から出た瞬間から追いかけてきて斧を片手にプレイヤーキラーと化すアイテム屋になるだろうからやめておく。

 違う話だが俺は何度も挑戦したが無事階段まで辿り着いたことは少ない。


 さて、そんなことより今の状況を説明しよう。

 まず簡単なことにホーが完売状態。店長も嬉しかろうかと思ったが顔色は良くない。

 なぜならここ最近起きている惨殺事件のせいで色んな人がこの街から退避しているらしい。

 もちろんその中には神多夢もいる。

 彼等は街を出るときホーが必要だ。そして神多夢が嫌いだと言う人に出会ってしまった時用に多く購入しているそうだ。

 よかったなアンちゃん。これで食い意地さえ張らなければ生きていけるぜ、あと俺1枚も持ってないから同情するならホーをくれ。


 しかし皆が逃げる中でこの神多夢店長も例外でないことを言っておかなければならないだろう。

 なんせ無自覚者からすればただの惨殺事件でも、神多夢から見れば同胞が無自覚者を殺しまわっている事件に見えるそうだ。

 俺は事件に遭遇してないのでわからないが神多夢同士ならその残滓が見えるらしい。

 街に住む神多夢の馬鹿が夜な夜な人を殺しているとなれば同じ存在である自分達も裁かれるかもしれないし誰が敵か分からない状態なので「ここにいるのは危険だ俺は自分の部屋に戻らせてもらうぜ!」と全員が考えたらしい。

 で、すぐにでも街から出て行きたいと言う店長は夜逃げの準備を済ませており俺達が来た時には自分の分が最後だったらしく売ることはできないとのことだ。


「すまねえ。俺もしょっぴかれるのは嫌だからな」


 そう謝る男は身体中刺青だらけで顔まで入っている。

 聞くには掌握者の中でも珍しい精霊掌握者というやつだそうだ。記憶の中を探ると確かにベジタボゥが調べているのがあった。

 精霊掌握者はこの世の流れに敏感でいわいる超感覚の持ち主だ。動物掌握者が臭いや音に反応するのに対してこっちは空気や水の流れに鋭敏である程度操ることも可能だそうだ。

 凄いぞ魔法使いのようだ。ムラデインとか使えるなら是非パーティを組みたい。

 ちなみに動物掌握者は頭にケモミミお尻周りに尻尾が生えている。一見すると獣人族とのハーフのような姿だが違うそうな。



 しかし困ったことになったぞ。

 スフィーダがいれば俺はパスできそうだがオスクラとルーズは無理だろうし俺がやらかしたせいでちょっと警備強化しちゃいましたテヘッ。的な状態ならまず終わりだ。

 どうにかしたいがどうにかできるようなカードも持ち合わせていないし……ほんと謝るくらいならホーをくれ。


「なあ頼む、なんでもいいからホーをくれよ。なんだったらホーだけでも良い。ホーをくれたら文句言わないから」

「すまないな、俺も早くこの街から出たいんだ」


 ああダメだ聞く耳持たないというのはこの事だ。

 俺が必死に直立土下座をしているというのになんたることかっ、人間不信になってダークネスに身を堕としホシエソを召喚してその心臓を喰らってやる!

 すると今まで黙っていたオスクラが前に出た。


「なら簡単じゃない。その事件さえどうにかなればアンタは街から出なくて済むのよね」

「あ? ま、まあ確かにそうだが……」


 オスクラの顔が嫌なものに歪む。

 そんな顔されたら嫌でも考えが分かってしまう。止めてくれ、そんな危ないことは小説の中だけで十分だ。

 止めようと一歩踏み出すがすでに遅かった。



「その惨殺事件とやらを私達で解決してみせる。その暁にはちゃんとホーを売りなさいよ?」


 得意げに言うオスクラはどこか輝いて見えた。



……



「わけねえだろ!」


 道を歩きながら思わず叫ぶ。

 あの後、店長は出て行く日数を少し空けてもらい俺達の滞在期間中までは待ってもらうことになった。

 だけど俺の思惑は別にあった。


「お前、本当に犯人捕まえきれると思ってるのかよ」


 前を歩くオスクラへ視線を移す。

 いつもの無表情に戻っているがどこか興奮を抑えきれないようにも見える。

 ルーズはというと、オスクラと同様の意見だったらしく常に周りを見渡していて不審者にしか見えない。ルーズが歩く道の先がモーゼ宜しく裂けていくのは気のせいではなかろう。

 意気揚々と歩くオスクラはどこか自信ありげな顔で周囲を見渡しながら歩いているた。


「私の深層を忘れた? 事件現場さえ見ればある程度糸口は見つかるはずよ」

「まあ、確かにお前の深層は刑事ドラマに出れば一瞬で人気失くしそうなやつだけどさ……」


 思い出すのはベジタボゥを倒した後に話し合ったときのこと。

 オスクラの神多夢が二つあることは説明されたし脈動の方は思ったとおり『手にした物を伸ばす』能力であった。だが問題なのは深層の方で、こちらは『真実を見通す』能力らしい。

 と言っても、見ただけですべてを知ることは難しいらしくある程度の糸口やそれが何であるかが分かる程度との事。

 それでも相手の十字架を看破したり毒が含まれているかどうかなども分かるらしく、刑事ドラマに出ようものなら一気に人気ガタ落ちしそうなチート能力だ。

 刑事が喉から手が出るほど欲しそうなソレを使用し、現在街を散策中だ。オスクラの仕事としては警察犬のようなもので大変可愛らしいが本人は至って真剣なので口に出すことはない。


 俺はというと、殆んど周囲を見渡して不審な動きをしている奴はいないか確認程度で留まっている。

 そもそも俺の十字架は犯人探しに向いていない。それでもベジタボゥの十字架を使えば犯人を捕まえるのに然程苦労しないだろう。

 まあ経験も受け継がれているものの、俺の体で使用したことがないためどれだけの負担が来るかはわからない。しかも成功するするかどうかも分からないものだ。

 なので俺は唯一の長所である長身を駆使し辺りを見回すのと、犯人逮捕の決定打というわけだ。


 それでも成果のない中歩き続けるというのはかなり疲れるもので、途中途中で食べ物を買いながら行っているので、どこからどう見ても観光客にしか見えていないだろう。

 うーん、しかしこう改めて見てみるとますます惜しい。

 2人共たいぶ可愛いのだからもう少し素を抑えれば、いくらでも彼氏作り放題でとっかえひっかえできそうなものを……いやルーズの場合、間接キスとも呼べないお粗末な物でも赤面させるなら無理そうか。オスクラなら自分の魅力には良く知っているだろうし、かなり良い線いけると思うのだがな。

 え? 俺? 永久凍土の童貞ですが? なにか?


「しっかし、こうやって歩くだけで犯人と遭遇できるのか? それに、ここって表通りだろ。事件が起きるなら人にバレない裏通りじゃないのか?」


 我慢ができなくなりオスクラにそう切り出す。

 しかし返ってきたのは失笑と卑しむ目線だ。


「犯行は昼夜問わずどこでも起きてる。その殆んどが表通りなのよ。場所はまちまちだから歩いて探すしかないし、高所から見通すのも良いけどそれだと目立ち過ぎる上に無自覚者達に自分が神多夢だと言い張るようなものだもの。効率は下がるけど、こうして歩き回る方が安全なのよ」


 と、いうとのがオスクラの主張だ。

 俺的には超次元高速機ギラン円盤で珈琲を飲みながら事件が起きるのを待つ方が最も効率的だと思うのだが、言っても世代的に通じないだろうしまず世界が違うなら無理か。いかん、言ってたら無性に観たくなってきた。


「ドルドルドルドル……」

「なにその気持ち悪い歌」

「……俺の故郷で流行ってた曲だよ」

「へー、変なものが人気だったのね。……だからこんな変なのが生まれたのかしら」


 聞こえてるちゅうに。

 ぶつくさ言いながらも歩き回っていると


「ん? 雨か」


 この席亜に来て初めての雨が降り注いでいた。雨とは言えないお粗末なまでに物だが俺にとっては記念すべきものだろうか。

 両手を広げ受け取ってみると、それはぬるっとしていてどこか生暖かく――赤い色をしていた。


「なんだこれ?」


「きゃああああああああああああああっ!」


 悲鳴、どよめき、混乱する人々の奇声。

 どうした物かと視線を元に戻してみると、人混みの向こう、その向こうにソレがいた。


「やっとおでましね」


 笑いを押し殺すオスクラの声。 

 俺達が見たのは、あるはずの頭を失い、それでも立ち歩き続ける男だった。

 男の首からは止め処なく鮮血が勢い欲噴出し、それが雨になっていたようだ。

 普通なら死んでいる。歩くことすらない。それなのに、その男は俺が見た時には数メートルは血を流しながら歩いている。


 だが血が失えば人は死ぬ。

 その男も例外なく数歩歩いたところで前のめりに倒れた。


 騒ぐ観衆。その場から逃げ出す人々。泣き喚く女子供。


 すべての人がこの異常から逃げ出す。

 平和だった表通りは一瞬にし阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 俺だって踵を返したい気持ちで胸がいっぱいになっている。

 ツンと鉄臭い刺激臭が漂い、思わず袖で鼻を隠した。

 胸がムカムカする。

 気持ち悪い、吐き気がする。

 眼を背けたいはずなのに、現実的でないソレは、この世界をゲームか何かだと思い、どこか抜けていた俺を世界という現実に引き戻されたような感覚が襲う。


「……だれがっ、こんな酷い」

「誰って……犯人以外誰がいるのよ」

「っ、早く見に行こう。憲兵が来たら折角の糸口がなくなっちゃう!」


 それだというのに……

 コイツ等の反応は何なんだ?

 もしかすると神多夢という奴等は皆が皆、死体に慣れ、こんなとち狂った状況でもまともに動けるような存在なのか?



 もしそうだとするならば――俺はなんて酷い存在になってしまったんだ。


 俺の気持ちとは裏腹に、逃げ惑う人々を掻き分けオスクラとルーズはし死体に向かって駆けていく。

 逃げたいはずの俺の脚は心臓により前へ前へと押し出される。

 心臓が一鳴るする度に脚は独りでに動き、いつしかソレは、走り出していた。

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