俺。ビールと猫に会う
完全不定期更新です
「おっ、にいちゃん黒く焼けてんねぇ。どこで焼いてきたの。
えっ、ワイハー! 良いっすねぇ!」
日焼けしたような褐色肌のお兄さんを褒めながら購入した鳥の串焼き受け取る。
結構ボリュームもあり食べ応えがありそうだ。
一口食べてみると、タレと油の味が口一杯に広がる。やはりビールが欲しくなるような味はどこでも一緒らしい。
しかし、こういうファンタジーの世界なら肉質が悪いとかタレが無いとかよくある設定だがどうやらここではそんな事はなく、殆んど日本と変わらない。
まず車がある時点で色々諦めていたからダメージは少なかったし、目の前を歩く人種や装束に見たこともない生き物がファンタジーな気分にさせてくれる。
「んぐんぐ……さて次はビールでも探してみるかな」
前衛万能食「山串」の2本目に手を伸ばしながら、街の中央に位置する広場を歩いていく。
なにやらバザーっぽいのが開かれていて屋台がズラリと並んでいた。その中からまた一つ面白そうな店を見つけ小走りで向かっていく。
「ここに置いてるのはビールかな?」
「ん? あぁ、一部ではそう呼ばれてるみてえだが、正式にはセルベッサって言うんだぜ」
「じゃあセルベッサを一つ!」
出てきたのは黄金色の綺麗な飲み物で、白い泡との比率がかなり良かった。
すっきりとした柑橘系の香り、口に含むと麦のしっかりとした甘さが感じられ鼻から抜ける麦の風味が次の一口を誘う。炭酸が軽く全体的に味が強くないのでゴクゴクと飲めてしまうのが良い感じだ。
腹に溜まる感じもなく苦味も少ない分、麦らしさを強く感じられていくらでも飲めそうだ。
「……こりゃ持ち金が全部ビールに変わりそうだ」
山串を食べビールを飲む。
うん、美味い。上品な味がヴァルシュタイナーを思わせる。
途中で美味しそうなパンとホットワインを購入して公園に備え付けられている椅子へ座った。
「しっかし、思ったよりもなかなかにファンタジーだな」
周りを見てみれば猫耳やらエルフ耳やら殆んど獣の人種が多種多様に見える。
服装も鎧だったり旅人風の軽装だったり、トレジャーハンターっぽいのもいる。でもちゃんと普通っぽい人達もいて、ファンタジーと現代の良いトコ取りしたような世界だ。
「おっぱいンぅ、ペラペラソース」
「テングテング、ソラトブテング」
うん。あいつらは無しだな。
そんなファンタジー世界を眺めつつホットワインを口内に流し込む。
会社で一人悲しく飲んだクリスマスワインに似てすっきりとした飲みやすさで、思わず目から鼻水が零れそうだ。
「ん? あれは……」
異世界を眺めていると、思わず目が止まる。
それは容姿が良かったのもあるのだが、纏った雰囲気が周りとは明らかに違う。
(神多夢か……)
直感的にそう感じた。
おそらくだが、こんな風にしてルーズは俺達が神多夢だと知って近づいて来たのだろう。迫害の街に入るのに一人では寂しいし辛いだろうからな。
なら俺のやることも一つだ。
「ナンパっぽいとは思うけど同じ異質同士、声でもかけてみるかな」
両手にパンとホットワインを持った20代が10代を思わせる女の子へと走り寄る様は完全にチャラいお兄さんだ。
いや俺なんだけどさ。
近づいて見ると遠目で見た時とは違った印象を受けた。
整った顔立ちと頭でまとめられた二つの髪が目を惹き、質素ながらも綺麗な服は育ちの良さを思わせる。
だが瞳は虚ろで半目、まるでここではないどこかを見通しているような雰囲気があった。
つまり、話しかけ辛い。
綺麗な女の子に話しかけるだけでも難易度高いのにこれはダメだ。しかも俺は今こそ20代の姿をしているが、不本意ながら中身は30越えたオッサンだ。
なにか……なにか話題はないのか、共通の話題。
例えば、
「え、死ぬ時はショットガンで頭を撃ち抜いて死にたい?
奇遇ですね、俺はドーナツを大量に食べて死にたいです!」
無理がありすぎるか……。
しかし共通の話題となると俺にはアニメゲームしかないぞ。それとも星の戦争の方が人気あるけどブルーボックスについて語り合うか?
立ち止まって考えていると、突然女の子がしゃがんだ。
見てみるとそれは猫だった。
鳴いている猫に女の子は体中をまさぐって何かを探すと、目的の物がなかったのかがっくりと肩を落とす。
「……ごめんね。今は、なにも持っていない。」
綺麗だが特徴的な声だった。
そして共通の話題を手に入れた瞬間でもあった。
俺は思い切って一歩踏み出す。
「あの!」




