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第2話 「歪み」

数日が過ぎた。


あの日の出来事は、夢ではなかった。


何度思い返しても、あの瞬間だけ記憶が曖昧だ。


鉄骨にぶつかるはずだった。


なのに俺は生きている。


「……何だったんだ」


考えても答えは出ない。


結局、事故として処理された。


ガラス床の強度不足。


運が良かった。


それだけだと。


でも、どうしても納得できなかった。


◇


『現在、全国各地で原因不明の異常現象が相次いでいます』


街頭モニターからニュースが流れる。


『突然の発火、凍結、物体の浮遊など、不可解な現象が複数確認されています』


映像が切り替わる。


凍りついた交差点。


黒く焦げた建物。


宙に浮かぶ車。


『また、この現象を悪用したとみられる事件も発生しており、警察は警戒を強めています』


「なんか……怖くなってきたね」


隣を歩く陽菜が、小さく呟いた。


「……そうだな」


あの日くらいから。


世界は、少しずつおかしくなっている気がした。


ドンッ。


肩に衝撃が走る。


「ってぇ……」


振り返ると、二十代くらいの男が睨みつけていた。


「あ?なんか文句あるか?」


「あ……いや、すみません」


反射的に謝る。


男は鼻で笑った。


「根暗そうなツラしてんなぁ!」


その視線が陽菜へ向く。


「おっ」


「こっちはかわいいじゃねぇか」


陽菜は一歩下がる。


「おい、俺と遊びに行こうぜ」


「……行きません」


「は?」


男の表情が変わる。


ゆっくりと人差し指を向けた。


「吹き飛べ」


バンッ!!


風圧が陽菜を襲う。


「きゃあっ!」


陽菜の身体が数メートル吹き飛び、地面へ倒れる。


「陽菜!」


俺は駆け寄ろうとする。


「動くな」


男が笑う。


「次はお前だ」


周囲の人たちは悲鳴を上げて逃げていく。


「こいつ……」


ニュースで見た。


まさか。


「能力者なのか……?」


男は肩を鳴らした。


「だったら何だ?」


「今は力のある奴が好きに生きる時代だ」


「弱い奴は黙ってろ!」


ドン!!


気づけば拳が腹部にめり込み、息が止まる。


「うっ!!」


地面に這いつくばり、うずくまって動けない。


陽菜が苦しそうに身体を起こした。


「落……逃げて………」


「はは!聞いたか?根暗野郎は役立たずだから逃げろってよ!」


男は笑う。


「女と釣り合ってねぇんだよ」


「どうせその女も、お前を見下してんだ」


「そんな……子じゃない」


「助けて、じゃねぇ。」


「逃げて、だ。」


「頼られてもいねぇじゃねぇか。」


「惨めだな。」


俺は何も言い返せなかった。


俯いた視界の端を、男の足がゆっくりと横切っていく。


足音だけが、やけに鮮明に耳へ残った。


男は陽菜の腕を掴む。


「やだっ!」


「じゃあな」


「この女と遊んでくるわ」


「……落!!顔を上げて!前を向いて!」


陽菜の声が突き刺さる


俺は振り返り、男の顔を見上げた


男は口角を吊り上げる。


「その目だ。」


「何もできねぇ奴の目。」


見下すな。


そんな目で。


俺を。


「やめろォ!!」


胸の奥が熱くなる。


何かが暴れる。


手を前へ突き出した。


グッ……


「……あ?」


何も起きない。


男は辺りを見回す。


「何だ?」


俺は息を切らしながら、震える手を男へ向け続ける。


頼む……!


動け……!


何でもいい……!!


「……ぷっ」


男が吹き出した。


「威勢だけは一人前だなぁ!」


「能力者ぶってんじゃねぇよ!」


ドゴッ!!


腹に強烈な蹴りがめり込む。


「がっ……!」


呼吸が止まる。


地面へ崩れ落ちる。


起き上がれない。


「落!」


「……ひ、な……」


男は見下すように笑った。


「てめぇみたいな根暗野郎が能力なんか使えるわけねぇだろ!」


ドゴッ!!


バキッ!!


何度も拳が振り下ろされる。


身体が軋む。


意識が遠のいていく。


「終わりだ。」


男はゆっくりと手を伸ばした。


その手のひらが、俺へ向く。


グッ。

第2話を読んでいただきありがとうございます!

引き続き『自由落下』を楽しんでいただけたら嬉しいです。


xでキャライメージ持てるように画像なども投稿してます!

https://x.com/otiaiam

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― 新着の感想 ―
Xからきました。 2話目まで読ませていただきました。 能力についての記述ですが、現代日本風の世界観で「もし能力が使えたら〜」と話してるので能力者が非日常的な存在なのかな?と思ったのですが、2話目で当…
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