【探偵#14】
俺の名前は煉城練斗。
探偵となんでも屋の違いが判らなくなってきた金花探偵事務所の用心棒。
「みんな気合入ってんなー」
今回俺達が依頼を受けて訪れているのは瀬礼市にある市民ホール、そこで数日後に行われる瀬礼文演劇祭の準備を手伝っていた。
「練斗、よそ見してないで集中して、有事の際はあなたの出番なんだからね」
言葉にクールさを感じるのは我らの事務所の探偵、星都風香。
学園一の成績とルックスを誇る天才美少女、これで運動も得意なのは神様は流石に不平等すぎないかと思ってしまう。
「メリーは演劇の小道具の手伝いに行かせたわ、本人もそっちのほうがいいでしょ」
「まぁあいつらなどこにでも溶け込んでいけるしな」
今回のイベントは年に一度のビックイベント、主催は瀬礼文学園だが近隣の学校も出演したり、宣伝なども一緒に行う合同イベントらしい。
「とにかく俺と風香は会場を回って不審なものがないかを確認、そして会場の設備や地図を戻ったらゴーレムにインプットさせよう」
「その必要はないわ、だってゴーレムはすでに私のポケットのなかにいるもの」
「え?どこに?あの巨体だぞ」
俺の腑抜けた声に答えるようにポケットから自慢げに何かを取り出す。
「これが、金花財閥の財力で開発してもらったミニゴーレム!!」
「星都風香、煉城錬斗、ともにユーザー承認完了。システムの再起動を確認」
そんな機械音とともに現れたのは手のひらサイズのゴーレムだった。
銀色の塗装に近未来的なバイザーのようなものが付いた顔、見慣れているゴーレムをまんま小さくした姿。
「可愛い、何こいつ!」
「どう、これで生徒や関係者しか入れない依頼でもゴーレムを連れてこれる便利な機能」
本体は事務所に残り遠隔操作や自立した行動も可能だという、そんなことより可愛すぎないか。
そんな話をしていた時だった。
演劇部の部長、綾小路が現れる。
「金花探偵事務所の皆さん!お疲れ様です!」
彼はいつも礼儀正しい、まだ俺達なんてふらふらしているだけなのにだ。
「いえ、私達はまだ何もしてませんよ」
「準備したり、劇をするのは演劇部だろ?もっと自分達の活動に自信持ってよ」
そんな俺達の言葉を受けても綾小路は止まらない。
「いえいえ、このイベントに金花探偵事務所がついている、ただそれだけで他校のヤンキーやこのイベントを狙う人達が減っているんですよ!」
「安心してください、どんな依頼も全力で、これが事務所のルールです!」
「そんなルールはないけど、私達が全力でイベントに協力するわ」
そう、このイベントはもちろん瀬礼市を盛り上げるためのイベント、だけど狙いはもう一つある。
この瀬礼市は異界の影響を多く受けている町の一つ。
もともと人間の中でも金持ちが暮らす地域、異界とつながり一度全てがぐちゃぐちゃになった。
異界の影響でさらに富を得た者、失った者、異界からやってきたが困窮している者、や異界災害で家や親を失った者など様々、格差はかなりある。
そんな人達を勇気づけ、異界貴族などの様々な金持ちから金をこのイベントで集めて寄付する。それがこのイベントの意義、瀬礼文学園に通うボンボンの親から金を集めるなんて効率的すぎるしな。
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俺と風香は見回りを終え、演劇の練習を3階席から見ていた。
「これが沙月市の松ヶ丘高校演劇部か、めっちゃ面白い」
俺が一人興味津々になってみている傍ら、われらが探偵は何やら真面目に仕事に取り組んでいた。
「これですべての監視カメラとシステムはゴーレムがハッキングして見れるようになった、もはやここは要塞ね」
自慢げに語る様も絵になる、美少女ってのはずるいな、なんて思っていた。
そんな平和で、高校生の人生で一度しかない青春。
それを台無しにする奴らは、すでに動いていたんだ。
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「ダーリン、そろそろキスしないと愛が足りないよ」
「ハニー、ガキを三人殺したらいっぱい愛し合おう」
奴らは市民ホールが見渡せる雑居ビルから、このイベントの準備を監視していた。
「仕掛けはもう済んだよね、あとは時を待つだけ」
「そうだね、あとはゆっくりデートしよう」
金花探偵事務所によって市民ホールの侵入や工作はほとんど不可能になっていた。
なぜなら会場に入るには関係者に配布されたカードがないと入れない、さらにカードなしで会場に入れば警報が鳴る。
本番のチケットにも組み込まれているほどの厳戒態勢。
さらに常に目を光らせる金花探偵事務所。
だが…こいつらは超が付く一流の暗殺者。
すでにセキュリティーの穴をついていた。
「一応は森田の奴らの仕事だから、本気でやらないとね、ダーリン」
「そうだね、報酬で建てるマイホームを見つけておこう」
二人が凄まじいほどの集中力でイベントの分析を始める。
「外には大量の警備員と他校の生徒が見回り」
「本番の入り口は正門のみ使用」
「正門は厳重なチェックと多数の監視カメラ」
「外部の業者も金花探偵事務所の誰かが監視」
「裏門と東側駐車に監視カメラの死角がある」
こいつら…完璧なほどまでにイベントを研究してやがる。
そして、こいつらの方針が固まる。
「あ、会場に所々隙あり、しかも…そうすれば工作できるね」
「ハニー、おびき出して殺したらこっちから行かなくて済むかもね」
二人は気づけば抱き合い指を絡ませていた、その姿は完全な愛の証。
「第一優先はエルフの女の回収、第二は男を殺すこと、かな?」
「そうだね、あとは最後の準備をしたら、一緒にお風呂に入って、私の髪を乾かしてね」
普段はふざけているが、彼らも森田家につかえる忍び。
本気になってしまった彼らを誰も止めれない。




