【探偵#12】
瀬礼市についた二人は当てもなくプラプラしていた。
「ダーリン、このガキを殺した金で引退して妊活始めようよ」
「ハニー、さすがに今回の報酬で引退は無理だと思う」
そして、椿がとある案を豪太に提案する。
「瀬礼市のことよくわかんないし、その辺の異界人の屯ってるやつらに襲わせれば??」
「ハニー、天才過ぎて愛が止まらないよ」
そしてその足で瀬礼市の裏道を通り始める。
「あ、よさげなやつら見つけたね、あいつらにしようか」
「ハニー、仕事は効率的に行うと愛が深まるってyoutubeで見た気がする」
暗い裏路地、壁には落書き、地面には空き缶やごみが転がりこの治安の悪さを説明せずにいいほどに。
「あぁ??なんでてめぇら!!」
「おい、女もいるぜ!しかも顔もスタイルもいい!」
二人の前に集まっていたのは柄の悪そうな鬼人族や亜人族たちの集まり、いわば半グレのような集団。
地球と異界がつながって半世紀。それでもまだ大量に流れてきた異界人の雇用は十分とは言い切れない。さらにはいつまでたっても消えない差別と種族の壁。
その闇を具現化したのがこの路地、そして…二人はすでに動いていた。
「お前らハニーを痴漢したな、許さない」
豪太がいきなり煙玉を地面に叩きつける。
パン!という音とともに白き煙が路地裏を包む。
そこからはまさに一瞬だった。
「キモイキモイキモイ」
グサァっという鉄が命脈を断つ音が響く。
椿がすでに手甲鉤で数人を冥府に送っていた。
「ガァハ」「グハァ」などの断末魔が煙の中から聞こえてくる。
「なんなんだよお前たち!!いきなり殺しやがって!」
その言葉が発せられたタイミングですでに豪太は懐を侵略していた。
「慰謝料払え慰謝料払え」
振り上げられたのは分厚い斧、それから音速の袈裟斬りが落ちる。
「がぁあああ!」
気づけば死んでいる…もはや比喩表現ではないほどに。
煙が若干晴れてきた頃、いきなり二人がピタリと止まる。
「そろそろいいんじゃない??ダーリン?」
「そうだねハニー、もう言うこと聞いてくれるよね?」
生き残った亜人と鬼人の異界人は茫然としていた。
「慰謝料代わりの簡単なお仕事だよ」
「ハニーの悲しさに比べたら生ぬるいよね?」
そして…こいつらは傀儡を一瞬にして生み出してしまった。
「これくらい殺したら言う事聞いてくれるよね??」
この狂気に当てられてまともに入れる奴なんかいない。
「わ、わかりました!言う事聞きます!」
情けないほどおびえている鬼人族の青年、さらに二人が強烈な殺気をぶつける。
「じゃぁさ、金花探偵事務所って知ってる?そいつらの場所を教えるのと、適当に誰か襲ってきて」
「そうだね、これくらいしないと働いたうちに入らないよね、ダーリン?」
鬼人族の青年が情けない声を上げる。
「金花探偵事務所の場所ならわかります!!ですが…襲うなんて無理ですよ!絶対死にます!」
そう…瀬礼市では金花探偵事務所は輩からしてみればアンタッチャブルな存在。
それを襲うなんて無理な話なのだ。
「じゃぁここで死ぬ?」
「や、やります…」
こうしてできた傀儡が狙ったのは夜、依頼から戻る金花メリーとゴーレムだった。
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「ゴーレム、今回の依頼、犬が可愛くて死んじゃいそうだったよ!」
「金花メリー、今回の労働稼働率24%。同様の依頼のパターン、星都風香、労働稼働率98%。74%の差アリ。」
二人は家出した犬を探す依頼を終え、帰路についていた。
そんないつもの日常、その瞬間だった。
「金花メリー!!ここで死んでくれ!」
「お前が死なないと俺らが死んじまう!!」
いきなり複数人のヒットマンが突っ込んでくる。
その日の夜いきなりの襲撃。
やらなければ死ぬ。そんな恐怖が彼らを支配する。
「死んでくれ!!」
「きゃぁー!!助けて!!誰か!神様!」
だがそこには、かつて異界で都市を一つ文明から消したとさえ言われる古代の兵器、ゴーレム。
「バトルモードに移行。ターゲット補足しマス」
すでに鉄の手にはエネルギーが満ちたような光が照らす。
そして繰り出されたのは全てを吹き飛ばすロケットパンチ。
「出力100%ターゲットを無力化」
バーン!!と音を響かせ、どってっぱらに鉄の拳が突き刺さる、それは誰も止めれらないほどの威力。
「うげぁあああ!!」
飛んで行ったロケットパンチで3人同時に壁際まで吹き飛ぶ。
ゴーレムの恐ろしさはこっからだった。
腹にめり込む拳が強烈な光を帯び始める。
「な、なんだ次は?」
次の瞬間だった。
バァン!
「ギャァアアアアー」
数人を巻き込みながらの大爆発。
だが、恐怖に支配されたこいつらは止まらない。
「あいつらに殺されるよりましだ!!」
もう一人の犬型の亜人が突っ込んでくる!
「ターゲット補足、エネルギー充填完了、発射。」
そして、ゴーレムの逆の手からは、レーザービームの斬撃。
その威力をたかが亜人では止められない。
「あ…」
気づいた時にはもう遅い。
「ぐわぁああああ!!」
ゴーレムによって傀儡となったヒットマンは壊滅してしまう。
そして。それを上から眺めていた二人。
椿は髪をいじるながら豪太の腕に絡まるように抱き着いていた。
「どうしたんだい?ハニー?疲れちゃった?」
その問いに少し椿は顔を曇らせる。
「金花探偵事務所、意外と厄介かもね」
その言葉をきいた豪太は椿を抱きかかえるように体で包む。
「大丈夫だよハニー、ダーリンがついてるよ」
「そうだね、私たちならできるよね」
(さすがはこの異界の影響をかなり受けている町で探偵をやってるだけはある、簡単じゃないけど…ハニーとならできるかな)
二人は抱き合いながらやさしく微笑む。
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そして、その数時間後だった。
薄暗い路地、多くの居場所のない柄の悪い異界人が屯している彼らのアジト。
そこにとんでもない奴が再び現れる。
「金花探偵事務所を狙う…マグマに勢いよくダイブするのと変わらねぇんだわ」
たった一人で現れたのは、金花探偵事務所の用心棒で最強戦闘者。煉城練斗。
スライムと龍の炎を纏い、すでにスタートしていた。
「来世では金花探偵事務所に喧嘩売るなよ」
こうして、たった一人で異界人の組織を壊滅させた。




