細海先輩と御森くん、気圧の話
時刻は13時
ランチタイムも終わり、普段から血糖値が上がる事で怠さや眠気が出てくる時間帯だ
「…」
自分の掌を何度か閉じたり開いたりしながら、ゆっくりと頭が重くなっていくのを感じていた
「…っぱい、細海先輩?」
不意に名前を呼ばれゆっくりと御森くんの方を見た
「細海先輩…もしかして目を開けたまま寝てました?」
申し訳なさそうに確認する御森くんの言葉を反芻する。目を開けたまま寝ていた?
「いえ、意識が一瞬途切れていただけで寝てません」
「気絶してたってことですか!?」
私の言葉に焦る御森くんを一旦片手で静止する
「1020hPaです」
私の言葉に「はっ?」となんとも情けない声を発した彼に続ける
「今の気圧です、朝から7hPa動いてる影響で今ちょっとだけ気象病の症状が出てるだけです」
〝だから心配しなくて大丈夫ですよ〟
と、付け加えて業務に戻る
「えぇ…いやいやいや、まず気圧で頭が痛いって分かってても無理しないでくださいね」
そう言いながらポチポチとスマホで何かを検索していた御森くんが突然「1020hPaだ…」と少し引きつった声で呟く
おそらくまだまだ下がってきてるのか、手先の痺れが舌先にも広がってきて頭痛に嫌なモヤがかかり始めた
「ちょっと今から遠くを見つめたり耳をつまんで回し始めますけど、気にしなくて大丈夫です、分からない事があったら聞いてください」
「しんどい人がするやつじゃないですか…」
流石に私が無理をしてるように御森くんには見えてるのが分かったので、回らない頭で彼を見た
「今朝見たネットの情報では、あと30分もすれば気圧は上がり始めると書いてあったので、心配しなくて良いですよ」
まったく寒暖差で体の動きは鈍るし、気圧に影響は受けるし、体力は無いくせに微細な変化を拾う不便な体である
「…ちなみに、今何hPaですか…?」
数分後、恐る恐る聞いてきた御森くんに
「1025hPaです、予想より早く戻ってるみたいです」と答えるとスマホの画面を見ながら「1025hPaだ…」と引きつった声が聞こえて思わず笑いが込み上げる
「御森くんは面白いですね」
思ったことをそのまま伝えると
「いや、細海先輩に言われたくないです」と言われてしまった。
失礼だな君は、体調管理の一環で記録をつけていれば気圧くらいなんとなく分かるようになるんだよ
——と、思っていたのだけれど
御森くんは最後まで納得していない顔をして
「気圧が体感でわかるって、普通じゃないですからね」
そう言い切られて、私は少しだけ考え込んだ。




