第78話 細海先輩と御森くんとハロウィン
うちの部署にはお土産置き場がある
説明会で遠出した先輩や有給を使ったパートさんが買ってきてくれた各地の美味しい物が定期的に置かれるスポットだ
だけど、今月の後半からお土産ではないお菓子が沢山置かれるようになった事に気づいた
「お土産置き場に、お土産以外のお菓子があるのはなんでですか」
食べて良いのだろうか…
今までと毛色の違うオヤツに確認を入れると「あぁ」と細海先輩がこちらを向く
「ハロウィンのお菓子ですよ」
「ハロウィン!!」
一気にテンションが上がる俺を宥めつつ
「誰がはじめたか、ハロウィンの時期になるとお土産置き場にハロウィンパッケージのお菓子を置く習慣がありましてね」
「えー!!めっちゃ素敵ですね、じゃあ食べたいお菓子あったら食べて良いんですか?」
「もちろん、気が向いた人が買ってきては置いて皆んなで雰囲気を楽しんでるユルイ習慣です」
かくいう細海先輩もビスケットのバラエティーパックを置いたらしい
「ちょっ、そんな楽しそうな事してるなら教えてくださいよぉ〜」
「業務ではないですし、気になったら誰かに聞くかなぁーと思って」
まぁ確かに、先輩から〝そういうことしてるんだよ〟って言われたら買わなきゃダメかなってプレッシャーになるか…
コンプライアンスは難しいけど楽しい事には全力で首を突っ込みたい俺にとっては遅れをとってしまった期間がもったいなく感じる
「絶対に俺も明日大きいお菓子のパック買って置こう」
そんな訳で、その日の帰りウキウキハロウィンパッケージのお菓子を探す旅に出た俺は
翌朝にはカラフルな銀紙に包まれたバラエティーチョコをお土産置き場改め、ハロウィンコーナーに置く事に成功したのだった。
「わー、俺の買ったチョコ選んで食べてる人見たらちょっと嬉しくなっちゃいますね」
隣でキーボードを打つ細海先輩に話しかける
完全に本家のハロウィンとは違う楽しみ方だが、楽しければなんでも良い!
「確かに、選んでもらえたのも喜んでもらえるのも嬉しいですよね」
画面から目を逸らさずに返ってきた言葉にぱぁーっと嬉しくなった俺はそのまま「因みに、これは細海先輩の分です」とデスクの端にチョコを置いた。
「わざわざすみません、また帰ってから紅茶と一緒にいただき……」
そこまで言ってパッケージを見た細海先輩の目がガッと開く
「デュラハン!!!デュラハンじゃないですか!?」
「……でゅ…?なんですか?」
俺からの差し入れを手に取りマジマジとパッケージを見つめると
「アイルランドの伝承で登場する首なしの騎士です。いやぁ…日本のハロウィン遂にここまでバラエティーに富んだキャラクターを採用しはじめたんですね」
変な方向で感動してる細海先輩を見ながら
「まー、最近はキョンシーとかもよく見ますし、ワールドワイドっすよね!」と雑に返してモニターに視線を戻した。
視線の脇で物部先輩と細海先輩が「こんなメジャーになったのかデュラハン」「そうなんです…物部に教えてもらったアニメで見たデュラハンをこんなところで見るとは思いませんでした」とマニアックな会話をしているのを見て、喜んでもらえて良かったという気持ちと、ひとまず会話を終わらせて良かったという気持ちで俺は業務に戻ったのだった。




