細海先輩と御森くんのおやつ事情
今日は一本早い電車に乗れた
なので、調子に乗って仕事前にコンビニに寄ってみると〝期間限定〟の文字と共に興味を惹かれるパッケージが目に入り迷いなく一袋持ってレジへ直行した
「美味しかったら細海先輩にもお裾分けしてみよー」
そんな風に思いながら出社したその日の午後
まだまだ覚える事が多くて脳が考える事を一時停止しそうになるタイミングでゴソゴソと今日のおやつを取り出した
「あれ、今日はラムネじゃないんですね」
気付いた細海先輩が声をかける
「そうなんですよ〜、期間限定と目が合っちゃって抗えませんでした」
いつもはブドウ糖を摂取したくてラムネをおやつ代わりにしてるけど、今日は個包装のクッキーだ
早速開封して1つ口に放り込む
ザクザクとした少し固めの食感にバターの香りと塩味のバランスが抜群である、これは〝あたり〟だ
「細海先輩細海先輩、めっちゃ美味しいです」
「良かったですね〜」
これは美味しさを共有しなくてはいけないと思い「細海先輩もどうぞ」と目の前に差し出した
「…………ありがとう…あの、御森くん、とても嬉しいんだけど、食べるの家に帰ってからでも良いですか」
喜んでもらえると思っていた俺は、少しだけ肩透かしを食らう
「全然良いですけど…そう言えば細海先輩、業務中に間食しませんね」
もしかして迷惑だったかな、という考えが頭をよぎった時だ
「あっ、御森くーん!細海ちゃん接客業歴が長くて仕事の合間におやつ食べるの苦手なんだよ」
と細海先輩の同期さんが教えてくれた
「申し訳ない、その代わりに嫌じゃなければ私の食べ垢を教えるから、そこで食べた事を確認してください」
そう言ってスマホにURLを送ってくれる
「食べ垢とは?」
「お菓子をいただいた時に食べた報告をするアカウントで…あと偶に食べた物の画像を上げたりしてます」
某SNSにログインして見てみるとお菓子とお茶の写真や美味しそうなご飯の写真がズラっと並んでいた
「あ、細海先輩ちゃんとご飯食べてるんですね」
基本ランチは自席で小さなお弁当を食べてるのを知っているが、大人の食べる量にしては小さすぎるので密かに心配していたのだ
「それよく言われます」
更に申し訳なさそうに先輩は頭をかいた
さて、この日の夜
帰宅して部屋着に着替え、ベッドに腰掛けながらなんとなく先輩のアカウントを覗いてみると
俺が渡したお菓子と紅茶の画像が〝後輩からいただいた期間限定のおやつ、高級感のある香りが口いっぱいに広がってとても美味しかったです〟という感想と共に上がっており、ふっ…笑いがもれる
「いや、先輩、重いっす」




