表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

細海先輩と御森くんのパーソナルスペース

初めて〝無理だ〟と思ったのは小学生の頃だった


何故か私にくっつきたがるクラスの子から逃げたくて。


ある日彼女がいつも私を捕まえて肩を抱いてくる休み時間の終わり


バレない様に1人で教室に戻った


すると次の日から彼女は私と目を合わさなくなった、話さなくなった、それどころか関わりたくないという少し怒った表情で無視する様になった


あの時、触られるのが得意じゃないとちゃんと理解して説明できていれば、あの子は傷付かずに済んだのかな…





「お疲れ様」

隣の席でグッタリ天井を見つめる御森くんに声をかけると「なんとか終わりました…」と親指を立てて見せてくれた

今日は我が社の軌跡動画学習の日だった


成り立ちから理念、社会貢献などを纏めた動画を約3時間休憩を挟みながら鑑賞し今日の業務進捗に記録しなくてはいけない

研修期間中、最も辛い研修だと私は思っている…だってありえないほど恐ろしく眠くなるから



「や、もぅ、ヤバかったです…開始45分くらいがヤバかったです」


目薬を差して顔を覆う御森くんは、それでもまだ眠そうで

このまま業務研修に戻すのはあまりにも酷だ、と時計をチラッと見た


「御森くん、眠気覚ましにコンビニとか行ってきますか?」


終業まで、まだ1時間以上ある

歩いて外の空気を吸えば頭のモヤも晴れるだろう


「あ〜!!!ありがとうございますっっ!!!」


本人もこのままではマズいと本気で思っていたのだろう。

〝外の空気が吸えて嬉しい!〟という感情が目に見える形で出た勢いで私の手を握ろうとするのを咄嗟に避けてしまった


「ヒュ」

あかん!!!というドデカイ文字に頭を殴られ脳内パニックだ


こんな時、アニメとかドラマのセリフって「気安く触らないで!」とか「ベタベタされるの嫌いなんだよね」とか凄くイメージが悪いのしか思い浮かばないの本当に良くないと思う、がそんな事はどうでも良い


ここまでの思考が1秒ちょっと、目の前の御森くんを見ると私の反応がどういう意味のものか考えるためフリーズしているようだった


謝るなら1秒でも早い方が良いに決まっている


「申し訳ない、人の体温とか、脈とか、近さとかちょっと得意じゃなくて…」


こんな言葉しか出てこないが、本心なので許して欲しい

決して御森くんが嫌なわけでないのだ



あの日から何度も何度も〝人に触れる事への苦手意識〟がなんなのか考えた、相手が嫌いな訳でもない潔癖症でも無い、出た答えは自分以外の人間の皮膚や体温が近くに有ると違和感で脳が不快と判断する、だったのだ



「えっと、それは」


御森くんが理解しようと一歩踏み込んでくれた気がしたので脳をフル回転させて搾り出す

「ぷ、、、ぷぁ…」


「ぷぁ??」




「ぱーそなるすぺーすが……いちじるしく、広いタイプに位置する人間、です」




そう言うと、ややあって




「あ、パーソナルスペースが激せまの人間なので気を付けるので改めて宜しくお願いします」



と聞こえ、前髪の隙間から御森くんを見ると少し笑いを堪えているようだ

「や、なんか、ぶふふ…細海先輩のセリフが解釈一致というか……サーセン!コンビニ行ってきまーす」



そう言って財布を持って居室を出ていく背中を見送り「はぁーー…」と大きなため息をついた


「細海ちゃん良かったね、お疲れ様!」


近くの席の同僚の言葉にヘラりと笑って「ありがとう」と返す



良かった、理解してもらえて



「今日帰ったら、少し良い茶葉の紅茶飲みます」

そんな私に同僚は「いいね」と笑ってくれた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ